第13話<バット1本で解る事>1
「今日こそ、おるやろ!もしかしたら洋介が頼みに来るかもな」
朝からテンションの高い健太にハカセは「それなら昨日断らないと思いますよ」と冷たくあしらう。
一日経っても変わらず誰も興味を示さない掲示板を、二人は今日も見つめていた。
「やっぱりアカンな~、もう一度俺から洋介誘いに行こうかな‥‥」
壁を見つめ上の空な健太にハカセは「彼を誘うのは止した方が良いと思いますよ」と断言する。
「なんで?理想通りやん、声は大きいし、気合い入ってるし、喧嘩強そうやし」
洋介の理想点を指折り数える健太。
「リスクが高すぎますよ」
いつになく真顔で答えるハカセに「リスクって何?声?」とふざけるでもなく聞く健太。
「もう良いですよ‥‥誘いに行くのなら一人で行ってください」
素気ない表情で教室に戻ろうとするハカセに「てかリスクっ何なんや?」と健太はもう一度聞き直すが、ハカセは振り返りもせず歩いて行く。
次の休み時間、仕方なく一人で洋介を誘いに行く健太。
「おっ!おったおった」
他クラスの教室に入ると、満面の笑顔で洋介に近づいていく健太。
「なんや、また誘いに来たんけ?」
健太に気付いた洋介は面倒臭さそうに呟くが「ええやん!応援団絶対おもしろいって!」と健太は入団するまで毎日来そうな勢いで断言する。
洋介と話す為に違う教室まで入って来た健太に、教室中の他生徒から興味の視線が刺さるが「変わった奴やな~!応援なんかおもろいけ?」
「絶対おもしろいって!!」と二人は気にするそぶりも無く会話を続けている。
その頃ハカセは、データ取りの為に一人で掲示板の様子を見に向かっていた。
掲示板の見える位置に立ったハカセは、全く期待していない様子でノートを取り出す。
数分後ノートの今日欄にゼロを記入しようとした時、一人掲示板の前に立ち止まった。
驚いた表情のままハカセは近づいて顔を確認しようとするが、走り去られてしまう。
「やっぱりアカンかったわ~!こっちも同じか~?」
洋介に再び断られ遅れて来た健太が、ハカセの肩を叩く。
「いえ‥‥一人居ましたね‥‥」
改めてノートの今日欄に1を記入するハカセ。
「誰?誰やった?」
興奮した健太は跳びはねながら聞くが「顔がよく見えなかったので‥‥」とハカセは口ごもる。
「え~!マジで~!」
うなだれる健太にハカセは「けど、また来るかもしれないですよ」と反すが「一生に一度のチャンスやったかもしれん」と納得しない健太。
「それは大袈裟ですよ」
ハカセは笑うが、健太は落ち込んだまま下を向いている。
この後休み時間には結局誰も立ち止まらず、二人はいつものように基地で作戦会議を開いていた。
「今日は応援される側の気持ちを知る為にコレを持って来たんや」
自転車に括っていたバットを取り外し、見せつける健太。
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