第17話<団長一日目>1

「ところで名前何やった?」


健太の失礼な一言に、光久は動じる事無く笑顔を返す。


「そんな事だろうと思いましたよ‥‥」


呆れた様子で団旗とペンを受け取るハカセ。


「やっぱり字は綺麗な方が良いからな!」


まるで自分が書いているような健太の口ぶりに「そうですね」と反論するでもなくハカセは名前を記入した。

「ヨッシャ~!三人揃った~!これで応援団結成決定やな!」

白々しく健太がハカセに目配せするとハカセは「どうせ断っても無駄ですからね」と団旗のすでに自分の名前が記入されている部分を指差した。


「その通~り!」


完成したばかりの団旗を、ハカセから取りあげ振りかざす健太。


「今日から俺達はギャング応援団の仲間や!」


爽やかに健太は二人の肩を抱く。


「こっちがハカセで、俺が団長の健太やヨロシクな!」


健太の自己紹介に合わせて、ハカセと光久は照れ臭そうに会釈した。


「とりあえず、あだ名を決めなアカンな~」


腕組み悩む健太。


「光久だからミッチーはどうですか?」

「そんな英語みたいなんはアカン!応援団っぽくないやろ!」


安易なハカセの命名を一蹴する健太。


「応援団的あだ名って例えばどういうのですか?」

バカにした様子でハカセが笑いながら聞くと「そうやな~、雨竜でどうや!」と健太は光久の顔も見ずに答えている。


「まるでゲームの戦士ですね」


命名と余りにも掛け離れた光久の顔を見て呆れ顔のハカセ。


「解った!背が低いからチビで決定や!」


失礼な命名を指差して決めつける健太。


「そんなに身長差ないですよ」


光久を気遣うハカセを余所に「もう決定や、チビでええやんな~!」とまるでペットに呼びかけるかのように、光久に聞く健太。

光久が笑顔で頷くので、ハカセは反論出来なくなっている。


「ヨッシャ今日は帰るぞチビ!明日から忙しいからな~!」


自分で付けたあだ名を気に入っているのか、当然のように早速使う健太。


「また団員募集ですか?」


ハカセの問いに「明日からは練習や~!」と大声をあげ健太は早々と自転車にまたがる。


「ちょっと待ってください、練習って何をする気ですか?」


ハカセとチビも慌てて自転車に乗り込む。


「もちろん応援の練習や!」


勢い良く走りだした健太は何かに気づき、少し進んだ所で立ち止まった。

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