断章。 ※この物語は一部◼️◼️されます

待ち受けるは何の因果か



「おう、悪いな。お待たせ」


「大丈夫ですよ。連絡くるまでずっと家にいましたから」


「そうか。ほらよ」


そう言ってカイさんは俺にヘルメットを投げ渡してきた。


「おっと。じゃあ失礼します」


「しっかり掴まっとけよ」



俺はバイクの後ろに跨った。



今日は夏休み半ば、お盆の時期だ。

そんな時期に俺とカイさんは男2人で旅行に向かっている。



◇◇◇



夏休みに入ってすぐ、俺は実家に帰った。

仕事だけならともかく、学校があるから一人暮らしをしているだけで、本当はセックスする時以外毎日だって実家で過ごしていたい俺だ。そりゃあもう真っ先に帰ったさ。



ちなみにこの夏休み中、セフレ達とは会わないことにした。

最近俺への感情の重さをひしひしと感じることが増えてきて、ここらでクールタイムを挟みたかったからだ。


まぁ咲夜は実家が近所だし、小百合は仕事で会うから全員と会わないわけにはいかないけども、それでも2人には夏休み期間はセックスは我慢してもらうことにしている。

まぁ咲夜は副会長と旅行に行くらしいし、

小百合は彼氏持ちだから大丈夫だろう。


そういえば一番文句を言われると危惧していた紗雪は夏休みを利用して母親と2人で海外に行った。

期間はなんと丸々1ヶ月だ。



「今までは家で篭ってヒカルと...まぁ中学3年生の時はほとんど1人だったけれど、勉強しかしてなかったわ。でも今年は現地で語学を学ぶわ。読み書きはできるけれど発声や聴き取りはやっぱり現地ね」


「お。じゃあついでに現地の外国人と致したらどうだ?ハマる奴はハマるらしいよ」


「バカにしないで。あなた以外に触らせるくらいなら死を選ぶわ。後もし次そんなようなこと言ったら殺すから」


「すいませんでした!」



なんてやり取りもあったがまぁ、ご愛嬌だ。



ちなみに他のセフレ達だが、

お化けが怖い楓先輩は実家に帰り、

立花はなぜか山籠りに行った。

生徒会メンバーは全員俺に従順だから

ある種の放置プレイってことにしてもらっている。



そんなこんなで俺は夏休みを快適に過ごしていた。

家族や山梨家と交流して、仕事して、美愛や彩花+メイと遊んで、たまに丸一日だらだらしたりしていた。


え、セフレ達とは会わないんじゃないかって?

...美愛と彩花(+メイ)に会わないのは悪いけど不可能だ。俺の命が危うい。



そんな夏を過ごしていたある日、カイさんからこんな連絡が届いた。


「よう、お盆は暇か?宿代はかかんねえから旅行いこーぜ」


詳しく話を聞くと、旅行先は日本にしては珍しく海が綺麗で、それによって人が集まることから有名な観光地になっているので旅行に行くにはもってこいなこと。


カイさんの親戚はそこで旅館を経営しており、カイさんは毎年お盆の時期は一人でそこに泊まってること。



そして何でカイさんが毎年一人で泊まりに行ってるかと言うと──



「毎年そこの海に行って女引っ掛けんのが俺の夏の過ごし方なんだよ。

なんせ全国から人が集まるからレベル高いんだよな」



とのことだ。

我が先輩ながらなんとも邪な理由である。



ついでに、カイさんは無料で泊めてもらう代わりに、旅館を手伝っているらしい。

と言っても、夕飯の時間帯のみ、料理の配膳をするだけだ。

何でそのくらいの手伝いで親戚とは言え毎年無料で泊めてもらえるかと言うと、

みんな忘れてるかもしれないがカイさんは女癖が悪いだけでイケメンで人気モデルだ。

そんな人が毎年この時期その配膳のタイミングでくることは恒例行事になっていて、SNSでも宣伝しているらしい。それ目当てで泊まりに来る女性客も多いらしくwin-winの関係になっているそうだ。


そして、


「でな、俺とお前が仲良いことは割と有名だろ?よかったら連れてきてくれって言われてな。お前なら下手したら俺より宣伝効果あるだろうし、簡単な手伝いだけしてくれれば勿論お前も無料だ。それに、配膳以外はずっと俺と遊んでていいって言うしよ、どうかなって」



とのことだった。

手伝いは少し面倒臭いが、旅館に無料で泊まれるのも、カイさんと旅行ということにも惹かれた。


それにうちは祖父も祖母も健在で墓参りの予定はないし、反面山梨家は墓参り兼家族旅行に行くので美愛との予定もない。

彩花は丁度お盆はメイと旅行に行くので、俺の予定は空いていた。



更に決定打となったのが、



「野郎二人ナンパ旅しようや」



この一言だった。



前世で芸能界にいた時、

俺は一人だけで女遊びをしていたわけではない。

先輩後輩問わず女遊び仲間はいて、

みんなで夜遊びをしていたんだ。

...まぁスキャンダルから飛び火を恐れてみんな離れていったけどな。


そこからは前世から今世にかけて俺は一人だけで女遊びをしていたが、なんだかんだ野郎と一緒に女遊びをすることの楽しさを知っていた俺は若干の物足りなさを覚えていた。



そんな俺にカイさんの誘い文句はクリティカルヒットだった。



え、ナンパとかスキャンダル対策は大丈夫なのか?

まぁ今世は別に芸能人じゃないし、

前世みたいに週刊誌に追われてたりはしていない。あくまで一モデルだ。

そしてこれが1番の理由だが、そもそもこの世界にスキャンダルを追うような週刊誌がない。その代わりにSNSに注意しないといけないけどな。

まぁ旅の恥はかき捨てって言うし大丈夫だろう。

...多分。

ハ、ハメを外しすぎないようにしよう。



そしてきたるお盆。

バイクで迎えにきたカイさんに乗せてもらって、俺達は野郎二人ナンパ旅に向かったのだった。



────────────────────



夏休み編開始します。


気長にお付き合いください。

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