第45話<ハッピーの行方>4
「誰や~!!」
怒りのままに自転車を飛び降りた健太は、段ボールハウスに駆け寄って行く。
「団長!ちょっと待って下さい~」
ハカセとチビも慌てて追いかけるが、すでに健太は段ボールハウスの前で仁王立ちしている。
「泥棒出て来~い!!」
いつも以上に大きな声で健太が叫ぶと「うるさいの~、何の用じゃ坊主」と中から出て来たのは、仙人のように白髪だらけのおじさんだった。
「ハッピーを返せ!」
何の説明も無く怒声を浴びせる健太に、おじさんが呆然と立ち尽くしていると「そこに置いているケージと中の鳥は僕達のなので、返してもらえませんか?」と駆け付けたハカセが懇願する。
「コレは駄目だ!捨ててあるのを拾ったんだから、もう俺のもんだ!」
「捨てていませんよ!置いていたんです!」
強い口調でハカセは反論するが「駄目なもんは駄目だ!さっさと帰れ!」とおじさんは伏し目がちに、視線すら合わせようとしない。
「散々な人生だったがコイツを拾ってからツイてるんだ、きっとコイツは神様が送ってくれた幸せの青い鳥だ」
おじさんは無気力な表情で、すがるようにカゴの中に居る鳥を見つめている。
「どうします団長?警察に頼みますか?」
交渉を諦めたハカセが、小声で健太に相談すると「俺達は応援団やから、おじさんの事も応援したろう!」と健太の団長魂は留まる事を知らない。
「本当に良いんですか‥‥」
不思議そうにハカセは聞き直すが「おじさんが自分で頑張る為には俺達が応援したらなアカン!」と健太の意思は固く、チビも笑顔で頷く。
「仕方ないですね‥‥」
健太が言い始めると聞かないのを解っているからか、ハカセは自転車に乗せていた太鼓を取り出す。
「ハッピーの旅立ちと~!飼い主になるおじさんの栄光と発展を願いまして~!」
一列に並んだ三人が突然始める応援に、面食らうおじさんは立ち尽くしている。
「ハッピーとカゴはおじさんにあげるわ!ハッピーも飼い主見つかってハッピーやしな!」
応援を終えた健太は満足気だが「あ・・ありがとな・・」と取り繕うようにお礼を言うおじさんの表情は、明らかに困惑していた。
翌日の朝、まだ誰も居ない基地にはハッピーとケージが戻されていた。
対岸の段ボールハウスが無くなった今、その真意を三人が知る事は出来なかった。
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