あれ、俺なにかやっちゃいました?



少しだけ、この学園の説明をする。



S組が成績上位者30名が纏まっていると言ったが、他のクラスは別に成績順ではないんだ。


どういう割り振りなのか詳しくはわからない。スポーツ推薦なんてものもあるがそれで入学した生徒達は別に纏められているわけではなく、みんなバラバラらしい。

なぜかS組だけが規則性があるんだ。

あぁ、勿論S組だからと言って偉い、特権があるなんてこともない。



そしてクラスの呼び方だが、

Sときたら次はAだと、

大半の人間は思うだろうがこの学園は違うんだ。


S組、1組、2組、C組、4組、5組、F組

そして問題児が集められると言う11組だ。



...正直言って、何かの冗談だと思った。

いくらなんでも纏まりがなさすぎるよな。

アルファベットか数字かで統一しろよ。

大体なんだよ問題児が集まるって。

本当に意味がわからん。


だが周囲の誰もそのことに疑問を持たずにいることから、おかしいのは前世由来の価値観を持った俺なんだと思う。

...多分。あんまり認めたくはないがな。


まぁこの限りなく前世に近い世界が、その実全く違う世界だと言うことは嵐がネット上に存在していないことでわかっていることだから、そう言うものかと割り切った。






そして今は自己紹介の時間だ。



俺の自己紹介は騒がれることを覚悟していたし、かなり警戒していたが予想に反して危惧していたようなことは全く起こらなかった。



なぜならば、俺より先に自己紹介した女が

かなりの有名人だったからだ。

そしているはずがない人物だった。



「なんで紅さんがこの学校に.....」

「やっぱあの、紅さんだよな.....」

「え?てっきりトップ高校に進学してると思ってた...」

「やば、めっちゃ可愛い」

「きれーい」

「同い年とは思えない」



周囲も未だにざわざわしている。



「紅 紗雪 (くれない さゆき)です。

この度遊嵐学園に入学させていただきました。趣味は勉強。特技は数学です。何卒よろしくお願いいたします」




姿勢良く、堂々と自己紹介するその女。

腰まで伸びた艶やかな黒髪ロングに、整った端正な顔、スラリと伸びる長い脚を筆頭に全体的に細身な体型にも関わらず、ドンっと存在を主張するでかい胸。



中学生にしてトップの大学模試で高得点を叩き出したことで日本で一番頭が良い天才美人中学生とテレビで一躍話題になっていた女傑。




そんな超天才が自己紹介を終えた。

席に座る際、一瞬俺を睨みつつ。




いやー...本当になんでいんの?

てか、え?何で俺睨まれたの?気のせい?

いや絶対睨まれたよな?本当になんで?

色々?なんだが。



...一応言っておくが、ここ遊嵐学園は特殊な高校だ。

普通、高校と言えばある程度の偏差値でそれぞれ棲み分けしているのが普通だが、

問題児クラスなんてものがあることからも分かる様にここにはどうしようもない落第生から凡人、一般人、秀才、天才まで、多種多様な生徒が集まる。


多様性を尊重しているとのことだが、あまりに纏まりがなさすぎて新入生ながら大丈夫なのかと不安になってしまう。



それはそれとして、そう言った面から個人に限定すれば粒揃いではあるのだが、全体のレベルで言えば国内トップの高校では断じてない。

うちよりもっと進学に有利な高校は他にいくらでもあるはずなんだ。


なのになぜこんなとこに?

一体なにをしにきたんだ?

ついでになんで俺を睨んだんだ?

え、俺を睨むためにきたのか?

...それはないな。



「先程も挨拶させていただきましたが、改めて。佐藤優です。仕事で休ませてもらうこともあるかもしれませんが、仲良くしてくれると嬉しいです」



「あぁ超イケメン...」


「すき」


「同じクラスになれるなんて...勉強頑張ってよかった」



そして騒めきが収まらない教室で、

これは好機とみんなが落ち着いてしまう前にさっさと自己紹介を済ませた。

多少は熱視線が送られたような気もしたが、既に壇上で挨拶をしていることと、俺は特にテレビ出演などはしていなかった関係で俺よりも紅の方が有名人だったこともあり多少で済んだ。とても助かった。

中学生は途中からモデルになったので特に影響はなかったが、高校は一からだからな。

ここで下手に注目されすぎて周囲から浮くなんてことになったら悲しすぎる。

俺は高校でも友達を作るんだ。



そしてその後は動揺収まらぬまま、担任からの連絡事項を聞かされ、早めに終了となった。


俺は軽く周辺の生徒と言葉を交わし、何人かと連絡先も交換したが廊下にちらほらと俺目当てらしき生徒が集まり始めたのを確認したのでそそくさと帰ることにした。


その帰り道、俺は紅がいた衝撃が大きすぎて誰も理解していなかった事実に気づいてしまう。

そして、紅が俺を睨んでいた理由にも。


そう遠くないうちに他のクラスメイトもその事実に気づいてしまうだろう.....。





ん?



ちょっと待てよ?



紅がこの学園に入学してきたんだよな?



勿論入試を受けてきたってことだよな?



あれ?



俺、紅がいるのに

入試成績トップ取っちゃったって...こと...!?

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