理解の及ばぬ感情を
突然だけど私は、私達はとてもモテる。
近所でも昔から美人三姉妹と言われていて、
小中高、その全てで毎日のように告白されていた。
でもその全てを私達は断っていた。
何故か?他の二人─美人の姉と可愛い妹は知らないけれど、私に告白してきた人達、それは全員連絡先すら知らない、大して仲良くもない人ばかりだったのだから、当たり前の話でしょう。
そもそも、自分でも不思議なのだけど男性と仲良くなる気にどうしてもなれないのだ。
かと言って女性を恋愛対象に見ているわけでもない。
経験はないけど、恋愛と言うものに憧れはあるし、少女漫画や恋愛ドラマでキュンキュンすることだってある。
それなのに男性と親しくする気にすらなれないのだから、我ながら矛盾していると思う。
さて、そんな私達だから周囲には男嫌いだと思われている。
まぁ毎日毎日告白されてたらうんざりするし、自然と遠ざけてしまっていたからそれはある意味間違ってはいない。
でも実は私達はとある男性モデルのファンだった。
誰にも言ってないけど、家ではいつも3人で彼が出ている雑誌を持ち合ってキャーキャー言っているくらいだ。
そもそも彼の家は知らないけど、事務所付近で目撃情報がよくあることから住んでいる場所も遠いので出会うこともないだろうし、少女漫画のキャラにキャーキャー言っているような感覚だったと思う。
あぁ、何でいきなりこんな話をしたのかを説明しなきゃね。
私達3姉妹は夏休みを利用して、
国内でも海が綺麗で有名な土地に旅行にきていた。
相次ぐナンパにうんざりしつつも楽しんでいた時、彼にナンパされたのだ。
「あの、よかったら俺とお話ししませんか?」
またきたよ、と。
睨みつける気持ちで振り向いた時、私達の時が止まった。
そこにはモデル、佐藤優がいた。
そして私達は嘘みたいにあっさり彼に着いて行った。
◇◇◇
「俺は佐藤優って言います。お名前聞いてもいいですか?」
「私は篠原涼子(しのはら りょうこ)です」
「し、篠原美沙(みさ)です!」
「篠原優香(ゆか)です...」
今俺は人生初ナンパした女の子達と近くの海の家にいる。
さて、どうしてこうなったか。
俺はいつもの如く、ナンパ待ちをしていた。
カイさんに事前に言われていた通り全国から人が集まっているだけあって可愛い子も多く、何組か声をかけられたものの折角だからとよりタイプの子がくるのを待つため適当に流していた時だった。
俺の目に3人の美少女が止まったのは。
それを目にした時、今まで感じたことのないくらいに胸が高鳴った。
だが不幸なことに向こうはこちらに気付いていない。
いや、もし気付いていたとしても、俺だって全女性から好かれるなんて程自惚れていない。
ここで声をかけなければ絶対に後悔する。
欲しい。あの子達が欲しい。
こんな感覚は初めてだった。
柄にもなく、運命なんて言葉が過ぎった。
そして気がつけば俺は3人に声を掛けていた。
お話ししませんか?と、何の捻りもない誘い文句。
女性と会話することに関してはかなりの経験を持っているはずの俺が、その一言を噛まずに発するのが精一杯だった。
正直に言って、めちゃくちゃ緊張したんだ。
だから今、あんな雑なナンパで無事に3人と話せている状況は割と奇跡だと思う。
俺の目はかなり肥えていると自負しているが、そんな俺から見てもこの3人はめちゃくちゃ可愛い。
ナンパなんかされ慣れているはずなのだが...。
それに信じられないことだが、この俺が話しているだけで緊張している。正直心細くて仕方ない。カイさんにヘルプを求めたいくらいだ。
ちなみにカイさんは既に捕まえて連れ込んでるらしい。判断が早い。
なんとか平静を装い会話を続け、この3人のことが大体わかった。
3人とも遠くから旅行にきているみたいで、
涼子さんが俺の2つ上、美沙ちゃんが同い年、そして優香ちゃんが1つ下だった。
涼子さんは長い黒髪をポニーテールにした背が高くスレンダーなかっこいい系の美人。
美沙ちゃんは小動物を思わせる美少女ながら水着を着ていることによって顔にそぐわぬ巨乳が際立つギャップの塊。
優香ちゃんは静かで大人しい感じの儚い美少女だが髪色がピンクなので一番目立つ。
「でも、びっくりするくらいみんな可愛いですよね。奇跡の3姉妹としか言いようがないです」
「あはは...。恥ずかしながら浮いた話の一つもないんですけどね」
「優さんに言われても嫌味に感じますよ〜」
話しているうちにようやくお互い緊張が解れ、軽口を混ぜられるようになった。
さて、いくら俺でも3人まとめていただけるなんて思っていない。
どうにかして誰か1人を連れ出したいところだが...
「ええ!あの旅館に泊まっているんですか?」
「よく予約取れましたね!」
「あぁ。ちょっとツテがありまして。まぁズルしたような感じです」
「あの...」
俺がお世話になっている旅館はかなり有名らしく、涼子さんと美沙ちゃんと盛り上がっていると、ずっと黙っていた優香ちゃんが割り込んできた。
「どうしたの、優香?」
「よかったら、私達遊びに行ってもいいですか?」
「え?」
唐突にわざわざ巣に飛び込んでくる発言をした優香ちゃんを思わず凝視すると、そこにはさっきまで静かに黙っていた大人しく儚い美少女は既にいなく、年に似合わぬ妖艶な表情をした小悪魔が微笑んでいた。
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