終幕。 ※この物語に愛は──
ラブコメの世界にとんでもないチャラ男を転生させてしまった
「─あれ?」
──気づいたら、暗闇にいた。
「なんだ、ここ?」
見渡す限りの暗闇の中で俺は1人佇んでいた。
「ここは生と死の狭間の空間です」
「──っ?誰だっ!?」
突然話しかけられ、思わず振り返ると
そこにはとんでもない美女がいた。
てか、え?美女過ぎんだろ?女神?
なんか光ってるんだけどナニコレ?
「そう、私は女神です。これは後光です」
「は?」
なんだこいつ、
自分で自分のこと女神とか──
「私はあなたの問いに答えただけですよ?」
「っ!?心を、読んでるのか?」
「はい」
「まじで女神だってのかよ..
いや、いうんですか?」
「ええ。そしてあなたを転生させた者です」
──転生。
今まで考えるだけ無駄だと気にしていなかったこと。
何故俺は前世の記憶を持って、[あおはるっ!]の世界に生まれたのか──
それは、目の前のこいつの仕業だったのか。
それにしても、何故?
「そうですね、一から説明させていただきます」
「...えぇ、是非お聞かせ願いたいですね...」
なんか心を読まれるってやり辛いな...
「すいません、発している声と同じように聞こえてしまうので...。それでは、説明します。
──まず自己紹介から。
私の名前は愛の女神、アフロディテ
そして美と性も兼任させていただいております」
──アフロディテ
知っている。有名な女神だ。
しかしそんな存在が何故俺に?
言っちゃなんだが愛からかけ離れてる男だぞ?
いや親しみ深いワードが下にあったけど。
「それです。そこなんですよ。
嵐..いえ、今のあなたは優でしたね。
あなたは世界中の誰よりも性に溢れていました。
そしてそれに相応しい美も持ち合わせて。
そんな存在なのに、その心には一欠片も愛がなかった」
うるせいやい。両親に言え。
「あなたの両親には既に罰を与えております。
私は愛の女神として、愛なき者を死後罰しているのです」
へぇ〜。んで俺への罰がこれ?
「いえ、あなたに罰は下してません。
あなたは非常にイレギュラーな存在です」
イレギュラー?
「はい。通常であれば愛の欠片もないあなたは有無を言わさず罰されます。
ですがあなたは──惜しかったんです」
は?惜しい?
「はい。私は愛の女神であると共に、美と性の女神でもあります。そして見込みある者を眷属として側に置いています。
見込みある者とは愛と美と性。
その全てを高く持ち合わせている者。
そしてあなたは私の眷属の誰よりも高い美と性を持っていました」
あ〜、はいはい...。
特化型みたいなグラフね。
「その想像で合っています。
そしてあなたが愛なき者になってしまったのは両親のせいです。そこで私は考えました。
あなたを私の知る限り最も愛のある世界に転生させ、その心に愛を与えようと」
それでラブコメの世界にね〜。
しかし、だったらどうせなら主人公の朝日君にすればよかったのに何でモブなんかに。
いやまぁ、結果的に今の方がいいんだけど。
「いえ、あなたは主人公ですよ?」
「は?」
いやいや、
[あおはるっ!]の世界に佐藤優なんて存在は──
「いえ、あなたは
[ずっと好きだった幼馴染に裏切られた僕は、誰も知らない土地で生まれ変わってハーレムを作る]
と言う作品の主人公です」
...はい?
え、ずっと好きだった──なんて?
聞いたことないんだけど。てかえ?だっさ。
なにそのタイトル。絶対売れないだろ。
「ええ、売れないどころか総PV数100にも満たない、ネットの海に沈んでいる作品です」
でしょーね。
しかし何でそんな作品に転生したのに
彩花とかいるんだ?
「はぁ...あなたは何にも知らないんですね。
まずあなたの勘違いを正します。
あなたが転生したのは作品の中ではなく、世界。
漫画家、愛叶勇気が創作した世界への転生です」
はぁ?
「愛叶勇気は私の子が人間に擬態した存在です。世に沢山の愛を広めるために」
ええ?まさかの展開すぎない?
「驚くのも無理はありません。そして愛叶勇気の作風には一つ特徴があります。それが、
私立遊嵐学園。全ての作品の舞台となる高校です」
へぇ〜?...!?
「て、ことは...?」
「はい、そうです。あなたは[あおはるっ!]の世界ではなく、愛叶勇気の全ての作品の世界に転生しました」
「で、でも俺が転生したのはあのくそださい名前の作品なんだろ?」
「あれも愛叶勇気の作品です」
「いやいや、確かに俺は愛叶勇気作品を[あおはるっ!]しか知らないけど売れっ子だってことは知ってる。それが総PV数100未満なんて...」
「あれは愛叶勇気が匿名で息抜きに適当に書いた小説なのです。頭空っぽにして書いたみたいなので酷い出来栄えだそうですよ?」
えー...
じゃあ何でよりによってそれにしたのよ?
「既に商業となってしまった作品には設定の変更ができません。しかし、この作品ならいくらでも付け足すことができました。
そこでこう付け足したのです。
愛情深い、優しい両親と」
な、なるほど...。
「それは...感謝します。素晴らしい両親でした。でも、好きに書き足せるなら後からでもどうにでもできたんじゃ?」
「いえ、今あなたが生きているのは創作ではなく紛れもなく現実です。なので今から書き足したとしても、また違う世界...並行世界にしか影響を及ばせません」
「なるほど...」
「はい、そしてあなたは両親の愛を知り、原作とは違いますが幼馴染と初めての恋仲になりました。後はそのままあなたの寿命を待てば、素晴らしき眷属に成長するはずでした」
うっ...ちょっと気まずい。
てか原作とは違う...?
「はい、原作では山梨美愛は天道カイと恋仲になります」
まじで!?
「まじです。そしてあなたの本当の相手はあの3姉妹でした」
!?!?!?!?
い、いやでもそう言われてみると...
あの3人を見た時のあの謎のドキドキは...
「原作の影響です。そこまで強いものではなく、せいぜい好ましく感じやすいくらいの弱い強制力ですが、あなたと同じく、あの3姉妹にもそれらが働いていました。」
通りで...。ガードが緩いわけだ。
ってか原作の影響?じゃあ彩花は...?
「それです!なんなんですかあなたは!?息をするように原作を破壊して!?強制力と言ったって始まる前にあそこまで破壊されたらもう何もできませんよ!!!そもそも何であなたが遊嵐学園に入学してるんですか!?あーもう!!!めちゃくちゃだよ!!!!!」
ちょっ...落ち着いて....
「はぁっはぁっ...。失礼しました。
境彩花に限らず、あなたの仲良くしている女性達はほとんど全員、違う原作のヒロインでした。あなたが関わらなければそれぞれのヒーローがいて、愛を育んでいたのに!それなのに!あなたのせいで全員歪になっちゃって!なんですかセフレって!?ラブコメですよ!?一部を除いて健全なラブコメですよ!?セックスて!そういうのは普通最終回のその先なんですよ!?早い!早すぎます!そんな子達じゃないのにー!!!もう!!!!」
「な、なんかすいません」
「はぁ、もう今更です。私には生者をどうこうできませんからね。もう今更です。今更」
やべえめっちゃ怒ってらっしゃる。
てか今俺に干渉できてるのはなぜ?
「怒ってますよ!愛で溢れる世界をめちゃくちゃにされて!」
「す、すいません...」
「それと、今こうして干渉できてるのはあなたが死にかけたからです。本来なら不可能ですよ。できるのならもっと早く忠告してます」
「は?死にかけた?」
「はい、覚えていませんか?」
最後...確か帰ってきたらセフレに囲まれて...
みんなで襲いかかってきて──
「いや腹上死かよ!!!」
あっぶねぇ。そりゃあれは無理だわ。
「まぁあなたの顔が虚になった辺りで山梨美愛と境彩花が止めて事なきを得てましたけどね」
た、助かった...。今度優しくしてやろう。
「はぁ〜、話を戻しますね。私は、藁にも縋る思いであの3姉妹に託しました。あなたへの修正力に賭けて。でも彼女達で無理ならもう無理です。お手上げです」
「はぁ...?」
「だから私は諦めました。今回あなたを呼び出したのはお願いをするためです」
「お願い?」
「はい。お願いしますから、頼みますから、これ以上原作を破壊しないでください!」
「と言われても原作知らないですし」
「私は生者に干渉できませんが、自ら転生させたあなたになら、そしてこの空間であれば少しだけできます。その力であなたに力を授けました。原作持ちのヒロインを見ただけで分かるようにします。
今の子達は仕方ないですが、新しいヒロインには今後は近づかないでください。
...もう限界ですね、これ以上はこの空間を維持できません。次に目を覚ましたらあなたは現実に戻ります。くれぐれもよろしくお願いしますよ」
その言葉を最後に、俺の体が透ける。
意識も薄れてきて──
「時間ですね。それでは。願わくばあなたが愛を知ることを祈っています」
原作ヒロインを見ただけで分かるか〜
言われてみれば俺のセフレ異常に可愛いもんなぁ。
ん?待てよ?ってことはマスクしてたり、顔がよく見えなくても見ただけで可愛い子が分かるってことか!?
やべ、チートじゃん!転生チートゲット!
「ちょっ!?待ちなさい!?
分かってます!?近づかないでくださいね!?ねえ!?絶対ですよ!?!?!?」
「あぁ、行ってしまった...」
「...本当に大丈夫でしょうか?」
「分かりません、
愛叶勇気...いえ、我が子エロース」
「やはり、彼に愛を芽生えさせるなんて無理な話だったのでは?」
「ええ...。とは言っても、まだ分かりませんよ?」
「なぜそう思うんですか?」
「ふふっ...。彼に愛がなくても、彼を愛する子達は沢山いる。彼女達に任せます」
「前回みたいに殺されて終わりだと思いますけどね」
「そうかもしれません。ですが、あなたの創った愛の塊である女性達は殺すくらいで満足できますか?」
「...なるほど。確かに彼女達なら、あるいは」
「ええ。いつまでも手玉に取れるとは思わない方がいいですよ、佐藤優。女性は強いんです。いつか愛を知らないあなたが、わからせられる時がくるかもしれませんよ」
「確かに。私の創ったラブコメの世界にとんでもない男を転生させてしまったと思いましたが、もしそうなったら面白いですね。その時はこう言って思いっきり笑ってやりましょう」
「ふふっ。それはいいですね」
「「ざまぁ!」」
────────────────────
冷静に考えて佐藤君って
「ざまぁ」
される系主人公ですよね。
なんか、雰囲気が。
はい、唐突な最終回でした。
そして突然のファンタジー。
取ってつけたようなチート能力!
...佐藤君が原作を破壊していく物語としては、書きたいもの書き終わってしまった感があるんですよね。
なのでエタ対策に一旦締めます。
とは言っても1章1話に名前だけ出てた
サナちゃんも未だに出してませんし、
各ヒロインズとの日常も書きたい気持ちもあるので、今後も不定期更新ですが、していくつもりではあります。まぁ蛇足編ですね。
なので本編としてはここで完結って感じです。
初投稿作品でしたが想像以上の方に読んでいただいて本当に嬉しかったです!
ありがとうございました!
よろしければ別作品、
幼馴染彼女を寝取られたけどぶっちゃけ俺も浮気してるから怒るに怒れない件
の方もよろしくお願いいたします!
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