佐藤君の職場での日常



※NTR注意



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ある日の撮影終わり。


「お疲れ様でーす」


「あっ、優!この後空いてないか?

新人連れて飯でも行こうと思ってるんだけどよ」


この日は俺とカイさん、それと最近入ってきた新人の岬 小百合(みさき さゆり)、酒井 龍(さかい りゅう)の4人での撮影だった。



新人って言っても2人とも俺と同い年なんだけどな。歴が物を言う世界だから、敬語とタメ語の関係だ。



「いいですよ。2人は?」


「おっけい。ちょっと待っててな。

おーい、優もこれるみたいだから4人で行くぞ〜」


俺がさっさと帰ろうと少し離れていたせいでカイさんが待たせていた2人と距離が空いていたため、カイさんが呼びかけると2人が小走りでこちらにきた。


「優さん、俺、優さんに憧れてこの事務所に入ったんでめっちゃ嬉しいです!よろしくお願いします!」


「よろしくお願いします〜!」


嬉しい事を言ってくれたのが龍。

他校に通う1年生で、流行りのわんこ系男子だ。


そして小百合も同じく他校に通う1年生で、ギャルだ。

ギャルと言っても、綺麗目なギャルって言葉が近いかな。

今日が初対面で撮影中に少ししか話していないが、見た目に似合わず礼儀正しいいい子だ。語尾を伸ばす変な話し方が特徴だ。



「よろしく。カイさんの奢りだから、遠慮せず楽しもうか」


「はい!」 「はい〜!」


「いやそりゃそうだけど言い方!全く仕方ねえな。行くぞ」



◇◇◇



そして4人で近くの個室の定食屋に入った。


「うわぁ〜。凄い高そうなお店の外観してましたけど意外に普通のお値段なんですね〜凄い凄い〜」


「カイさん、優さん!おすすめありますか?」



思い思いに言葉を発する2人。

このお店は特にお高くもない普通の定食屋でありながら味も良く、そして外観が無駄に高級店でちょっと贅沢気分を味わえるお店だ。



「俺のおすすめはこれだな。ちなみに優もこれだよな?」


「はい、そうですね。 このお店、俺もカイさんに教えてもらったんだけど凄くいいお店だからデートする時とかおすすめだよ。

...まぁ、カイさんがいろんな女の子と一緒にいる場面を目撃する可能性があるけどね」


「優、お前、新人になに吹き込んでるんだよ」


「いやいや、みんな知ってますって。なあ?2人とも」


「あはは〜...」


「ま、まぁ有名な話ですよね...」


困ったように笑う新人2人。


こんな俺とカイさんだけど、俺達は凄く仲がいい。もう2年程の付き合いになるし、女遊びで敬遠され気味だったカイさんだったが俺からしたら親近感しか感じなかったので構わず話しかけてたら凄く可愛がってもらうようになった。

流石チャラ男の勘と言うべきか俺と彩花の関係にも気づいているが、特に茶化すこともなく見守ってくれているいい先輩だ。

まぁ昔彩花に迫って、彩花に股間を蹴り上げられたことを実は俺は知っているが俺もそれは知らないふりをしてあげている。先輩の名誉は俺が守る。




「たくよ...。で、2人はどうなんだ?恋人とかいるのか?」


「俺はいないですね!優さんって絶対死ぬほどモテるのに、全然熱愛とか出ないじゃないですか!仕事に真剣って感じで、そんな優さんに憧れてるんで俺も彼女とか作らないようにしてるんです!」


「....へぇ...?」


「あ、あはは...」


カイさんが流し目で俺を見る。

苦笑いで返す俺。


黙ってくれてありがとうカイさん。

俺の名誉は守られた。


「凄い尊敬されてるみたいでむず痒いな。小百合ちゃんは?」


「...私は〜...いません」



こりゃ、いるな。


チラッとカイさんを見たら小さく頷き返してきた。

まぁわざわざ隠すくらいだから色々とあるんだろう。深掘りはせずに談笑し、お開きの時間になった。


「ごちそうさまでした!めちゃくちゃ楽しかったです!」


「ごちそうさまでした〜」


「ごちそうさまでした、カイさん」


「おう、またな」


タクシーで帰るカイさんを見送り、3人になった。


その後、龍は電車で帰ると言うことでみんなで駅へ。もう遅い時間だったので小百合ちゃんを送って行こうか悩んでいたが、俺の家とそこまで距離が離れていなかったので俺が送って行くことになり安心して電車に向かっていった。



「んじゃ、帰りますか」


「ありがとうございます〜」




「ところで優さんって、本当に彼女さんいたことないんですか〜?」


「ん〜?まぁ仕事仲間に隠すことでもないしね。実はあるよ。でもモデル初めてからちょっと色々あってね、それで別れて、そこからは本当にいないかな。やっぱりこういう仕事してると、恋人と上手く行きにくいよね」


「...あの、優さん。実は相談したいことがあって〜...」


「ん。どしたん?いいよ、聞くよ」


「ありがとうございます〜。...あの、それでですね、優さんと一緒に私の家の方に向かうのは不都合があって、どこかいいところはないでしょうか〜」


「不都合..?ん、いいよ。そしたら俺の家で平気?」


「はい〜」



そうして俺の家へ向かう。



「はい、上がって」


「お邪魔します〜。あの、優さん、親御さんとかは〜?」


「あぁ、俺一人暮らしだから、心配しないでいいよ」


「一人暮らし!?わ、わ、私、上がっちゃって大丈夫なんでしょうか〜?」


「あはは、なにそれ。ほら、上がった上がった」


「お、お邪魔します〜...」



急にソワソワし始めた小百合ちゃん。


なんでだろう?


なんちゃって。


実家だと思ったら一人暮らしの男の家に上がり込んでしまった推定彼氏持ちJK


そりゃ焦るわな。



「そんな取って食いやしないよ。

ほい、お茶。それで、相談って?」



「はっ、すいません〜。緊張しちゃって〜...

あのですね、こんな状況で言うことじゃないと思うんですが、実は私...一応彼氏がいまして〜」


「だろうね」


「え!?」


「や、そういうの何となくわかっちゃうんだよね」


「へぇえ..。凄い〜。

そ、それでですね、相談はそのことなんですが〜...」




小百合ちゃんの相談を簡潔にまとめると以下の通りだ。



氷川陽(ひかわ よう)と言う幼馴染がいて、昔からずっと好きだったこと。

陽君はどちらかと言うと目立つ方ではなく、友達も少ないこと。

小百合ちゃんは反対に目立つし、友達も多い。そして昔から告白されることが多いこと。勿論陽君が好きな小百合ちゃんはそれを全部断っていたが、陽君はそんな小百合ちゃんに勝手に気後れしてしまっていたこと。

高校も一緒のとこに行こうとしていたのに、自分に黙って勝手に進路を変えて遊嵐学園に行ってしまったこと。


高校が離れてしまったら益々距離が離れてしまうと焦り、慌てて告白して何とか付き合えたみたいだが、もう付き合って3ヶ月経つのにキスどころかデートすらしてくれないこと。



「ぐすっ...。私〜、そんな魅力ないんでしょうか〜」


「いやいや。そんなことないよ。小百合ちゃんめちゃくちゃ可愛いし。なんでデートすらしないか聞いてみたことあるの?」


「ありがとうございます〜。

私、元々素人の頃からSNSのフォロワーが結構いたんです。それで、「僕みたいなやつと一緒にいるところを見られたらまずいから...」なんて言うんですよ〜。そんな事陽くんが決めんな〜!ですよ〜」



「す、筋金入りだね...」


「そうなんです〜。その癖に私が男女で遊んだ写真をSNSに載せたりすると不機嫌になるんです〜」


「好かれてはいるんだね。でも家でデートくらいはしないの?キスくらいならいつでもできそうだけど...」


「陽くんってほんっっとうにへたれなんですよ〜。手を繋ぐのが限界みたいです〜。はぁ」


「そ、そっかぁ〜...でもなんで、彼氏いないなんて言ったの?」


「あ〜...モデルをやる事になって〜。それで、さっきの龍君と同期なんで以前に1回顔を合わせてるんですよ。その時に一緒に写真撮ったんですけどそれで変に誤解されちゃって〜。「僕なんかより龍って人と付き合った方が幸せじゃない?」なんて言われちゃったのが昨日なんです〜...私もいい加減むかついてきちゃって〜」



「あっちゃ〜....考え得る限り最悪の展開」


「そうなんですよ〜。でも思ったんです〜。

普通自分の彼女と他の男を付き合っちゃえば、なんて冗談でも言わないじゃないですか〜?だから、陽君がへたれなんじゃなくて、私に魅力がないのかなぁって〜。陽君は私みたいなギャルよりもっと清楚な女の子が好きで、私は幼馴染だから仕方なく付き合ってるのかなって〜」



健気だなぁ。


「いや、それはないよ。小百合ちゃんは魅力的だよ」


「でも、でも〜。キスすらされない女なんですよ私〜。そんなに魅力ないのかな〜...んん!?」


「ごめん、そんなことないって思って、思わずキスしちゃった」


「な、な、な、ま、待ってください優さん、わ、私ファーストキスですよ〜。んんっ」


「はぁっ。室内で2人きりでいたら手を出さずにはいられないくらい小百合ちゃんは魅力的だよ」


「んっ、また...。でもでも優さん、私は陽君と付き合ってるんです〜。こんなのだめですよ〜」


「俺が思うに小百合ちゃんは自信がなさすぎるんだよ。こんなに可愛いのに。だから小百合ちゃんはこんなに男を夢中にさせられるんだよって、俺が教えてあげる」



ここまで自己肯定感が低くなってしまっていると下手な慰めは意味がない。勿論しっかり時間をかけて相談に乗り、言葉で肯定しつつ寄り添ってあげればこんなことする必要もないが、そんな手間をかける義理も筋合いもないので一番手っ取り早い方法で済ますことにした。



「いやいやっ、だめ、だめですよ〜。

私には陽君が...」



構わず押し倒す。

だけど俺は今回は自重しようと思う。

最後までする必要はない。

付き合う気もないのにカップルの絆を壊す気はない。なに、最後までしなければ絶対にバレないしこれは心の治療だからな。安心してくれ。


ゆっくり、言葉で身体で、全てで小百合ちゃんを肯定していく。


「可愛いよ」


「だめっ」


「綺麗だね」


「だめ...」


「可愛い」


「だ...」


「綺麗」


「あっ....」



◇◇◇



「優さ〜ん、もう一回してください〜♡」


「もう痛くないの?しかし、小百合ちゃんは本当に可愛いな」


「はい〜、ちょっと違和感はありますけど〜。ありがとうございます〜。私魅力的ですか〜?」


「当然。何回でもできちゃうかも」


「嬉しいです〜♡」



2時間後、そこには自分に魅力がないんじゃないかって悩んでる女の子はいなくなっていた。



ふぅ、いい仕事したな。




...つい盛り上がっちゃったわ


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