佐藤君の地元での日常
「ただいま、父さん、母さん」
「おかえり、優」
「おかえりなさい、優ちゃん」
ある日の金曜日、俺は実家に帰ってきていた。
今までも美愛が平日に家に来た日などは美愛の家まで送るついでに顔を出していたが、今日は久々に泊まる予定だ。このために土日に仕事を入れないように調整した。
久々の一家団欒は誰にも邪魔させん。
「優ちゃん、夕飯もう少しでできるから先にお風呂入ってきなさい。湯船溜めといたからね」
「ありがとう、母さん!」
はぁ〜。最高だ。実家最高。両親最高。
一人暮らしの今も、夕飯や湯船は自分だったり泊まりに来た女の子が用意してくれたりしているが、大好きな両親が用意してくれたものはやっぱり格別だ。
「やっぱ母さんの料理が一番美味しいよ」
「ふふ、ありがとね」
「相変わらずいい子で安心したよ」
「当たり前だよ。2人の子供なんだからさ」
あー、幸せだ。
「そうだ、父さん。電話でも伝えたけど、改めて、再就職おめでとう!!凄いじゃん、あの東堂グループに入れるなんて」
「ありがとう、優。俺も正直信じられないよ。まさかあんな急に声がかかるなんて...。まぁ子会社の一つだけど、な」
「それでも凄いよ。まぁ、父さんはリストラされたわけでもないんだし。俺はあまり父さんの前職の事情は知らないけれど仕事が出来ることを調査されてて、父さんが仕事めちゃくちゃできるって判明したから声をかけられたんじゃないかな」
「はは。優、語彙力がめちゃくちゃだぞ。
まぁ、元々自信がある技術を求められたことは確かだな」
そうだ、俺の父さんは優秀なんだ。
ただ年齢がネックだった。
それを知ってたからこそ、俺はある人に頼んで父さんの再就職に関して裏から少しだけ手を回していた。
まぁそれを言う気はない。
父さんに確かな技術があるからこそ上手くいったのであって、あくまで父さんの力だからな。
「あはは。俺も適当なこと言ってる自覚あった。でもでもそっか...本当によかった。改めておめでとう」
「ありがとう、優...。本当に俺はお前に迷惑ばっかかけて.....」
「やめてよ!今の仕事全然苦痛じゃないし、俺は楽しくやってるよ!」
「だが、俺がヘマしなければお前は今も美愛ちゃんと...」
「あなた!」
「...すまん」
「あはは...勘違いしてるよ、2人とも。
俺と美愛が別れたのは環境なんかじゃなくて、幼馴染の距離感がしっくりきたからだよ」
「...すまん、優。しんみりしちゃったな。
今夜は久々にみんなで映画でも観ようか!」
「私ビール飲んじゃお〜。あなたも飲むわよね?優ちゃんはどうする?飲んじゃう?」
「あ、俺観たい映画があるんだよ!最近サブスク落ちしたからそれ観よう!母さん、流石にまだ早いかな。お茶で!」
美愛と別れた原因は100%俺が悪く、それについて両親に嘘をついてることで暗くなってしまい要らない気を使わせてしまった。
切り替えよう。
こうして家族の時間は過ぎていく。
◇◇◇
「じゃあ、俺は帰るね、母さんも頑張って」
「気をつけてね、優ちゃん」
土曜日は朝から美愛と美愛の家族も合流して6人で楽しい時間を過ごし、次の日の日曜日の午後の会話だ。
朝から父さんは仕事で、母さんはもうパートをする必要もないのだがずっと専業だったからか思いの外楽しかったらしく、今でも続けている
そしてこれから出勤だったので俺も昼に帰ることにしたのだ。
ちなみに美愛と地元のホテルの前で待ち合わせていたりする。流石に今の関係で実家で致すわけにも行かず悶々とした美愛に強制的に約束させられた。
「お待たせ、美愛」
「あっ、優君っ!昨日ぶりだね、えへへ」
「だな。じゃあ入ろうか」
「うんっ」
美愛とホテルで楽しい時間を過ごし、腕を組まれながら出て行くと1組の男女とすれ違った。
「あれ、美愛、あの女の子って...」
「うん...咲夜ちゃんだね。結構地元じゃ有名なんだけど、優君はあんまりこっちにいないから知らないか」
大学生くらいの男とホテルに入って行った女の子は、俺と美愛の幼馴染であり、小学生の時は学校の中心人物だった女の子、近藤咲夜(こんどう さくや)だった。
「有名?」
「うん、あんま大きな声じゃ言えないけどね、色んな人とえっちしてる、ヤリマンって言われてる...」
「それはまた、意外だな...」
近藤咲夜。
幼馴染とは言え、美愛のような家族ぐるみの付き合いではない。幼稚園、小学校、中学校が一緒だった数いる友達の1人だ。だが穏やかじゃないな...俺の知っている咲夜は...
「そっか....。雄平とは別れちゃったのか?」
「うん。咲夜ちゃんの浮気が原因だって。
それから、咲夜ちゃんが色んな男の人とああしてホテルに入って行くのを見たり、咲夜ちゃんと、その、えっちしたって言いふらす男の子も増えて...。それになんか、男の人に貢がせたりとかもしてるらしいよ」
佐藤雄平(さとう ゆうへい)
これまた幼馴染であり、俺と名前が似ているってことで仲良くなりよく遊んでいた。
俺と美愛、雄平と咲夜の4人でデートだってしたこともある。
美愛と別れた時に、ヨリを戻せとしつこく俺に言ってきたのに対して詳しい理由も言わずに突っぱねてから疎遠になっていたが、まさかそんなことになっていたとは...
「美愛は同じ高校なんだよな?」
「うん...。でも、優君と別れても私が優君とずっと会ってるのをそれでいいのか、って。ちゃんとヨリを戻すべきだって、ずっと言われてて、ほっといてよって怒ってからそれっきり話してないんだぁ。今のも人伝に聞いた話」
「そっか...」
なんとなく読めた。
全く気づいていなかったが、雄平は多分美愛のことが好きだったんだろう。
それに怒った咲夜が浮気して、別れてから歯止めが効かなくなったとかそんな感じだろうな。
いやぁ、自分の冴え渡る頭脳が怖い。
◇◇◇
私はずっと、幼馴染の優君が好きだった。
ずっといいな、とは思っていて、その気持ちが恋で、付き合いたいってことなんだと気づいた時にはもう遅く、優君は私よりずっと可愛い美愛ちゃんと付き合ってしまっていた。
そこからずるずる、優君を諦められないまま中学生になった頃、雄平に告白された。
「お前が優のことを好きなのは分かっているけど、辛そうなお前を見てられない。だって俺はずっとお前のことが好きだったから...!」
私だって乙女だ。いくら叶わない恋を拗らせてたとは言え、そんなことを真剣に言われて、きゅんきゅんしないわけがない。
そして私は雄平と付き合った。
そこからはまぁ、上手くいってた。
雄平が私のことを沢山愛してくれたから、
優君と美愛ちゃんと4人でデートしても普通に楽しめるくらいには私は吹っ切れていた。
美愛ちゃんが優君とえっちした話を聞いてからは、私達も意識し出して遂に初体験を迎えたりもして、順調だった。
歯車が狂ったのは中学3年生の夏。
私達を待っていたのは、2人が別れたと言う事実。
最低な話だけど、それを知った私は
もしかしたら私にもチャンスがあるかも。
なんて思ってしまった。
勿論それを表には出さなかったけど、
雄平は薄々気付いていたんだと思う。
しつこく2人に復縁するよう働きかけ、それを突っぱねられて、仲が拗れてしまっていた。
そして、私達の仲にも見えない亀裂ができた。
それでも卒業までは何とか騙し騙し雄平と付き合っていられた。
自分の気持ちに嘘をつきながら。
そして高校に上がる前の春休み、たまたま用事で遠くまで出掛けていた私は見てしまった。
優君の新しい家らしきマンションから、優君と、美愛ちゃんと、可愛い女の人が出てくるところを。
私だって雄平と何度もセックスしている。
だから分かるのだ。
優君を挟んで歪みあってる2人の女の子と優君、全員が事後の雰囲気を漂わせていた。
衝撃だった。
なんとなく美愛ちゃんと優君は別れてもそういうことをしていそうだなとは思っていたけど、さらにもう1人。
あれはどんな関係なんだろうか。
美愛ちゃんは別れている。あの女の人も彼女ではないだろう。だってそうじゃなきゃ美愛ちゃんがいるわけがない。
あの関係を調べることが、私が優君と親しくなれる鍵かもしれない。そう思ってしまった。
そしてネットで色々と調べて辿り着いた答えが、セックスフレンド。
割り切った関係。身体だけの関係。友達。
セフレにしたい人の一例
可愛い/イケメンな女/男
セックスが上手い女/男
色々あって取捨選択が難しかったけど、そんな感じだった。
美愛ちゃんともう1人の子は文句なしに可愛い。優君はめちゃくちゃイケメンだ。
これであの3人は条件を満たしている。
ただ、私は?私だって人並みには可愛いはずだ。上の下くらいはあるはずだ。
でも、足りない。あの2人には勝てない。
だったらセックスが上手くなるしかない。
雄平と回数をこなそう。頑張ろう。
そして私は間違った方向に進んでしまった。
雄平との愛のあるセックスがいつの間にか優君のセフレになるための練習になってしまい、そして雄平だけじゃ成果が分からないなんて馬鹿なことを考えて適当にナンパされた顔がいいだけの男について行ってセックスしてしまい、そのついて行く場面を雄平の友達に見られていたみたいで、私は雄平に振られた。
でも私は何のショックもなかった。
これで心置きなく優君のセフレになれる、なんて。
そこからは色々な男とセックスした。
勿論誰彼構わずではない、ちゃんとイケメンを選んでいる。そして経験人数が5人を越えたところで、今まで女慣れしてる人にナンパされてセックスしていたが、今の私が童貞とセックスしたらどうなるんだろうとふと気になって、他クラスのイケメンなのに童貞って揶揄われている男子を誘って、筆下ろししてあげた。
結果から言って私の相手ではなかった。
全然気持ち良くなかったし、終始私の掌の上。
なのにそれが快感だった。言い知れないゾクゾク感を感じた。その頃からだろうか、私は優君のセフレになるなんて目標を建前に、好き勝手に男を転がし始めていた。
身体を使って、貢がせて、私に夢中にさせて、冷たく捨てる。なんて楽しいんだろう。
ただ、たまに学校で目が合う雄平が悲しそうな顔をして私を見ていることには少しだけ痛みを感じていた。
高校に入って三ヶ月したある日、
私に夢中な大学生の金づるとホテルに入ったら、優君と美愛ちゃんにすれ違った。
そして私は当初の予定を思い出した。
いや、ちょっと違う。今の私は百戦錬磨だ。
既に成人している人とだって経験している。
優君もそこそこ経験しているだろうが、所詮は高校1年生だし、相手は優君しか知らない美愛ちゃんと、これは女の勘だけどもう1人の女もあまり遊んでそうには見えなかった。
今の私ならセフレどころか、もしかしたら優君を夢中にさせられるかもしれない。
私のテクで優君を骨抜きにして私のものにできる。あの、優君を、私が。
そんな自信があった。
ただ、セックスさえすれば勝てる自信はあれどセックスまで持って行くにはどうしたらいいか。私は念入りにイメトレを重ねた。
とりあえず特別な感情は出さないようにしよう。溜まってるから相手して、とか。ちょっと優君にそんなこと言うのは恥ずかしいけど仕方ない。先行投資だ。お金は私が出そう。それで下手に出て、仕方ないから相手してやるか、って油断させて、それで私に夢中にさせる、できる、大丈夫だ。
そして翌週、早くもチャンスが訪れた。
◇◇◇
「優君、優君だよね?わ、久しぶりー!」
翌週の木曜、遊びにきた美愛を家まで送って、さて帰ろうかと駅に向かった折、咲夜に声をかけられた。
前すれ違った時は一瞬しか見えなかったが、
なんか...変わったな。肉付きから表情、服装まで、男ウケを徹底したような女の子になっていた。
「お、咲夜じゃんか。久しぶり、でもないけどな。そういや聞いたよ。雄平とは別れちゃったんだってな」
「あっはは!やっぱバレてたかー!
うん、別れちゃったぁ!いやぁ振られちゃってさあ」
「一瞬だったけど、な。なんだかんだ幼稚園から一緒だったし。まぁ雄平とのことを知らなかったから人違いだと思ったけど美愛に聞いてさ」
「なるほどね〜。そ、まぁ楽しくやってるよ。軽蔑されちゃったかな?」
「んにゃ、そんなことないさ。それを言い出したらあそこに美愛といた俺も軽蔑されるべきだろ?」
「あはっ、たしかにね〜!まじウケた!なんとなく気付いてたけどさ〜。優君も男の子だねっ!」
「はは。まぁ、隠してるけど、な。
咲夜は昔馴染みだし、あんなとこ見られたら言い訳のしようもないよ。降参」
「大丈夫大丈夫!言いふらさないよ!美愛ちゃんは絶対優君以外に指一本触らせない凄みみたいなんがあるけどぉ、優君は結構色々やっちゃってんじゃない?」
「ご想像にお任せするよ」
「絶対やってるやつー!ウケる!
ね、ね、優君。よかったら私としない?」
「おいおい、唐突だな。明日学校だろ?」
「大丈夫大丈夫!私何時に寝ても起きれるタイプだし、優君のタクシー代もホテル代も出すから!お願い!溜まってんだ、私」
「...なんか咲夜にそう言われんのも凄い違和感あるな。わかったわかった、一回だけな?」
「やったぁ!れっつごぉ!」
軽いキャラになったなぁ、こいつ。
実は今日美愛は生理で、俺はセックスは2人で楽しみたい派なので何もしなかったから地味にムラムラしていた。
よってあっさり誘いに乗った。
...それにほら、なんか同窓会で久々に会った同級生と...みたいなシチュ、いいじゃん?
え?昔からの友達の雄平に悪いと思わないのか?
...付き合ってたら絶対に突っぱねるくらいの良心はあるが、別れたなら他人だし、別になんとも。
ホテルに入って、2人でシャワーを浴びて、ベッドイン。
...何か咲夜がやたらと主導権を握ろうとしてきてちょっと面白かった。
佐藤優になってからはほとんど処女しか相手しておらず、全員俺が1から仕込んでいたので、他人に仕込まれた女に奉仕されるのが新鮮で俺も楽しかったからしばらく好きにやらせていたが、咲夜がドヤ顔で「ふふ、可愛い」 「どうしたい?」「まだイッちゃだめだからね?」なんて上から言ってきて癪にさわったので責めに転じてわからせてやった。
「はぁっはぁっ...。こ、こんなの..こんなの私、知らない...」
息も絶え絶えに、未だに大股開きのまま震えて動けていない咲夜が何か言っているが、当たり前の話だ。
なんだっけ?ヤリマンだっけか?
はっ。笑わせてくれるなよ。
たかが3ヶ月で経験できる人数なんか知れているんだ。
頑張りは認めてやる。
だが俺とお前では場数が違う。
研鑽に励んだ年季が違う。
それにな、貢がせてるだっけ?
その程度のテクで骨抜きになるような男は素人だよ。そんな素人ばかりを今のように相手にしてたら仮に経験が100人を越えてもいつまでも上にはいけない。
セックスは奥が深い。前世含めかなりの経験をこなしている俺ですら未だ頂きにはまるで手が届いていない。
まぁ、それでもお前のようなひよっこに負ける気はまるでしないがな。
だが安心しろ、咲夜。
そうだな、今のお前は恋人以外とのセックスを覚え、雑魚狩りをして謎の全能感に満ちている段階だ。そしてその全能感は更に上のレベルにこうしてあっさり打ち砕かれるのが常だ。
懐かしいな。俺も経験したことがあるよ、その挫折を...
しかしそれは必然の挫折であり、俺や先達のような更に上の存在は皆んな何度もそれを乗り越えて進んでいる。
向上心を持ち、1回1回のセックスに全力で向き合うんだ。この現状に満足するな、常に以前の自分を超えていけ。
お前は、勿論俺も、まだ道半ばだ。
俺はまだまだ上に行く。
お前も這い上がってこい。
頑張れよ。
───────────────────
間話終わりです。
次回は原作×3
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