さながらクズの如く
「あらあら、いらっしゃい、カイちゃん、佐藤君。佐藤君、あなた凄い男前ね〜。
カイちゃんと同じくらいかっこいいんじゃない!?」
「今年も世話んなります。香織さん」
「あはは...。初めまして、佐藤優です。お世話になります」
無事に目的の旅館に辿り着いた俺達を出迎えてくれたのはカイさんの親戚、坂柳 香織(さかやぎ かおり)さんだった。
年齢は40を越えていると聞かされていたが、流石カイさんの親戚だけあって凄く綺麗な女性だ。
「はい、いらっしゃい。そしたらあなた達の部屋に案内するわね。ちゃんと2部屋取っておいたわよ」
「うっす、あざす。ほら優、行くぞ」
「え...?あ、はい」
わざわざ2部屋も取った意味が気になったが、先導する香織さんにカイさんがさっさと着いて行ってしまったため、まぁ後で聞けばいいかと思い慌てて着いて行く。
まず最初に俺の泊まるとこだと案内された部屋は客室露天風呂付きの、端的に言って凄くいい部屋だった。
「じゃあカイちゃんの部屋は隣だから。
後で手伝いのちょっとした指導だけするけどそれまでゆっくりしてってね」
「は、はい。ありがとうございます」
そのままカイさんは自分の部屋に行かず俺の部屋に腰を落ち着かせたので早速聞いてみる。
「カイさん、どうして2部屋なんですか?」
「あぁ?お前、ナンパ旅だって言ったろ?仲良く4Pする趣味はねえぞ?」
「い、いや、ええ?もしかしてこの旅館に連れ込む気だったんですか?」
親戚の旅館に堂々と?
「当たり前だろ。何のために泊まってると思ってんだよ」
「い、いや、てっきりホテルで休憩で済ますのかと...」
「ああ?...あぁ、なるほどな。大丈夫だ、香織さんは口が固いし、あの人も若い頃散々遊んでたらしいからな、そこら辺は寛容だよ。むしろ若いうちはガンガン遊べって言ってくるタイプだ。ん?宿泊料?連れ込むのに金は取られねえよ。ま、身内特権だな。勿論お前も好きに連れ込んでいいぞ。飯は流石に俺達の分だけだし配膳中は待たせることになるから泊らせたいなら夜に改めて連れ込むのが安パイだな」
な、なるほど...。
今世の両親は生涯幼馴染のお互いしか知らない奇跡のような両親だし、前世の両親はスキャンダルに人一倍うるさい人達だったから親族には隠すものって言う固定観念があった。
...でもなぁ。
俺男友達と二人で旅行とか初めてだったんだよなぁ。折角なら一緒に寝たかったなぁ...。
...いやいや、そっちの意味では断じてないからな。
そこからは軽く世間話をした後、
今日はずっと運転していたカイさんも疲れていたのでゆっくり話しながら過ごした。
言い忘れていたが3泊4日の旅行なので無理に今日出かける必要もなかったのだ。
その後呼びに来た香織さんに連れられ、配膳の説明を受けた後シミュレーション形式で何回か練習し、毎年やっているカイさんと遜色ないレベルまでいくことができた。
「お前って本当ハイスペックだよな」
「まぁ、俺は基本的に何でもできますからね」
そもそも覚えることも少ないし、
営業スマイルは最初から熟練してるからな。
そしていざ、配膳。
「お待たせいたしました。こちら季節のおすすめコースでございます」
「え〜お兄さんここの人?超タイプ」
「あの、連絡先とか...」
「ぽー...」
ふっ、完璧な配膳だったぜ。
その後、俺とカイさんも夕飯をいただき、一緒に大浴場に入り、今はお互いの部屋にいる。
あれ、今日はナンパしてないし初日はカイさんと同じ部屋に泊まろうかな。
折角の旅行だし今日くらいいいよな。
そうと決まればカイさんの部屋に行こうと部屋を出ると、いつの間にどこかに出ていたのか、丁度カイさんが部屋に入って行くところだった。
...知らん女の人と一緒に。
いや、さっきこの旅館で見たわ。
多分宿泊客だあの子。
いや客に手ぇ出すのありかよ!!!!
...結局一人悲しく寝た。
なんか振られた気分。
◇◇◇
「うわぁ、これは凄い」
「だろ?絶景だろ?」
「はい、早く入りましょう」
「おう、早く入れたいな」
「これだけ綺麗だと、やろうと思えば簡単に(魚とか)沢山採れちゃいそうですね」
「まぁあんまり(女)採りすぎても身が持たないぞ」
次の日、早速俺達は身支度して海に駆り出した。
...俺は綺麗な海を見ての感想だったが、
カイさんとは多分噛み合ってない気がする。
さて、いざナンパとは言っても、
正直な話をしよう。
俺は街でナンパなどしたことがない。
勿論、海でも例外ではない。
俺の基本スタイルは待ち。
つまり逆ナン待ちだ。
さながらチョウチンアンコウの如く
この顔に釣られた獲物を見定め捕食する。
そしてカイさんは攻めだ。
さながらホホジロザメの如く
ガンガン攻めてどんな大物だろうと捕食する。
...稀に彩花の時のような失敗はあるがな。※
「待ってて転がってくる女捕まえても楽しくねえだろ」
とのことで、俺達は結局別行動となった。
勿論、待ちのスタイルだと自分好みの人がくるまで待つ必要があるのでカイさんの方が合理的なのは分かっているんだが、どうにも自分から声を掛ける気にはなれない。
昔から向こうから勝手に飛び込んできたことの弊害だと思う。自分からわざわざ声をかける必要性がなかったんだ。
さて、そんな俺なのだが。
「あの、よかったら俺とお話ししませんか?」
「わ、私達とですか?」
どうして自分から声をかけてしまったのだろうか。
────────────────────
※カイさんは昔彩花に迫って
股間を蹴り上げられた過去がある。
→佐藤君の職場での日常
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