第14話 狩猟実習 その4

第16班はその後問題なく進んでいた。

そんな中、カナンがリークにこんな質問をする。

カナン「そういえばリークさんとグランさんっていつからお友達なんですか〜?」

リーク「ちょっと待て、いつから俺とあいつが友達になってる。」

コウ「え、でも。グランさんが言ってましたよ?リークさんと知り合いかと聞かれたときに友達だって。」

レイブ(し、師匠にその話題はやばいって!)

リークを横目で見ると。

リーク「そうか…随分勝手な…」ビキビキ

レイブ(めっちゃブチ切れてる〜!!)

スイン「け、けれど、仲は悪くないんですよね?」

リーク「……奴は宿敵だ!!」

((((そこは好敵手じゃないんだ…))))


そんな話をしていると、大きな魔物の影が見えてくる。

コウ「あれは…オーガだ!」

スイン「おそらく、今回の実習での魔物のランクでは最高ランクですね。」

リーク「どうする?」

コウ「ここは全員で行きましょう。まず、リークさんが雷魔法で動きを鈍らせて欲しいです。そこから畳み掛けます。」

リーク「わかった。」



一方、グラン達もまたリーク達がいるエリアに近づいていた。

グラン「お!リーク達の魔力を感じるぞ。」

カリナ「他の班の反応もありますね。」

サリー「多分、ゴールが近くなってきて集まって来ている。けど、先の方に魔物の気配が沢山ある。」

グラン「集団行動をしていないところを見ると結構強いタイプだな。」

ヘレン「一度、他の班の出方を見ましょう。魔物の対処をしている間に抜け駆けできるかもしれません。」


リーク達の班はオーガの対処をしていたが。

レイブ(こいつ、意外と素早い!)

オーガに苦戦を強いられていた。

体格が大きいオーガだが、先程戦ったオークと違って小回りが利いて隙が少ない。

勿論、リーク一人で瞬殺できるが、今回の授業の趣旨に反するとして、リークは援護射撃に徹している。

それでも手加減した一撃であるが、班員が致命傷を負わされそうな攻撃を的確に妨害している。

とは言え、フォローするにも限界がある。

リーク(手を貸してやってもいいが…)


その頃、グラン達は

グラン「あのレイブってやつ結構、追い詰められてんな。」

ヘレン「え!?」

グランはレイブの魔力の反応から少しずつ不利になっているのを感じた。

グラン「あ〜これはやばいな…リークの奴何やってんだ?」

ヘレン「た、助けないと!」

カリナ「けど、助ける理由はこっちにはありませんけど…」

ヘレン「そ、それは…」

グランはジッとヘレンを見る。

グラン「僕はリーダーの判断に従いますよ。指揮権はあなたにあるから。」

ヘレン「私は…」

少し考えて…

ヘレン「助けます…グランさん、お願いします。」

その言葉と同時にグランは飛んでいく。

そして、レイブを攻撃しようとするオーガの頭を蹴り飛ばした。


レイブ「え…?グラン君?」

グラン「よっす!レイブ君!調子どうだ?」

レイブは突然現れたグランに驚きを隠せなかった。

リーク「グラン!!貴様…なんの真似だ!!」

リークも怒りの形相で出てくる。

レイブ「師匠…」

リーク「余計なことをするな!貴様が出なくてもこいつにやらせておけばいいんだ!」

グラン「リーダーの指示なんだよ、そいつを助けろって。」

リーク「何?誰だそいつは。」

少ししてヘレン達が追いつく。

レイブ「ヘレン…」

ヘレン「レイブ、大丈夫?」

心配そうにレイブに声をかけるが、彼の目は少し冷たかった。

レイブ「なんで割って入ってきたのさ。」

ヘレン「え…?」

レイブ「僕がやらないといけないのに!そうじゃないと成長できないじゃないか!それに、君がやるならまだしも、グラン君に頼るなんて!」

ヘレンは何も言えなくなる。

幼い頃から一緒にいて、属性を持たない彼の事をずっと心配して生きてきた。

グランに挑戦したあの日も心配でしょうがなかった。

レイブ「自分の力でやらないなら邪魔しないでよ!!行きましょう!師匠!」

少し呆れたように怒鳴って進んでいく。

グラン「俺たちも行こう。」

ヘレン「はい…」

そしてゴールに到着する。


ルティファ「全員お疲れ様!今日の演習はここまでだ!来週に今日の事のレポートを提出するように。」


セリア「グラン君、どうでしたか?」

セリアがグランの元にやってくる。

グラン「まあ、ぼちぼちってところかな?そっちは余裕そうだな。」

セリア「ええ、取り敢えず今日のまとめをしてレポートを早く仕上げなければ。」

そんな話をしているとヘレンがやってくる。

ヘレン「グランさん、少しお話が。」

グラン「なんですかい?」

ヘレン「今日のことで…相談が。」


三人は庭のベンチに移動した。

ヘレン「私の判断は間違っていたんですよね…」

少し、何かを諦めたような表情で彼女は話す。

グラン「結果論で言えばそうだろうな。」

ヘレン「ずっと…心の中で彼を信じてあげられない自分がいるんです。出来るはずないって…こんなの無謀だって。」

セリア「まあ、それが普通の反応ですよ。無茶も良いとこですから。」

ヘレン「けど、ここまで真剣に夢を追いかける彼を見て、どう接するのが良いのかわからないんです…私は彼みたいに確固たる意志がありませんから。」

グラン「じゃあ、なんでこの学園に?」

ヘレン「彼が受けるから…それだけなんです。くだらないですよね?ただ、気になってる相手が受けるから自分も受けるなんて。」

グラン「いや、それ言ったら自分もそうなんだけど…」

ヘレン「え?」

グラン「俺がここに入ったのはリークと友達になりたいってだけなんだけど。」

ヘレンはポカンとする。

学園でも屈指の強者として入学してすぐに有名になった彼の目的、どれほど崇高なものなのかと思っていたのだが…

グラン「どいつもこいつも変に悩み過ぎな気がするんだけどな〜。結局単純でいいんだよ理由なんて、そいつにとってそこに頑張る価値があるなら。」

ヘレン「そんな単純で良いのですかね…」

ヘレンは少し悩んで立ち上がってグランに向き直る。

ヘレン「ただ、彼の夢を手伝いたい。彼の隣に立ちたい、そんな単純な理由で、私も…あなたみたいに強くなれますか?」


こちらの運命の歯車も少し狂い始める。

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