第9話<三人目の影響力>1

「声の大きい人ですよね‥‥」


交渉相手を考え直すハカセに「部活入ってない奴でな」と、すかさず条件を付ける健太。


「先生からリサーチした情報は失敗でしたからね」

「やっぱり俺達が自分で探すしかないな」


いつのまにかいつもの元気を取り戻し答える健太。


「帰宅部だと学校内で探しても見つかる確率は低いですね」


考え込むハカセに健太は「帰宅部やったら公園しかないやろ!」と自信有り気に断定する。


「公園内の何人中、何人が入ってくれるかですね」

「五人中、一人は入ってくれるやろ!」


「それは無理だと思いますけど、やはり確率を上げるには何人スカウト出来るかですね」

「何人って当然全員に決まってるやろ!」


逸る気持ちを抑えきれなさそうに、自転車に飛び乗る健太。


「そんなに慌てなくても‥‥」


自転車に乗りながら小声で呟き、後を追いかけるハカセ。

基地近くの公園に着いた二人は、すぐに公園の中に入らず入り口付近で立ち止まっていた。


「あ・・ありえへん!!」

「コレも時代の流れでしょうか」


二人が見つめていた先に居る小学生は、公園の遊具で遊ぶ気配は全く無く、ベンチに座り携帯ゲームで盛り上がっていた。


「どうしますかスカウト?」


半ば諦め気味にハカセが聞くと「さすがに無理やろ!」と健太は珍しく匙を投げた。

「それでは待ちますか」とハカセはベンチに座るが、待ちきれなさそうな健太は立ったまま辺りを見渡している。

数分毎に健太は「まだかな~」と立ったままの状態で貧乏ゆすりをしているが、ハカセは気にもしてない様子で座っている。


「お~!来た来た~!」


数分後やっと来た小学生達を見付け、跳びはねて喜ぶ健太。


「またゲーマーじゃないですよね?」


座ったまま振り返るハカセ。

二人の視線が小学生達を追うが、小学生達はそのまま通り過ぎ二人の視界から消えて行った。


「なんでやねん!?」


怒りに任せ蹴ったゴミ箱が倒れかけ、慌てて押さえようとする健太。


「きっと、また来ますよ」


揺れるゴミ箱を冷静に眺めるハカセ。

二人が更に待つ事数分。


「あれから全然人来んな‥‥」


諦め口調でハカセが座っている椅子に、倒れ込む健太。


「もう来ると思いますよ」


さりげなく健太が座るスペースを空けるハカセ。

更に数分後、待ち疲れた健太はハカセにもたれ掛かっている。

いつのまにかゲーマー達すら居なくなり、公園には二人しか居ない。


「誰も来んどころか誰も居らんやん‥‥」


健太の愚痴にハカセは「そうですね‥‥」と一言だけ反し遠くを見つめた。

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