第4話 彼を見ていた者
リーク「なんだと?」
「で、ですから…ユーナ様が攫われました!!」
使用人からの言葉に修行を休憩中のリークは頭を抱える…
リーク「詳しく話せ。」
「本日、屋敷に来る途中に何者かによってユーナ様が乗ってる馬車が襲われました!護衛達でも歯が立たない相手のようで、魔皇教の一員だと考えられています。」
リーク「…わかった、父上や向こうの家はどうしてる?」
「旦那様とナトアリア家は捜索隊を作って、現在捜索中とのことです。すぐにリーク様にお伝えするように仰せつかり参りました!」
リーク「…そうか、ご苦労、下がれ。」
そう言うと、使用人は礼をして部屋を後にする。
アリサ「魔皇教ですか…面倒なことになりましたね。」
リーク「ああ、だが目的が分からない。ユーナを攫って何になる?あいつの属性は風だ。セリア殿下の時とは明らかに目的が違う。身代金か?いやならもっと大きな家から…」
アリサ「身代金はありえませんね。奴らは金策の為には薬物など目立たず確実に金を稼ぐ方法を取ります。令嬢一人を誘拐するために時間を使わないでしょう。」
リーク「まあいい。」
そう言ってリークは立ち上がる。
アリサ「助けに行くのですか。」
リーク「別にあの女が死んでも悲しくはないが、このまま何もしないのも癪に障る。あの女の魔力なら覚えている。探知に集中すれば見つけるのは難しくはない。」
アリサ「…そうですか、ならお手伝いはしましょう。」(素直に助けに行くって言えないのですかね。)
そしてリークはその場で座り目を閉じて探知に集中を始める。
リーク「……見つけた。ここからの距離はそう遠くない。地図に印をつけておくから、あんたから父上達にも伝えておいてくれ。」
アリサ「わかりました。」
そしてリークは窓から念動力で飛んでいく。
リーク(…ちっ、俺が来るまで死ぬんじゃないぞ。)
視点 ユーナ
私は今ある廃墟に連れてこられていた。
「フフフフ…随分大人しくしていますね〜。」
ユーナ「…何が目的ですか。」
目の前の男の笑う男に問いかける。
「興味ですよ、あのナルタを倒したグランとか言うガキの好敵手だと、噂で聞いたのでね。サンダリオ家の長男はかなりの天才だと聞きましたからね〜。危険因子となれば始末するだけでよ。」
ユーナ「…彼なら来ませんよ。私の事なんてどうでも良いでしょうから。探してるのはお父様とお母様ぐらいでしょう。」
「どうですかね〜?案外すぐ来るかもですよ〜。」
ユーナ(…来るはずないですよ。彼は私が嫌いですから。…でも、来てくれたら嬉しいですね。)
4歳のころ、初めて会った時の第一印象は恐いでした。
どこか威圧感というか、見下されたような視線を感じました。
縁談の挨拶の時、両家の両親が取り敢えず二人で話をしてみてと言われたので、部屋で二人でいました。
リーク「リーク·サンダリオだ。」
ユーナ「ゆ、ユーナ·ナトアリアです。これからよろしくお願いします。」ペコリ
リーク「ふん!お前のような雑魚とよろしくやるつもりはない。」
ユーナ「あ、あう…」
毎回毎回、こんな態度を取られ続けました。
才能のないやつ、雑魚、根暗、そんなことを言われ続けました。
しかし、2年後の6歳の誕生日パーティの日からあの方はどこか変わられました。
していなかった修行を始めて、わざわざ専属の先生まで雇って、どうしたのかと思いました。
そこで知ったのが、彼が負けたという事実です。
デストリカ家の無属性の長男。彼がリーク様を負かしたと耳にしました。
そして彼がリベンジに燃えていることも。
しかし、私への態度は変わってはいませんでした。
リーク「お前は相変わらず弱いやつだ。」
でもそれは馬鹿にしているというより呆れている感じでした。
リーク「あいつと違って属性があるくせに…」ボソ
ユーナ「え?」
リーク「なんでもない。…それと父上達が偶にはお前に構えとうるさいから出かけるぞ。」
ユーナ「は、はい…」
彼とのデートは決して心躍るものではない。
へたなことを言って機嫌を損ねないように気を使うばかりだ。
領地内の街を歩いているとある物が目にとまった。
青色の綺麗な花だった。
ユーナ「…綺麗。」ボソ
リーク「なんだ、あの花が気になるのか。」
ユーナ「え!?まあ、はい…」
リーク「…フン!」
買ってくれるんじゃないかと期待していたが、まあそんなことは無かった。
でも、半成人式の事件の後。
彼は例のグランさんのお見舞いに行っていて会えなかった時にセリアさんから花束を渡された。
ユーナ「こ、これは?」
セリア「リーク様からですよ。以前あなたが見ていたから会えないお詫びに渡しておいてくれと言われまして。」
ユーナ「リーク様が…」
なんていうか嬉しかった。何か文句を言われるのを防ぐためだったりしても、彼が私が見ていた花を覚えていてくれたのが嬉しかった。
セリア「彼は決してあなたに興味が無いわけではありませんよ。ただ、関わり方がわからないんだと思います。だから、あなたから歩み寄って上げてください。」
ユーナ「でも、今更どうやって…」
セリア「見て、理解てしておく。彼の頑張りを。彼が何故、悩み、苦しんでいるのかを。そうすれば自然と寄り添うことができますよ。」
ユーナ「…そういう物でしょうか。」
修行に明け暮れる彼の姿は、はっきり申し上げますと泥臭くて醜い足掻きに見えました。
けれど、そうやって悩んで苦しんでる彼の姿にどこか親近感のようなものが湧きました。
彼もまた自分と同じ人間なのだと実感できたんです。
寝室で彼が泣いていたあの日、私は言うべきだったのかもしれません。
「大丈夫、きっと超えられます。あなたはこんなにも頑張っているのだから。」と。
だって知っているから。
あの事件以降、グランさんを認める声が増えてきました。
しかし、その殆どが彼の力を手に入れようとする者ばかり。中には妬みを抱く者もいると聞きます。
けれど、自分で彼のようになろうと努力するものはいなかった。
あなただけでしたよ、リーク様。
だから私が嫌いなのでしょう?
何も変わろうとしない私が。
いつも俯いてばかりで、弱気で流されるままの私が。
だから…
ユーナ視点終了
「いきなり立ち上がってなんですか?」
ユーナ「彼はやはり来ませんよ。来る必要がありません。私があなたに勝って、帰りますから。」
「はあ?…フフフフ、ぶははははは!!!あっはっはっはっ!!イーヒッヒッヒッヒッ!!!何を言い出すかと思えば!私に勝つ!?あなたが!?なんの修行もしたこともない、魔力量も普通よりちょっと多いだけ!温室育ちの令嬢さまがよくもまあ!フハハハは!良いでしょう、この私。セバラスが少し現実を見せてあげますか。」
ユーナ「…行きます!」
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次回は久しぶりの戦闘描写です。
うう…ここ最近、変に長ったらしくなってる気がする…
1800pvありがとうございます!
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