第16話 裏話

事はグランが目覚める前に遡る。

事件からグランは5日間眠っていた。

その間、世間は大きく騒いでいた。

当然である。

突如、パーティ会場に現れた大量の魔物、そして魔人の存在とそれを倒した無属性の少年。

メディアが食いつかない訳が無い。

王家の人々と家臣達は対応に追われていた。

そこにこぞって新聞社が流れ込んで来るのだ。

そして何処からかグランの情報も漏れていた。


ルイス「ぬう……」

ルイスは目の前の大量の手紙に頭を抱えていた。

これらは全てグランへの見合いの申し込みだった。

ミア「あなた…どうしましょう。」

グランにはこれまで縁談の申し込みは来たことがなかった。

無属性の子供なんぞいらないと思われていたのだ。

しかし今回の事でその力を自分達の家に引き込めないかと画策する輩が出てきたのだ。

突然の手のひら返しにルイス達も困っていた。

ルイス「グランが目覚めるまでなんとか面倒事を片付けたいのだが…」

そこへ。

使用人「旦那様、陛下より迎えが。城に来てほしいとのことで。」

ルイス「陛下から?わかったすぐに行く。」


ルイスは城につくとカーセルのいる部屋に通された。

ルイス「陛下、本日はいかがいたしましたか?」

カーセル「今回、そなたを読んだのは今回の事件を解決してくれた、デストリカ家の長男についてだ。」

ルイス「息子のグランの事ですか。」

カーセル「うむ、此度の件だが、世間が何処からか情報を入手してな…そちらにも迷惑をかけている。」

ルイス「いえ!そのような事は。」

カーセル「無理をしなくても良い。大方、長男坊を取り込もうと見合いの話が来ているのだろう?」

ルイス「…はい。」

カーセル「実を言おう、私もそう思っている。」

ルイス「え!?」

カーセル「この国でも魔人を倒せるなど一握りだ、何より彼の者は魔力活性に至ったと聞く。そんな逸材を逃したい者などおらん。」

ルイス「しかし…息子は無属性ですが。」

カーセル「今やそれを帳消しに出来る程の強さを身に着けている。このままではどこぞの馬の骨に取り込まれるかもわからんぞ。」

ルイス(あいつ…案外ボーッとしてるしな…)

ルイス「で、どうしろと…」

カーセル「うむ、単刀直入に言うと娘と婚約させて欲しい。」

ルイス「…え?えぇぇぇぇぇぇ!!!?こ、婚約ですか!!?家のと!セリア王女を!?」

カーセル「うむ。」

ルイス「そ、そんないきなり!」

カーセル「…近年、魔皇教の動きが活発になりつつある。魔皇教の中でも魔人は上位の力を持つ存在、それらに匹敵する力は数々の国が欲するはずだ。」

ルイス「…あの子を王家の人間と婚約させることで、他国に戦力を奪われないようにしたいと。」

カーセル「そうなる。」

ルイス「しかし…しかし陛下はそれで良いのですか!セリア王女をそんなふうに…」

カーセル「…というのが理由の2割だ。」

ルイス「…へ?」

カーセル「残り8割は、家の娘がそなたの息子を随分気に入ってな。それ故に体のいい理由を考えたのだ。」

ルイス「な、なんだ…そうなんですか。」

カーセル「とは言え、決して嘘ではない。既に一部の隣国では情報が渡ってるかも知れん。今のうちに手を打っておくべきだと私も考える。そっちにとってもこれ以上縁談が来るのは鬱陶しいだろうて。」

ルイス「し、しかし息子にはなんと。こう言ってはなんですが、あの子はそういうのには興味を示さないものでして。」

カーセル「そこは私がなんとかしよう。とにかくまずはその者を連れてこなければ。叙勲式として、呼び出すのも有りか。」

ルイス「取り敢えず、目覚めてから考えます。」

カーセル「丁度、娘が見舞いに行っているらしい。帰ってきたら伝えるとしよう。」


セリアはこの話に二つ返事で賛成し、こうしてグランの叙勲式と称した縁談が進んだのだ。

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