第8話 違い
学園には学生達が自主的にトレーニングをするための修練場と呼ばれる場所がある。
そこで二人の男女が注目を集めていた。
ユーナ「ハァ!デヤァ!!」
リーク「少し遅いぞ!もっと上げてみろ!」
ユーナ「はい!」
リークとユーナだ。
ここ2年程、リークが直接ユーナを鍛えている。
婚約者同士が互いに組手をするなどかなり異質だが、リークはそんな事を気にする性格ではない。
ユーナ自身もリークと直接触れあえる数少ない時間なので厳しくとも彼女なりに楽しんでいる。
組み手の中で、リークの蹴りを避けると同時に手を後ろに出してそこから風を噴出してユーナは蹴りを放つ。
ユーナ「ハァ!!」
リーク「!?チィ!」
腕を組んで足だけでリークは対応していたが思わぬ攻撃で手で攻撃してしまう。
ユーナは後ろに飛ばされる。
ユーナ「う…うう…」
リーク「そんな技術を身に着けていたとはな、勢いで手を出してしまった。済まない。」
ユーナ「い、いえ。大丈夫です。」
リーク「今のは中々良い動きだったぞ。」
ユーナ「は、はい!ありがとうございます!」パァァァ
珍しく褒められた事で彼女の顔はあかるくなる。
リーク「フン!今日はここまでとする。お前は先に帰ってろ。」
ユーナ「い、いえ!私も残って自主練します。」
リーク「…好きにしろ。」
リーク(グラン…今に見ていろ。俺は俺のやり方でお前より早く一歩先を行ってやる。)
彼もまたユーナの面倒を見ながら魔力活性のさらに上の段階を目指していた。
しばらくして修行が終わって、修練場を後にしようとする。
レイブ「あ、あの…」
リーク「ん?お前は確か…」
レイブ「レイブです。同じクラスのレイブ·エンポリオです。」
リーク「何のようだ?」
レイブは話した。グランの事を知りたいと、そして彼に勝つ方法をしりたいと。
リーク「…何故それを俺に聞く?奴の事を知るならセリア姫でも充分だろうに。」
レイブ「そのセリア姫から言われたんです。彼をよく理解しているのはリーク君だと。」
リーク「なるほどな…まあ、それぐらいなら話しても良い。」
リークは語る。
リーク「お前は奴に才能があると思うか?」
レイブ「あるんじゃないのかな?」
リーク「その認識から間違いだ。あいつは天才じゃない。持って産まれた才能はお前と変わらん。」
レイブ「え…?そんな、馬鹿な…」
リーク「どいつもこいつもあいつの本質を理解していない。奴の恐るべき所はその精神力だ。」
レイブ「精神力?」
リーク「奴の持つ力は全て経験と努力によって培われた物だ。あいつがこれまで積み上げてきた過程での苦痛は並のそれではない。問題なのはその苦痛に耐える精神力、根性というべきか。この貴族社会で奴は後ろ指を指される時期もあった。だがあいつはそんな事を気にせずにあれだけの強さを手に入れた。」
レイブ「…」
リーク「お前は今まで何回血反吐を吐いたことがある?」
レイブ「え…?」
唐突にそんなことを聞かれレイブは困惑する。
リーク「体が泥だらけになるほど腕立て伏せをしたか?魔力の使いすぎで酔って吐いたことは?真夏の昼間に汗まみれで脱水状態になるほど走った事は?モンスターだらけの山でサバイバルは?」
レイブ「無い…です。」
リーク「その時点で差は歴然だな。奴は何度も肉体の限界にまで追い込み続けた。そして無理矢理体を成長させた。一度や二度じゃないぞ。この10年以上奴はそれをし続けてきたんだ。」
レイブは押し黙る。
リーク「まあ、そういうことだ。お前がやってきた努力など、あいつの前では努力にすら値しない。わかったらどけ。俺は帰る。」
レイブ「待って下さい!!」
リーク「今度はなんだ。」
帰ろうとするリークをレイブは呼び止める。
レイブ「あなたもグラン君と同じ位強いんですよね!」
リーク「だったらなんだ?」
するとレイブは地面に頭を着けて土下座する。
レイブ「お願いします!僕に修行をつけてください!!」
リーク「…何?」
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