第10話 半成人式
リークとの出会いから3年。
グラン·デストリカ9歳。
彼は現在、王都に向かっていた。
ルイス「グランも遂に半成人か、早いものだな。」
ミア「色々あったわね。」
フレト「僕達も来年、半成人だよ!」
ミリシャ「お兄様はミリシャをお祝いしてくれるよね!」
フレト「何言ってんのだよ!僕だよ!」
グラン「どっちもお祝いするに決まってるだろ?喧嘩するなよ。」
この世界では18歳から成人という扱いになっている。その折返しをで半成人と呼ぶ。
基本的にこれは家族で祝うのだが、今回は第一王女も半成人を迎える為、国ぐるみで開催されることとなった。
因みにこの第一王女はこのゲームのメインヒロインである、セリア·クロファボール第一王女のことである。
長い金髪と可愛らしい顔立ちで非常に人気の高いヒロインで、当時初心者にはまず選ぶならセリアと言われていた程である。
グランも推しというほどで無いが彼女の事はよく知ってる。
彼女はよくある異世界物の聖女枠の人間で属性は火で更に生まれながらに希少属性である光を持っている。
無属性とは逆でこの世には希少属性がある。それが癒やしと退魔の力を持つ光属性と呪いと怒りの力を持つ闇属性である。後に勇者に目覚める主人公も光属性を手に入れる。魔王は闇属性を持っている設定でそれに対抗手段を持つ勇者が魔王を倒しすのがこのゲームの筋書きである。
城の会場に着くと大勢の人々で賑わっている。
皆グランと同じように半成人した子供である。
ミリシャ「お兄様!少し見ていこうよ!」
フレト「僕も行きたい!」
リーク「そうだな〜。んじゃ行くか!」
ミア「開始までに戻ってくるのよ〜」
「「「は〜い。」」」
双子が会場を見て回りたいというのでグランが一緒について行く。
「なあ、あれ…」ヒソヒソ
「無属性の…」ヒソヒソ
グランを見ると周囲からそんな声が聞こえてくる。
フレトとミリシャは少し悲しげな顔をするが。
グランはすっかり慣れている。というか気にならなくなった。その気になれば一瞬で黙らせられるし何より本人が割とあっけらかんとしているのだ。
そもそもこの程度の事は普段の修行に比べたら屁でもない。
グラン「・・・」ギロ
「ヒッ」「ウッ…」
無論、家族に被害が行けば話は別だが。
ルティファ「グラン!」
グラン「ルティ師匠!」
ルティファ「半成人、おめでとうだな。」
グラン「ありがとうございます。」
ルティファ「お前を教えて5 年か、早いものだな。」
ルティファは今回、雇われの護衛として来ていた。と言っても本当は弟子に会いに来るためであるが。
フレト「ルティファさん!僕達も最近、兄さんに鍛えてもらってるんだ!」
ルティファ「ほお!そうか、あんまり厳しくてやるなよグラン?」
グラン「師匠みたいにはしませんよ。」
ルティファ「はは、言うじゃないか。」
そんな会話をして別れる。
ミリシャ「あ、リークさんだ!」
ミリシャがそういうので見てみるとリークがこっちに来ていた。
リーク「グラン!」
グラン「リーク、久しぶりだな!…随分腕を上げてんじゃねえか。」
リーク「ふん、当たり前だ。いつまでも遅れを取るつもりは無い。そっちこそ怠けてないようだな。」
グラン「当然だぜ、こっちも色々頑張ってるからな。」
ミリシャ「リークさん!私達もお兄様に鍛えてもらって強くなってるよ!」
リーク「む?…ほう、確かにその年で中々の物だな。」
フレトとミリシャは数年前から時々グランと手合わせをしている。それによって二人は当時のグラン程でなくても突出した力を持っていた。
グラン「ところでお前の後ろにいるのは?」
リーク「ん?ああ…こいつのことか。一応、俺の婚約者の女だ。おい、挨拶しろ。」
そう言ってリークの後ろから出てきたのは眼鏡をかけたおさげ髪の少女だった。少し俯いていて表情がよく見えない。
彼女の名はユーナ·ナトアリア 属性は風。
グランの家とは位がひとつ下の子爵家の令嬢である。
原作でもリークの婚約者でありゲーム内ヒロインの一人だ。
彼女は天才であるリークとことあるごとに比べられ自分に自信がない。またリークからも冷遇されていて辛い日々を送っていた。そんな中、主人公と出会い様々なイベントをこなす中で彼女自身も成長していきやがて主人公と恋に落ちていく。
彼女は多くいるヒロインの中でも比較的おとなしいタイプのヒロインでどこか守りたくなるようなそのビジュアルと性格でコアなファンが多い。
また主人公に献身的な姿に心打たれたユーザーも多いだろう。
ユーナ「あ、えと、ゆ、ユーナ·ナトアリアです…よろしくお願いします…」
リーク「…ちっ、見ての通りのやつだ気にしなくていい。」
グラン「そ、そうか。」
ミリシャ「お姉さん俯いていて何言ってるかわかんな〜い。」
グラン「コラ、ミリシャ!」
リーク「いや構わない。貴様、言われているぞ、恥ずかしく無いのか。」
ユーナ「う、あ、ごめんなさい…」ビクッ
その様子にリークは舌打ちをする。
リーク「反抗する気力も無いのか貴様は…」チッ
グラン(こりゃ相当だな、ていうかリークのやつ原作よりユーナのこと嫌ってないか?…いやどちらかと言えばこれは…自分より弱いから蔑んでるというより彼女のことが気に食わなくて嫌悪してる感じか?)
グラン「そろそろ戻るよ、また今度手合わせでもしようぜ。」
リーク「そうか、わかった。行くぞ。」
ユーナ「…」コクリ
そうして二人も家族の下に戻る。
途中、フレトが誰かとぶつかる。
フレト「いた!」
グラン「あ、すみません!大丈夫ですか?」
ローブを被った男だった。
男「いや、問題無い。こちらこそ失礼した。」
グラン「…?」(この人…)
男「…何か?」
グラン「あ、いえなんでもないです…」
男「では失礼する…」
そう言って男は去っていく。だがグランは何故か違和感を感じていた。
グラン(今の男、なんだ?何か普通とは違ったような…)
やがて半成人式が始まり、カーセル·クロファボール国王が出てくる。隣には王妃サリー·クロファボール、第一王女セリア·クロファボール、その兄の第一王子アーサー·クロファボールがいた。
カーセル「皆のもの、今日はよく来てくれた。今回の半成人式で我が娘セリアが半成人となった。それを祝ってこの場を用意した。みな楽しんで言ってほしい。では乾杯!」
その瞬間、会場に爆発が起こった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます