時として楽観が必要なこともある



「...それで、実は僕は幼馴染なんだ。

小さい頃の話だけど、結婚の約束もしていた。

....まぁ、子供の時の話だし、流石にそれは覚えていないかもしれないけどね。

同じ高校に通っていることは知っていたんだけど、やっぱり学年も違うし、それに今は人気モデルだ。もしかしたら僕のことをわからないかもしれない。そう思うと中々会いに行けなくてさ...それで、佐藤君は同じ事務所に所属しているんだろう?学校で話してるところも見たことがあるんだ。もしよかったら橋渡しをしてくれないかな...?」


「あ、あぁ...。結婚の約束云々は知らないが、幼馴染がいたことは聞いてるよ。君がそうなんだね。いいよ、今から行く?」


「そうなんだ!よかった、忘れられていなかったんだ....ありがとう、佐藤君。今からはちょっと急すぎるから、明日の昼休みに会えるようにしてくれないかな?」


「あぁ、聞いてみるよ」


「ありがとう!...ところで佐藤君は、あやちゃん...あぁ、僕はあやちゃんって呼んでたんだ。あやちゃんとは仲良いのかな?」


めちゃくちゃ不安そうに聞いてくる春日井君。だけど安心してくれ、ただのセフレだ。


「まぁ仕事でも学校でも先輩だしな。人並みには仲良いよ。でも多分春日井君が思ってるような関係じゃないから安心してくれ」


「そ、そ、そ、それはどういう!?...って、誤魔化しきれないよね...あはは。ありがとう、ちょっと安心したよ。佐藤君が相手じゃ自信ないから...それじゃあ、また明日お願いね」


「あぁ。頑張れよ」


そして連絡先を交換して別れた。






正直内心の動揺を止められなかったが、なんとか乗り切った....




しかし、春日井 朝日か...

そして、境彩花...萩原メイ...

ってことは..新見真(にいみ まこと)もいるんだろうか....

それになによりも、遊嵐学園....



なぜ俺が会ったこともない春日井朝日を知っていたか。



それは俺が前世で主演を務めた映画の主人公が、春日井朝日その人だったからだ。



◇◇◇



「彩花の幼馴染を名乗る春日井君なる者が

あやちゃんに会いたいって言ってたから明日の昼休み空けといて」


「は!?なにそれ!?」



午後の授業をぼーっと過ごし、その帰り。

彩花にとりあえず連絡しながら、俺は帰路についていた。





しっかし、境彩花....

何で今まで気づかなかったんだ俺は。

モデルをやっていて、遊嵐学園に通っている。親友は萩原メイ。

小学生の頃に仲の良い幼馴染と引っ越しで別れる。

そして遊嵐学園で再会...



そうか...俺は

[あおはるっ!]の世界に転生していたのか...

しかもメインヒロインの彩花を既にセフレにしてしまっている...不味くないか...?





「まぁ、別にいっか」





よく考えたらいくら物語の世界に、原作に名前も登場しないモブとして転生したからと言って俺が自重しなければいけない理由はないな。

恨むならモブを無駄にイケメンにしてしまった世界を恨むべきだ。

彩花と春日井君がくっつかなければ世界が滅亡するって言うなら話は別だが、そんなカオスな展開はないだろう。


そもそも俺は彩花と付き合ってないし、

特に彩花に対する独占欲も持ち合わせていないので、彩花が春日井君と愛を育むことになっても特に不利益はない。

ちょっとだけ惜しい気持ちもあるが、他人の恋愛は邪魔したくない主義だ。




しかし、そう考えると心が楽になった。

そしてスッキリした気持ちで家に着くと、

そこからあまり時間を置かずに来客がきた。



扉を開けると、走ってきたのか、息が切れている彩花がいた。とりあえず中に招き入れる。



「彩花?いきなりどうした?連絡なしでくるのは珍しいな」


「はぁ、はぁ。..

優君が返事くれなかったんじゃん!」


「ん?あぁ、悪い悪い、気づかなかった」


「ねえ、優君!春日井君に何か変なこと言われた!?」


「いや、別に」


「お願い!言って!」


「んんん?あー...なんだったっけな...

あやちゃんって呼んでるのと、結婚を誓った仲みたいなことを言われ...」


「違うの!!!」



食い気味に俺の言葉に重ねてくる彩花。


「えっと...なにが?」


「ぜんぶ!誤解しないでね!あやちゃんなんて子供の時の呼び名だし、もう呼ばせる気もないから!それに結婚なんて誓い合ってない!お嫁さんになってって言われたことは確かにあるけど、私は返事なんかしてないもん!」


「いや...別に子供の時の話だしそんなムキにならなくても...それに仲良かった幼馴染なんだろ?春日井君がモデルをやるきっかけになったなんて言ってたんだし、そんなこき下ろさなくてもよくないか?」


「やだやだ!やだもんっ!私が仲良い男の子は優君だけなのっ!」


あ、はい。


「どーどー、落ち着いて、落ち着いて」


「...優君、抱いて」


「また随分と急だな!?」


「いいから!はやく抱いてよ!」




...紗雪といい、最近の美愛といい、今回の彩花といい、俺のセフレは肉食系が多いな...

てか3人しかいないから全員だわ...

みんなこんな子じゃなかったのに...どうして....

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