第43話<ハッピーの行方>2

「頼~もう!ハッピーはドコに居ますか?」


静かな建物内に、健太の挑発的な大声が響く。

悪ふざけにしか思えない健太の質問に、受付の職員は時間が止まったように固まっている。


「そんな聞き方では解らないですよ!」


慌ててハカセが間に入ると、受付の女性職員は取り繕うように笑顔を返す。


「すみません!保護されている動物は何処にいますか?」


改めて聞き直すハカセに女性職員は「ゴメンね、大人しか手続き出来ないから、また親御さんと来てね」と事務的な返答で取り合おうとはしない。


「ハッピーって鳥の事やで!」


職員の説明を聞いていなかったのか、健太は一方的に会話を続ける。


「そもそも犬と猫だけで、鳥は扱っていないのよ」


ガラス越しの職員は少し困った表情を見せたが、大人な対応で切り抜ける。


「そうですか、お世話になりました」


礼儀正しくハカセが一礼すると、二人も真似るように一礼して三人は施設を飛び出した。


基地に戻って来た三人は再び作戦会議に突入していく。


「結局どうすれば良いんや~!?」


数時間前と変わらず、健太は頭を抱えているが「あれがいわゆる門前払いですね」とハカセは陽気に、さっき迄の状況を冗談化している。


「解った~!野良猫や~!」

「猫ならカゴまで無くならないですよ、とは言え誰かに恨まれるような事も有りませんけどね‥‥」


ハカセの言葉に思い当たる節が有るのか、健太は静かに考え込む。


「解った~!また奴達や~!」


健太の突拍子も無い大声に、チビは驚き跳びはねかけているが「奴達って誰の事ですか?」とハカセは動じる事無く冷静に尋ねる。


「あのブラバンの奴達や!」

「まさか!さすがにそれは無いでしょう!」


余りにも突飛な発想にハカセは驚き否定するが「イヤ!奴達なら有りえる!」と健太の意思は固く、完全に決めつけている。


「もし、そうだとしても相手を見つけられないですよ」

「イヤ、大丈夫や!俺には作戦が有る!」


説明も無く急かす健太に促され、三人は自転車に乗って駄菓子屋に移動した。


「作戦って、もしかして待ち伏せですか?」


念のため三人は電柱裏に隠れているが、効果の無さは通行人の視線が物語っている。


「奴達が来たら後を付けてやな、ササッとハッピーを取り戻すんや!」


大袈裟な手振りで説明する健太は、すでに隠れる事を忘れている。


「そんな都合良くここに来たとしても、気付かれずに成功する確率低いですよ」

「まあ、そうかも‥‥」

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