第12話<三人目の影響力>4

健太達と視線が合ったにも関わらず、二人組は悪びれる事も無く自転車から降りて駄菓子屋に入って行く。

小さな拳を握る健太と、二人組から視線を逸らさず睨み続ける洋介。


「基地見に行きましょうか‥‥」


ハカセが話題を戻そうとするが洋介は「ちょっと待て!すぐ行くけ」と店内に入った二人組の自転車からサドルを二つ取り外した。


「ソレどうするんですか‥‥」


動揺を隠せないハカセの問いに洋介は「そんなもん決まっとるやろ」とドブにサドルを放り捨てた。


「ほんじゃ案内してもらおうけ」と何事も無かったかのように自転車に乗る洋介を見て、健太は笑い続けている。

気分良く自転車を走らせる健太の後を、気の合わなさそうな二人が自転車で追い三人は基地に着いた。


「ほぅ中々良いやんけ‥‥」


偉そうに脚組をしてソファーに座る洋介。


「そうやろ!気合いで運んだからな」


洋介に影響を受けたのか、普段言わない言葉を使い始める健太。


「でも、あんな奴達になめられてるようじゃぁアカンな」


まるで団長きどりの洋介に、健太は笑顔で頷き部下化している。


「さっきみたいにすぐバチーンとやり返さんと、なめられるけ」


そう言って洋介は自分の右拳を左手で受け止め、攻撃的な性格をアピールしている。


「びっくりしたわ、一人やとあんなナメられた事無いけ」


洋介は話しの合間に耳障りな拳を受け止める音を鳴らし続けている。


「ところで応援団には入られるのですか‥‥」


長引きそうな洋介の自慢話を止めようと、核心に迫るハカセ。


「めんどくさいから辞めや!それに男はやっぱり一匹狼やけ」


立ち上がり帰ろうとする洋介を、健太は止めようとするが「そうですか‥‥では仕方ないですね」とハカセが間に入り話しを終わらせる。


「まっ・・マジで~」


残念そうに引き止める健太に洋介は「まぁ暇な時に気が向いたら来たるけ」と一言だけ残し、自慢の自転車に乗って走り去って行った。


基地に取り残された二人は、いつものようにソファーに座り深いため息をついた。


「くそ~!完璧やと思ったのに~」


残念がる健太とは違い「仕方ないですよ、一匹狼が良いらしいですからね」と安心した様子で笑うハカセ。


「けど暇な時に来てくれるって事は三人目やろ」


健太が団旗に名前を書こうと手に持ったペンを「それは三人目とは言えないですよ、事実断られていますし‥‥」と素早く取り上げるハカセ。


「そうかな~」

「そうですよ!!」


二人が些細な言い争いをしていた頃駄菓子屋では、買い物を終えたブラバン二人組が「絶対あいつらや‥‥」とサドルの無い自転車を睨みつけていた。

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