第2話 彼の矜持

半年後、彼女は信じられない物を見る目でリークを見ていた。

アリサ(馬鹿な…まさか本当に一日も欠かさずにあの修行を?)

リーク「ふん、どうだ?半年でここまで仕上げたぞ。」

アリサ「…まさか本当にここまでするとは…しかも短期間でここまで。」

リーク「俺とあいつとでは持ってる物が違う。あいつと同じ方法を取れば成長速度は俺の方が上だ。だが、それでも奴には足りんがな…」

アリサ(…並の魔法使いでもここまで魔力量を増やせる者はそういない。彼の言う通り、才能もあるだろうけど…それでもデストリカ家の長男には敵わないというの?)

アリサ「何者なのです?デストリカ家の長男は。」

リーク「奴は…魔力量を増やす修行を3歳から続けてきたと言っていた。あの男の恐ろしさは成長速度でも魔力操作のセンスでもない。ただ自分を限界まで追い込み続けても折れない忍耐力だ。その一点に関してあいつは俺以上の天才だ。今も力を高めている。今の俺以上に辛い修行をしながらな。」

アリサ「…だからあなたも同じような修行をしたくなったと?」

リーク「…悪いか。」

アリサ「…あなたは何故折れないのです?」

リーク「あ?」

アリサ「それほどの才能を上回られて、辛くないのですか?」

リーク「…だからどうした。俺が越えると望んだ壁は越えるまで挑み続ける。奴は俺が遂に見つけた壁なんだ。だから越える。そして、俺が一番になる。」

アリサ「ようはあなたの矜持の為と。」

リーク「なんの矜持の無い人間が成長を遂げることなど出来るか?俺はただ漠然と強さを求める凡人とは違う。明確な目標を越えるためならどんな苦行も耐え抜いてやる。」

視線をぶつけ合う。やがてアリサは目を閉じて息を吐く。

アリサ「…そうですか。まあ、約束は約束です。あなたの専属指導者として私の魔法技術の全てを教えます。しかし、それであなたの言う壁を越えられる保証はありませんよ。」

リーク「構わない。可能性があるならそれで充分だ。」

アリサ「では、魔力量を増やす特訓はそのままでこれから魔法の授業をします。」

リーク「座学だと?今更何を学べと。」

アリサ「あなたは魔法を使うセンスに長けています。だからこそ多くの技術を吸収して実戦でそれを発揮したほうが効率よく吸収できます。私とあなたは属性も一緒なので、本にも載ってないような雷魔法を教える事もできますよ。」

リーク「ようはやり方だけ学んで、後は自分で慣れろという事か。」

アリサ「そういう事です。何よりあなたはあれこれ指示されるより、やり方だけ知って自分で極めるほうがあっているのでは?」

リーク「よし、早速教えてくれ…いや、教えて下さい…かな?先生。」

アリサ「よろしい、では早速授業を始めます。」

リーク(待っていろグラン、すぐに追いついてやる。)


だが、ここからおよそ2年後の半成人式で彼は再び距離を離されることとなる。

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