第1章 学園入学編 モブと主人公と悪役

第1話 入試

「ラン君…グラン君…グラン君!!」

グラン「ん?何?」

セリア「起きてください!もうすぐ着きますよ!」

グラン「ああ…もうそんな時間か…ふぁ〜あ。」


グラン·デストリカ 15歳

彼は遂に今日、プリズム学園の入学試験を受けに来た。


セリア「少しぐらい緊張したらどうですか?」

グラン「逆だよ、緊張してるから少しでも眠っておきたいんだ。」

試験会場である学園に向かう馬車の中で彼らはそんな話をする。

婚約者という事でセリアも同じ馬車に乗ってグランと共に受験会場に向かっている。

グラン「セリアこそどうなんだ?いくら希少属性とはいえやって来る奴らは皆選りすぐりだぞ?」

セリア「それでも、あなたやリーク君レベルはそうそういませんよ。それに、私も伊達にあなたと鍛えてきた訳ではないですよ。」

グラン「まあ、世界は広いから俺達以上なんてわんさかいそうだけどな。」

この数年で彼らの接し方もかなりフラットになった。

というよりも、グランが相手が王族なため、どうしてもぎこちなくなってしまうのが理由だ。

しかし、数年も一緒に修行などをして交流していき自然に接するようになった。

セリア「ほら、見えてきましたよ。」

そうして見えてきたのは大きな建物。


初代バドラス王国の国王バドラス·クロファボールが建てた国立魔法学校プリズム学園、全寮制の学園であり、年々倍率が上がり続けている最難関校で物語の舞台となっている。


グラン(とうとうやってきたのか…長かったような短いような…いや、こっからだよな。)

当然ながら受かるだけで終わりではない。彼のこれまでの努力はスタートラインに立つための準備なのだ。むしろここからが始まりである。

セリア「行きましょうか。」

グラン「ああ。」


受付には大勢の人々が来ていた。

当然、全員が受験生だ。

グラン「凄い人だな。」

セリア「国内外でも高い評価を持ちますから、他国の方もきています。」

グラン「なるほどね〜。あ、リークだ。」


グランの視線の先にはリークがいた。側にはユーナもいる。

向こうもこちらに気づいたようだが、リークは何も言わず試験会場に向かい、ユーナもこちらに礼をして彼についていく。

だがグランはリークの視線から彼の思うことを察している。

「お前には負けない。」と。


セリア「私達も受付を済ませましょうか。」

グラン「そうだな。」


「なあ、あれ!」

「セリア殿下だよな。」

「かわいいよな〜。」

「スタイル良いし、髪サラサラだ…」

「隣のやつは誰だ?」

「あれって確か、無属性のグランじゃ?」

「婚約したって話は本当なのか!?」

受け付けを済ませるまでの間、やはり彼女は注目を浴びる。

グランとセリアの婚約話は実は公にはなっていない。

あくまで国の重鎮などに知られているだけだ。

グランが大きく騒ぎになるのを凄く嫌がったため、この情報は世間には噂程度に広まっているだけで、他の貴族や人々は半信半疑である。

グランに婚約者が出来たことは言われているが、相手は秘密としている。

とはいえ大体の人間が察してきているが。

セリア「うるさいですね…」

グラン「そりゃあ、一国の美人な姫がいたら騒ぎもするだろうよ。」

セリア「からかってますね。」

グラン「さぁ〜てな。」


「ねぇ、あれってグラン様よね。」

「背たか!」

「細身だけど、いい腹筋してそう。」

「なんか貫禄あるよね。」


そんな声を聞くとセリアはこっちを見て。

セリア「あなたも色々言われてますよ。良かったですね、有名人ですよ。女の子にチヤホヤされていいですね。」プクー

グラン「勘弁してくれ。」

セリア「フフ…冗談ですよ。そんな事で一々言いませんよ。ちょっと仕返しです。」

そう言って彼女は笑う。

国の中でも一二を争う美少女の笑顔に何人かはやられたようだが、修行馬鹿というか、強さ馬鹿なこの男には特に効果はない。


やがてグラン達の番になる。

試験会場は別のようだ。


セリア「グラン君。頑張りましょうね。私、あなたと学園に通いたいですから。」

グラン「わかってんよ。そっちもしっかりな。」


試験は筆記と実技の2つに別れる。


筆記は歴史、国語、数学、化学などの基本的な座学の試験である。

修行の合間を縫って、短時間の間に集中してグランは勉強してきた。

勉強時間は多くないが、集中力はあるので知識の吸収効率は良い。なので筆記も問題ない。


そして実技は用意された的に魔法を使いその威力で点数を測る。

決められた距離を取っていれば何の魔法でも良い。


筆記試験が終わり実技試験会場に移動する。

試験官「それでは実技試験を開始する。ルールはシンプルだ。線から出なければどんな魔法でも構わない。的に当てて点数を取るんだ。健闘を祈る。」

そうして試験が進んでいく。

グランはあまり同世代との交流が少ないため他の人がどんなものかを見るのはこれが初めてだった。

氷の礫をぶつけていたり、炎で燃やしたり色々だったがグラン的にはなんとも味気なかった。

グラン(威力が高いやつとかは多いけど、コントロールがイマイチだな…)

有力貴族の跡取りだったり、この学校卒の親の子供だったりで魔力量が多く魔法の威力が高い者は多いが、大抵のものは火力を重視するあまりコントロールを怠りがちなのだ。

やがてグランの番になる。


「おい、あいつだぞ。」

「魔人を倒したって聞いたけどほんとかな?」

「でも、強そうな雰囲気だ。」

「どんな魔法を使うんだろ?」


試験官も興味があるのか、こちらをじっと見ている。

グランは的に向かって人差し指をつき出す。

試験官(何をするつもりだ?)


グラン(変にフルパワーで攻撃して的を破壊するのはむしろ雑で格好悪い。)

やがて指先に大量の魔力が集まる。

グラン(的の中心を貫き、破壊する!)

瞬間、一筋の光が的の中心を貫いた。

そしてやがて全体にヒビが入っていき、粉々に砕け散った。


「ま、マジかよ…」

「的が…砕けた?」

「ど、どんな魔法なんだ!?」


試験官(いや、あれは魔導砲の応用、一点に集中して貫通力に特化させた一撃だ。ホースの放水口を小さくすると放出する水の威力が上がるのと同じ原理。

だが、特筆すべきはあの膨大な魔力をいとも容易くやってのける魔力操作技術!真銀ミスリルでできた的を砕け散らすとは、恐れ入る。)


グランは首を鳴らしながら他の受験者の開ける道を通っていく。

グラン(首席とれたら嬉しいな。リークの奴はどんな魔法使ったんだろ?…あと魔力の集中速度が課題だな。帰ったら練習するか。)

そんな事を考えながら、先に試験が終了していたセリアと共に帰路につく。





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