第46話<友情と約束>1

「アレっ‥‥、ハッピーが帰って来てる~!」


放課後いつものように基地に集合した三人で、最初に気付いたのは健太だった。


「おじさんに俺達の応援が伝わったんやな!」


嬉しそうに健太とチビは頷くが「そうとは限りませんよ、迷惑だったのかも知れませんからね」とハカセは苦笑いを返す。


「そんな訳無いやん、自分の力で頑張る気になったんやろ!」


疑う事を知らない健太にハカセは「判りませんよペンは武器なりって、要は言葉は暴力って事ですからね」と眼鏡を上げてどや顔を見せつける。


「応援は正義の武器って事か‥‥」


驚く程プラス思考な解釈をする健太に、ハカセの口は呆れて空いたままになっている。


「そうや!もう一回おじさんを応援しに行ったろか!」


健太は今にも走りだしていきそうだったが「やめといた方が良いと思いますよ、そっとしておくのも応援ですから」とハカセの一言で、健太はなんとか思い止まった。


「そうやな!俺達はハッピーの回復を応援したらなアカンしな~!」


嬉しそうに健太はハッピーに語りかける。


「そういえばハッピー飛べるようになったのですかね?」

「ちょっと試してみるか!」


早速ケージの蓋を開けようとする健太を、ハカセが慌てて押さえ込む。


「どうせなら森に帰した方が良いですよ!」

「そっかぁ~!じゃあ今からハッピーを森に返す作戦会議や!」


健太はまるで作戦大将になったように、深くソファーに座る。


「とりあえず飛べるようになったかの確認は要りますけどね」

「そうやな~、じゃあ足にヒモでも結ぶか~」


ハッピーを見つめる健太の眼はハンターのように鋭い。


「余計にケガしそうな気もしますけど、他に方法もなさそうですね‥‥」


心配そうなハカセとは裏腹に「よっしゃ!決定や~!」と健太は早速ヒモを捜しに辺りを散策し始める。


「そんなに都合良く落ちていないですよ」


思わず吹き出すハカセに「じゃあ家で探すか」と健太は自転車に乗り込む。


健太の家に移動した三人は、まるで泥棒のように所構わず家捜しを始める。


「どんな紐にするかにもよりますからね‥‥」


めぼしい紐が見付からず、ハカセは机の棚を開け覗き込んでいる。


「コレで、どうやろ!?」


健太は自信有り気に独楽の紐を持ち出してくるが「それは短すぎますよ」とハカセは即答で却下する。

どっちが団長か解らなくなるような二人のやり取りを見て、チビはひそかに笑っている。


「コレや~!コレは完璧やろ!」


満面の笑顔で再び健太が持ち出してきたのは、戦隊ヒーローが描かれたカイトだった。


「確かに良いですね!切る箇所で長さも選べますし」

「よっしゃ~決定や~!確かめに行こう!」


大きめの広場が有る公園に移動した三人は、危険な科学実験でも始めるかのように真剣な表情をしている。


「長さはコレ位で良いやろ!じゃあ行くぞ~!」


切り取った凧糸を健太がハッピーに結び、ハッピーを飛ばす。


「ちょっと待ってください!まだ心の準備が‥‥」


焦る受け取り役のハカセとチビの予想とは裏腹に、見事に飛び立つハッピーは難無く着地もこなす。


「よっしゃ~!完璧や~!」


健太は凧糸を手繰り寄せ、ハッピーに駆け寄る。


「次はどこの森に返すかですね」

「えっ‥‥?ココで良いやろ」


再び捕まえたハッピーを健太は褒めるように撫で、チビも嬉しそうに微笑む。


「もっと広い森か山じゃないと又ケガしないですかね」

「そっかぁ‥‥、ココよりも広い所やったら七桜山やな!」

「七桜山だと自転車で、ふもと迄でも半日は掛かりますよ」


三人は近いようで遠くにそびえ立つ七桜山を見つめる。


「バスとか乗る金も無いしな‥‥、早めに出発するしかないか!」

「決まりですね!」


日曜日の朝早くから基地に集合した三人は、眠そうに揃ってまぶたを擦っている。


「よっしゃ!ハッピーハッピー作戦決行や~!」


朝からテンションの高い健太と比べると、まだ眠そうな二人はあくびで返事を返す。


「やはり太鼓は必要ないと思いますけどね」


カゴに乗せた太鼓を見つめてハカセは呟くが「最後にハッピーを応援したらなアカンやろ」と健太は聴き入れる事も無く自転車で走り始める。

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