第10話 第一の修行

翌日 一時間目から2時間前の早朝

誰もいない静かな学園内の庭でリークとレイブが立っていた。


リーク「…さて、今日からお前を見ることになったわけだ。」

レイブ「はい!よろしくお願いします!お師匠様!」

リーク「その呼び方はやめろ!!普通に呼べ!」

レイブ「じゃあ…師匠で。」

リーク「はぁ…好きにしろ。」

レイブ「それで!何をすればいいのでしょうか!」

リーク「まず、お前は体ができていない。」

レイブ「体が?」

リーク「魔力量、身体能力、魔力操作技術。全てにおいてお前は俺やあいつの足元にも及ばん。基礎がダメダメなんだ。」

レイブ「基礎…じゃあ!その基礎を鍛えるのですね!」

リーク「ただ鍛えるだけじゃない。俺が提示した通り、お前は今度の期末試験で10位以内に入らなければならない。」

レイブ「はい…」

リーク「だから、お前には常に体を鍛えてもらう。」

レイブ「常に?」

リーク「ああ、睡眠以外の全ての時間だ。」

レイブ「そんな事、どうやって?」

リーク「これを着けて貰う。」


そう言ってリークは銀色のリングを取り出した。


レイブ「それはなんですか?」

リーク「重りだ。特殊な魔石を混ぜた物で、持つだけならなんとも無いが、腕に着けるとかなりの重量になる。」


リークが一つレイブの腕に重りをつけると、レイブは重さで地面に蹲る。


レイブ「うっ!ぐっ…!」(重い!!全然、腕が上がらない!)

リーク「大体重さは190kg位だ。身体強化を使って持ち上げてみろ。」


そう言われて、レイブは身体強化を使ってなんとか体勢を立て直す。


レイブ「あ、上がりました。」

リーク「じゃあそれを四つ着けてこれから生活してもらう。」

レイブ「よ、4つも!?」

リーク「ああ、慣れてきたら重さを上げていく。それと朝には必ずこのトレーニングメニューをやれ。」


リークは1枚の紙をレイブに渡す。

書かれているのは腕立て伏せやランニング等の一般的なトレーニングだけだ。


レイブ「これだけですか?何か組み手とかそういうのは…?」

リーク「ああ、ただし毎日欠かさずやれ。それ以外は特に何もしなくていい。」

レイブ「ど、どうして?」

リーク「人間というのは常に体を使用する。ただ歩くだけでも当然エネルギーを使う。呼吸、食事。それらに大きな負荷をかけるだけで相当の修行になる。組み手をしない理由は、お前が俺の動きについてこれる訳がないだろう。」

レイブ「うっ…わかりました!頑張ります!」

リーク「試験までのおよそ3ヶ月。まず最初の一ヶ月はこの生活をしてもらう。大体5日で重さを変えるとしよう。」

レイブ「はい!」

リーク「では、今日のトレーニングメニューをしてから授業に行け。以上だ。」


その後、紙に書かれたメニューをこなした後に授業に出席するが。


レイブ「うっ…」プルプル

レイブ(き、きつい!授業に集中しながらノートを書くその上で身体強化の集中をとぎらせないようにしないと!)


レイブは現在、空気椅子状態になっている。その理由は彼の今の重さにあるのだ。

レイブの総重量は体重を含めて700kg超え。そんな状態で椅子に座ると大変なことになる。

それ故に空気椅子をするしか無いのだ。


セリア「随分ときつい修行させられているようですね。」


セリアが隣に座っているグランに小声で話しかける。


グラン「まあ、それぐらいしなきゃ短期間で俺達レベルなんて難しいからな。果たしてどれだけ持つかね。」


しかし、2週間が経った頃。


レイブ「ハァ…ハァ…」


レイブは廊下の壁にもたれかかりながら歩いていた。

現在、総重量は860kgたが、レイブは顔から玉のような汗を流している。


ヘレン「レイブ!大丈夫なの!?」


ヘレンが心配して駆け寄るが。


レイブ「邪魔しないでくれ!これ位の重さ、一人で歩けるようにならないと。」

ヘレン「でも、いくらなんでも無茶よ。」


やがて、レイブはその場に倒れ込む。


保健室にてレイブは目を覚ました。


レイブ「また、倒れてしまったのか…」

ヘレン「先生がしばらくはここで休んでいきなさいって…」


椅子に座っているヘレンが言ってくる。


レイブ「このぐらい、彼らはなんともないようにやってきたのに、僕はまだ…」


悔しさか…情けなさか、レイブは血が出そうになるほど拳を握りしめる。


レイブ(こんな過酷な事を彼はずっとやってきたのか…)


そして、ある授業でレイブはグランの凄まじさを再び思い知ることになる。

自分と戦った時は、彼にとっては戦いでは無かったということを。


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物語を進める上でグランの出番がスゲー少なくなってしまう。

一応この先の物語ではバンバン出てきますが、今はまだこれが続く事になりますね。



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