第6話 試験の裏話

アリサ(間近で見たのは初めてですが、矢張り圧倒的ですね。)

レイブが医務室まで運ばれた後、アリサは職員室で明日からの準備をしていた。


ルティファ「どうだったアリサ、私の弟子は?」


その声にアリサは隣をキッと睨む。


アリサ「話しかけないでくださいルティファ先生。」


ルティファは困った顔をする。


ルティファ「はぁ…あなたが私を嫌いなのはわかってるけど…今は同じ教師なんだから少しは愛想よくしてくれても良いんじゃない?」


その言葉にアリサは息を吐き、少し冷静になる。


アリサ「それもそうですが、あなたがグラン·デストリカを教えていたのは驚きでしたよ。」

ルティファ「言っとくけど、あの子はマジで天才ではないからね。」


自分の事もあってか、グランが誤解されているのではと思ったルティファは言う。


アリサ「ええ、それは私もわかりますよ。あの強さは生まれ持った物ではないですね。」

ルティファ「そうよ、むしろあなたが教えてる子のほうが才能があるわ。」

アリサ「まあ、偉そうで手はかかりますけどね。それより、あの挑戦者の子はどう思いますか?」


話題に出てきたのはレイブの事だった。


ルティファ「レイブ·エンポリオだっけ?グランと同じ無属性だって聞いたけど、まさか初日にグランに決闘を挑むとはね。」

アリサ「正直、あの時の会議での決定は正しかったのか疑問です。この先、彼が生き残っていけるか…」

ルティファ「あら?あなたの弟子の事は気にしてないの?」

アリサ「信頼していると言ってほしいですね。あなただって心配はしていないのでしょう?」

ルティファ「ええ、彼はあなたの弟子以外の奴に負けることは無いよ。それで、気になるの?」

アリサ「一応担任なので気にしておかないといけないんですよ。」



入試より3日後の日

会議室にて


「まさか同立で満点首席が二人も出てくるとは。」

「一人は、サンダリオ家の天才。リーク·サンダリオ。筆記も優秀だが、実技でも雷の魔力を手に纏わせて剣にして的を切るとは。真銀を真っ二つにする受験生なんて初めて見ましたぞ。」


会議に出席しているアリサは少し誇らしげにしている。


「もう一人は、グラン·デストリカ!9歳にして魔人を倒した者。こちらも無属性ながら凄まじい魔力量と操作技術ですよ。挙げ句、この年で魔力活性の領域に足を踏み入れておりますからね。」


アリサの隣に座っているルティファはニヤニヤしている。


「今年は非常に豊作ですな、ナユラ学園長。」

ナユラ「そうですね。」


そう言われた、緑髪の女性が答える。

彼女はナユラ·ソルベルト プリズム学園の現学園長である。


ナユラ「これほど優秀な者達が入ってきてくれるのは非常に喜ばしいことですね。…聞けば、あなた達が教えたんだとか?ルティファ先生、アリサ先生?」

ルティファ「ええ、まあ。」

アリサ「そ、そうです。」

ナユラ「凄いわね〜!それにしても、嬉しいわ〜。あなた達二人がこの学園で教鞭を執ってくれるなんて!」


ちなみにルティファとアリサはナユラが教壇に立っていた頃に担任をしており、二人はナユラの教え子でもあるため、二人は彼女に頭が上がらない。


ナユラ「あの頃は苦労させられたわ〜。二人共優秀だけど、いつもいがみ合って、度々問題を起こしていたから〜。」

ルティファ「うっ…すみません。」

アリサ「その節はご迷惑をおかけしました…」


その様子をみてナユラはクスクス笑う。


ナユラ「アリサ先生にはこの二人を担任に持ってもらうから、しっかり面倒を見てあげてね。」

アリサ「わかりました。」

「さて、この二人のことは良いですが、問題はこの者です。」


次の資料に書かれていたのはレイブの事だった。


「レイブ·エンポリオ、彼は今回首席のグラン·デストリカと同じ無属性ですが…彼は合格ラインギリギリです…」

「正直…ここでやっていくには無理があるんじゃないか?グラン·デストリカは異例だ、皆が皆彼と同じではない。」

「そうですね、何よりラインギリギリというのがなんとも…これで真ん中位ならなんとかなったと思うのですが。」


それぞれ難しい顔をしていた。レイブは確かに合格ラインを超えている。しかし、無属性というのがどうしても足を引っ張ってしまう。グランのように首席で合格という文句無しの成績なら問題無かったが、最下位での合格というのがやはり問題視となる。


「学園長、いかがいたしましょう?彼を合格させてもここでやっていくのは無理では?」


ナユラは少し目を閉じて考える。

やがて彼女は言う。


ナユラ「この学園では来る者を拒む理由はありません。彼は合格基準を満たしているのは紛れもない事実です。」

「では、入学させると?しかしそれでは彼には酷では?」

ナユラ「私はあくまでも学園のルールに則って決めているだけです。ここに入る意志もある。基準も満たしている。受け入れる理由はあります。それでここを去るのも私達の知ったことではありませんが。」


この学園で年々退学者が出ることは珍しい事ではない。

ナユラはレイブの事を受け入れると言っているがそれは学園のルールだからである。


ナユラ「この学園では生徒の選択を尊重します。例えそれがこの学園を去るという選択であってもです。だからこそ、彼の入学を私は認めます。」


こうして彼の合格が決定した。



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皆さん、新年あけましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!

また、少し日が空いてしまいましたが、これからも一年頑張っていきたいと思います。

この小説をよろしくお願いします。



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