第11話<三人目の影響力>3

「実はですね、応援団に入ってくれる仲間を探していまして‥‥」


ハカセが長々と説明しようとする途中で「長いわ!!」と洋介は大きな声を駄菓子屋内に響かせる。


「そうっ!その大声を俺達は探してた!」


すかさず相槌を入れる健太。


「要はスカウトって事か!俺を誘うとは目の付け所が良いやんけ!」


洋介の自信過剰な口ぶりは、尖んがった髪型を更に尖らしてみせるようだ。


「そう、お目が高いやろ俺は!」


自分自身を褒め合う二人の会話に付いていけず、ハカセが固まっていると

「応援団って、気合い入ってるんやろな!?」と何故か睨みを効かせる洋介。


質問に答えられずハカセが口ごもっていると「もちろん!バッチリやで!」と健太が笑顔を反した。


「忙しいからな、どうしようかの‥‥」


大袈裟に顎を突き出して偉そぶる洋介。


「忙しいのは部活ですか?」


ハカセが聞くと「そんなんちゃうわ!見せたろけ!」と洋介は駄菓子屋から出て、路地に止めていた自転車を指差した。


自転車を見ても、忙しい意味が解らない様子の二人が黙っていると「このチャリ半端無いやろ改造!解るけ?」と洋介は自慢げにハンドルを握るが、二人は話しを合わせたかのように頷くだけだった。


「このハンドルの絞り込みが難しいんや、兄貴に手伝ってもらった位やけ!」


洋介は嬉しそうに自慢話を繰り広げるが、反応の悪い二人に気付き表情を曇らせる。


「やっぱり絞ってないとアカンよな~」


白々しく健太は褒めるが、洋介は疑いの眼差しを向けている。


「もしかして、お前達のチャリこれけ?」


呆れ顔で二人の自転車を指差す洋介。


「おっ‥‥俺達はこれから改造していくつもりなんやで‥‥」


健太の明らかな嘘に合わせ、慌てて頷くハカセ。


「それよりもコレ見てくれ!」


思い出したかのように、健太は自転車の前カゴから団旗を取り出し拡げた。


「ほぅ、気合い入っとるやんけ」


褒める洋介に気を良くした健太は、周りも気にせず団旗を振り始めている。


「団長‥‥、通行人来ましたよ」


さりげなく通行人に一礼するハカセの横では「どうも!応援団長です!!」と健太が妙な宣伝活動を始めて、洋介を驚かしている。


「基地も有るんやで!行ってみる?」


すっかり上機嫌な健太に「おっ‥‥、オウ‥‥」と流石に洋介もたじろいでいる。

三人がそれぞれ自転車に乗ろうとした時「アレっ!この間の今時団長やん!」と試合の日にからかってきたブラスバンド部員二人組が健太を指差した。

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