後日譚。 ※異物が混ざった世界にて

美愛の日常



「好きです。僕と付き合ってください」


「ごめんなさい」


「っ...。せめて友達からで


「ごめんなさい」


──も...」


「話はもう終わりです。では」


「まって──」



後ろから呼び止める声が聞こえるが無視して自分の教室に戻るため踵を返す。



「美愛、よかったの?今の浜地ハマチ先輩だよ?」


「知らないよ。大体廊下で急に話しかけられたと思ったら告白とか何考えてんのって感じ」


「あはは...確かにびっくりしたねぇ。

でも浜地先輩って2年で一番かっこいいって言われてるんだよ?」


「興味ないし」


魚みたいな名前だなとしか思わなかったな。


「美愛って本当に男に興味ないよねぇ。

もしかして女の子が好きだったりする?」


「別にそう言うわけじゃない。大体元彼いるし」


「あー...。元彼が完璧すぎて次に行けない感じ?」


「まぁそんなとこ。優君よりかっこいい人なんていないし」


「大変だねぇ」


「私のことより自分の心配しなよ。

杏里アンリはどうなの?山本ヤマモト君とは」


「もー全然だよ!あの鈍感男!」


「御愁傷様」



この騒がしい子は同じクラスの坂本杏里サカモトアンリ

高校からの友達だけど、私の通ってる高校は地元なこともあって中学から一緒の子が沢山いるから優君と付き合っていたことは割と知られてしまっている。

セフレになってることは流石に誰も知らないけれど...。


や、咲夜ちゃんと雄平君は知ってるのかな?

まぁ他人に言いふらすような人達じゃないから大丈夫だと思う。


「やっほ、美愛。お疲れ」


「ありがと、咲夜ちゃん」


なんてことを考えていたら咲夜ちゃんが話しかけてきた。


実は咲夜ちゃんと雄平君とは優君と別れてから色々あって同じ高校にも関わらず疎遠になっていたんだけど、夏休みに実は咲夜ちゃんも優君のセフレになっていたことが発覚してなし崩し的にまた話すようになっている。


...正直優君に手を出したことは気に入らないけれど、咲夜ちゃんが雄平君と付き合ってからも優君に特別な感情を抱いていたことを薄々察していた身としては複雑な心境だ。

まぁ、それがなくても所詮今の私はセフレの1人でしかないからとやかく言える立場じゃないのは理解しているし、元々は仲良しな友達だったから目を瞑っている。


「しかし美愛はモテるね〜」


「嬉しくないけどね」


そんな感じで咲夜ちゃんと話していると、

気づけば杏里がいなくなってしまっていた。


...と言うのも、この咲夜ちゃん。

悪い意味で有名であまり関わりたがる子がいないのだ。


ビッチ

ヤリマン


咲夜ちゃんが裏で言われている言葉だ。


まぁ事実そうなのだから本人的にはノーダメージらしい。



──ちなみに杏里には内緒にしているけれど、杏里の好きな人である山本君に唾をつけようと息巻いていたのを聞いて全力で辞めさせた過去があるので杏里が咲夜ちゃんを苦手にしているのは正解だったりする。

流石に友達にWSS(私が先に好きだったのに)を

味合わせたくはなかったから。

...まぁ私は咲夜に似たようなものを味合わせたのだけれどそこはご愛嬌ね。



「そろそろ戻った方がいいんじゃない?」


「あ、もう昼休み終わっちゃうね。ばいばい」


「ばいばい」



ひらりと身を翻し自分の教室に戻る咲夜ちゃんを見送る。


「また派手な下着ね...」


短すぎる丈のスカートを履いている咲夜ちゃんがそんな動きをするものだから当然下着が丸見えになる。

高校1年生にして真っ赤なTバックを履きこなす咲夜ちゃんには呆れを通り越して感服すらしてしまった。


私は完璧な貞操観念を持っているため、

優君以外の男の子に欲情されないよう長めのスカート丈に見せパンを履いているため少しだけ奔放な咲夜ちゃんが羨ましい。


「もう少しくらい短くしようかな...」


やっぱりJKたる者、ミニスカートの方が可愛いとは思ってしまう。

まぁ優君と会う時だけはこれでもかと短くしてるのだけどね。



◇◇◇



「...で、あるからして〜」


(優君に会いたいなぁ)


つまらない授業を聞きながら物思いに耽っていると、視線を感じて目を向ける。


(わ、雄平君じゃん...)


視線の先は咲夜ちゃんの元彼であり、疎遠になっているものの私自身友達だった雄平君のものだった。


(なんだろ)


とは思ったけど、そう言えば自分の教室の前で咲夜ちゃんと話したのは初めてかもしれないと考えて何となく予想がついた。


(十中八九、咲夜ちゃん絡みだろうなぁ...)


雄平君が咲夜ちゃんに未練があるのは誰から見ても分かるようなもの。

まぁ振ったのは雄平君らしいけど。


そんなに未練があるなら咲夜ちゃんの男遊びを受け入れてしまえばいいのに、なんて、優君に対して似たような立場である私からしたら思ってしまうんだけども。

まぁ私みたいな考えは一般的じゃないしね。



なんて考えているうちに授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

と同時に私は近づいてくる雄平君を眺めながら、

面倒臭いことになりそうだなぁとは思ったものの、万が一上手く行ってくれれば優君に咲夜ちゃんが近づかなくなるかもなんてあるはずのない希望を胸に灯してみた。

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