第18話<団長一日目>2

「急に止まらないでくださいよ!」

「恋の始まりかな、俺に手振ってる‥‥」


気が抜けたように健太は一点を見つめている。


「そんな訳ないでしょう」


健太の自転車を避けてハカセが前を見ると、同級生位の女の子が笑顔で立っていた。


「って事は、もしかしてチビの彼女か?」


健太が振り返ると、手を振り返しながらも大袈裟に首を振るチビ。


「どっちやねん!」


もどかしそうに足踏みをする健太に「友達って事じゃないですか」とフォローするハカセ。


「なーんや、じゃあ俺達は先に行こか!」


立ち止まっていた健太は一言「また明日な~!」とチビに告げ自転車で駆け出し。

ハカセも二人に一礼した後、健太を追って去って行った。


翌日の休み時間。


「さあ~、知らね~!トイレじゃね~!」


チビの居場所を聞いたハカセと健太に、教室中の生徒がクスクスと小声で笑う。


「なんや3組の奴達!まあええわ、俺一人で洋介誘いに行くから!」


不機嫌そうに早足で教室を出た健太を「では僕は掲示板見に行くので」と引き止めて告げるハカセ。


「なんやまだ洋介嫌がってんのか?」


健太が面倒臭さそうに頭を掻きながら聞くと「揉め事はお断りですね!」とハカセは断言して去って行った。

仕方なく又一人で洋介を誘いに行く健太は「洋介~また来たぞ!」と自信有り気に洋介の居る教室に入った。


「お前は暇なんけ?」


座席に座ったまま授業中寝ていたのか、寝起き顔で答える洋介。


「違うねんって!今回はグッドニュースやねん!」


嬉しそうに瞳を輝かせる健太とは対照的に「ほうけ、一応聞こけ」と洋介はあくびをしている。


「スゲーぞ!新しい団員が一人増えてん!」

「ほ~う、どんな奴?」


一転して前のめりになり話しを聞く洋介。


「背が俺より低いから、あだ名が昨日チビに決まったな」

「応援団でチビって?声がデカイんけ?」


からかうでもなく洋介は真剣な表情をしている。


「イヤ、喋られんのやけど‥‥」


気まずそうに小声で答える健太。

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