このクズの一生を語ろう
俺の名前は紫香楽 嵐 (しがらき あらし)
享年22歳。
元世代人気NO1タレントでありながら
国内トップの大学に在籍し、卒業後は国内有数の大企業に役員候補として内定をもらっていた。
自分で言ってしまうが文武両道の才色兼備、ある一点を除いて、俗に言う完璧な人間だったと思う。
俺の両親はとんでもない毒親って奴で、
幼少期から整っていた俺の容姿が金になると思われたのか芸能関係の仕事を親に強要させられ、芸能界で上手くいかなった時の保険として仕事の合間に猛勉強を課せられていた。
正直洗脳されていたに等しい俺はそんな生活が当たり前で、親の言われるがまま、一切遊ぶことなく日々を忙しく過ごしていた。
そんな俺に転機が訪れたのは高校1年生の夏だった。
その当時、5歳の子役デビューから11年、つまり芸歴11年を誇っていた俺は売れに売れていた。
ただでさえ極上だった容姿は
幼少期からテレビに出演して磨き抜かれた。
感受性豊かな時から11年間みっちり汚い大人と接してきた経験で心も汚れきり、未成年とは思えない立ち回りスキルも身につけてしまったのだから当然と言えば当然。
俺の稼いだお金で両親は日々豪遊しており、
俺はといえば中高一貫の芸能学校に通っていてほとんど登校できていなかった。
まぁそんな状況でも仕事の合間に自主勉強だけは死ぬほどやらされていて、既に一流大学にも合格できるだけの頭脳はあったんだが。
代償は睡眠時間。1日3時間が平均だった。
で、転機がなんだったかって言うと、
両親がハワイのスカイダイビングで死んだ。
◇◇◇
ずっと両親の言いなりだった俺は友達も恋人も一人もいなかった。いたことすらなかった。仕事関係以外、プライベートで誰かと遊んだことすら、なかった。
ひたすらに収録、撮影、演技の練習、ボイトレ、勉強をしており、携帯やパソコンにくる連絡は全て両親に管理されていた。
スキャンダル対策だそうだ。
まぁそんな操り人形だった俺の糸がその瞬間からぷっつりと切れたんだ。
そこからは怒涛。
金目当てに親戚とやらが押し寄せたり、
厄介な手続きが沢山あったが、
所属する会社の社長に後見人になってもらうことで全て力技で解決してもらった。
社長は俺の境遇を全て知っている人なので、
新しい操り先だな...なんて呑気に考えていたが、世の中捨てたもんじゃないらしい。
勿論俺が稼ぎ頭だったことも関係あると思うが、かなり親身になってくれ、両親の言いなりな人生でロボットと化していた俺を人間に戻してもらった。
勉強しなくていい。
医者を目指しているのなら別だがそうではないだろう?もう充分、どこでも進学、卒業できるレベルだから。
連絡は仕事以外は自分で勝手にしてくれ。
仕事を減らそう。自分の時間を取った方がいい。
仕事と勉強以外何をすればいいか分からない?
友人になれそうな人を紹介する。
なんでも言ってくれ。
挙げればキリがないがそんな社長の尽力の末、高校3年生に上がる頃には俺は人間に戻っていた。
そして2度目の転機が訪れた。
機械から人間に戻った俺は共演した女性タレントに誘われ、セックスを知った。
誘われた際はただの好奇心だった。
今まで撮影で彼女役とデートやキス、ハグはした事はあった。
それはやれと言われてやる事で、何も感じなかった。
だから所詮セックスもその延長で、
正直何も感じないのだろうなと思っていた。
だが、世界が変わったんだ。
あの日、俺は生きてきて初めて満たされた気がした。
今思えば、両親から抱きしめられたことなど記憶になく、人の温もりを知らなかった俺がそれに溺れてしまったのは必然だったのかもしれない。
セックスを知ってからの俺はとにかく女を抱きまくった。
抱くためならなんだってやった。
勿論犯罪や無理矢理になどではない。
数多の恋愛映画への出演やバラエティで鍛えた話術や稼ぎまくって有り余ったお金、そしてなにより魅力溢れるこの容姿で、だ。
芸能人同士なら後腐れなどないし、
時にはアテンドしてもらったりもして。
仕事と勉強を減らした時間を兎に角セックスに使った。
仕事して、たまに登校して、
現状維持程度に勉強して、セックスをする。
そんな人間になった。
◇◇◇
無事に高校を卒業した俺は、そのまま国内トップの大学に進学した。
その頃には全ての優先順位がセックスになっていた。
そして仕事でのクレームも増えた。
幸いにも所属している会社はかなり大手だったので大抵のスキャンダルは揉み消せたが、噂とは際限なく。
ネット上で共演者喰いと噂されるようになり、俺のことを本気で好きになってしまったセフレに粘着されたり。その相手の所属事務所から抗議が入ったり。
俺を人間に戻してくれた、第二の親に等しい大恩人である社長に女遊びは控えろと再三に渡る注意を受けていたにも関わらず俺は止まる事ができなかった。
そして大学2年のある日、遂に、と言うか。
国民的アイドルを妊娠させてしまった。
絶対に避妊はしていた。俺は嵌められた。
俺の両親は俺を管理し、俺の稼いだお金で豪遊していたが、それだけでなくW不倫をしまくっていた。
お互いそれを隠す事なく、最早夫婦と言うより、セックスをするほど親密なビジネスパートナーと言う言葉が正しい人達だった。
そんな両親を見てきたから、俺は男と女が付き合うと言うことを汚いと思ってしまっていた。
子供なんて作ったら、俺のように道具にする。
そんな偏見があった。
だからこその彼女いない歴=年齢
そんな俺が妊娠報告、それも明らかに嵌められて、喜べるはずもなかった。
むしろ嫌悪してしまい、自分が産まれてしまったトラウマが蘇り暴言を吐いてしまった。
....まぁなんと言うか、見事編集して録音されており、
俺の芸能人生は終わった。
会社との契約解除。
恩人の社長に軽蔑され、
20歳になっていた事で後見人の関係も終わり。
世間からの大バッシング。
大学2年の夏、俺はただの大学生に戻った。
勿論かなり白い目で見られたりもした。
元々社長に紹介されて友人を演じてくれていた人達くらいしか男友達はいなかった。
後は芸能関係の、一緒に女漁りをするタレント仲間くらいか。
前者は社長との関係が切れた事で、
後者は飛び火を恐れていなくなった。
でもそこまで気落ちしなかった。
だって男とはセックスできないから。
そしてどんなにクズであることが発覚しても、大半のセフレ達は俺から離れなかった。
そもそも避妊に関しては俺は誰とする時もかなり気をつけていたし、万が一のためにアフターピルを常に持ち歩いていた程だ。今回の妊娠騒ぎの経緯だって、十中八九俺が嵌められていることは俺と関係がある女達には分かっていたようだ。
そこからは仕事がなくなったことで時間が有り余り、元々お金は稼ぎきっていたのでバイトもすることなく、絵に描いたような暇な大学生が出来上がった。今更サークルに入ることもなく、娯楽なんてセックスとそれに繋がる行為しか知らない俺は浮きに浮いたが、元々スキャンダル対策で大学内でセフレも友達も作っていなかったし、人気タレントと言うことで元々浮いていたので特に問題はなかった。
そして他人のスキャンダルネタが1年間も保つことはなく、大学3年になる頃には俺は平穏な生活を取り戻した。
たまーに新入生に陰口を言われているくらいはあるが、幼い頃から芸能界でそこら辺のメンタルは鍛えきってあり何も感じなかった。
そして大学4年、国内有数の大企業への内定が決まった。
あんなスキャンダルを起こしたのに、とは思うだろうが、そもそも俺は女癖が飛び抜けて悪いだけで文武両道、才色兼備の完璧人間だ。
そして数多のコネもあり、正直簡単だった。
このまま卒業して、就職して、起業でもして、
一生いい女を抱いて一人で死のうと、そんな人生設計を抱いていた。
そんな大学4年の冬、クリスマスの日。
ただのその他大勢のセフレの1人、特に俺と付き合いたいとも言わなかった女、しっかり割り切った関係の、そんな女と過ごし、いつものようにセックスをして、眠りにつこうとして、
俺は殺された。
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