ユグドーの求道譚

　転輪聖王リュンヌが、創造した精霊世界リテリュスには、たくさんの物語がある。そんな物語や伝承の収集に生涯を捧げた男がいた。ヴォラント・ナヴェル。
　彼は、子供の頃に、名前も知らない老人にある詩歌を託された。詩歌の表題はこうだ。
「ユグドー、幼少の頃を語る」。ヴォラント少年は、その詩歌に、どこか人間離れした絶望を感じとったのだ。
　ヴォラントは、大人になって世間に問う。ユグドーとは。世間は答えた。ユグドーとは、放浪者である。ただ、何を求めて放浪の旅をしていたのかについては、意見がわかれていた。あるものは、愛を。あるものは、家族を。あるものは、安住の地を。その全てだと答えるものもいた。
　ただ、放浪の末に掴んだものについては、みんなが笑顔でこのように答えたし、答えるだろう。ユグドーは、長い旅路の…続きを読む