第10話<三人目の影響力>2

最後の会話から数十分が経った頃。


「来た~!!」


ベンチから立ち上がり叫ぶ健太に、ハカセは「あまり期待しない方が良いですよ」と冷静を装いながらも同時に立ち上がっている。


二人が見つめる、同級生位の女の子三人が公園に入った途端「またかよ‥‥」と健太がため息をつく。

一瞬ハカセは首を傾げたが、女の子達の足元に視線を下げると、理由は一目瞭然だった。


「ちょっと待って~!」


ローラーブレードを履いた女の子達は、笑い合いながら公園内を廻っている。


「楽しそうやな‥‥」

「そうですね‥‥」


会話も止まった二人が、スカウトを諦めるのに時間はかからなかった。

まるで日光浴に勤しむ老人のように、ただ眺めているだけの二人。

数十分待つが来たのは、ローラーブレードを履いた女の子達だけだった。


痺れの切れた健太は「あ~!もう我慢出来ん!他の公園に行ってみよ」と立ち上がり、自転車に駆け乗る。

次の公園に向かい、二人が自転車で駆け抜けていると「ま~たハズレかよ~!!」と駄菓子屋の奥から叫ぶ声が響く。


「見付けた~!!」


その叫び声に対抗するかのように、雄叫びを挙げて自転車を停める健太。


二人が店内に入ると駄菓子屋のおばあちゃんが「おや、まぁ元気の良い事‥‥」と尖んがり頭の小学生を見つめて、お茶を啜っている。

所狭しと駄菓子が並ぶ店内に、客は尖んがり少年一人だった。


「たしか同学年の洋介君ですね‥‥」


健太に小声で教えるハカセ。


「お~!!同級生やん、神様ありがとう~!」


テンションの上がりきった健太は、振り返る洋介の鋭い視線に気付いていない。


「何や!何か俺に用か!?」


洋介は喧嘩腰だが、嬉しそうに頷く健太。


「団長、ちょっと‥‥」


洋介の態度と風貌に、難色を示すハカセが止めようとするが「大丈夫俺に任せとけ!」と健太は何やら勘違いしている。


ため息をつくハカセを見つめ「おや、まぁ‥‥」と、まるで相槌のように呟くおばあちゃん。


「俺の仲間になれよ!」


どこかで見た漫画の様な健太の誘い文句に、唖然とするハカセ。

尖んがり少年は返事もせずに、二人の顔をまじまじと睨みつけている。

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