第39話<名前負け>2

早速行動に移した三人はハカセの家で飼い猫探しのびらを作り、基地周辺から貼り紙を開始した。


「距離から考えると、この辺だと思いますけどね」

「とりあえずドンドン電柱に貼っていくか!」


健太が位置合わせしたびらを、チビが手際よく張り付けていく。


「いくら何でも連続過ぎますよ!もっと間を空けないと、すぐに無くなりますよ」


二人が三枚目を張り付けたタイミングで、ハカセは残り枚数を気にし始めている。


「じゃあ5本に1枚位で貼ろか!」


三人は基地周辺の住宅地を自転車で駆け抜けながら、あっという間に貼り紙を終わらせていく。

そのまま対岸から基地に向かう橋を渡る手前で、何かに気付いたハカセが「あれっ!何ですかね?」と突然立ち止まった。

ハカセの指差す先を、健太とチビはまじまじと覗き込む。


「もしかして俺達の基地を真似してるんかな」

「それにしては実用的過ぎる感じがしますけど」


三人が注目する視線の先には、段ボールで屋根迄作られた段ボールハウスが建っていた。


「みんな考える事同じなんやな~」


どこか感慨深げに眺めている健太に「団長とは大分違うと思いますけどね」とハカセはからかう。


全て張り終えた三人は基地に戻り、思い思いにくつろいでいた。


「感謝しろよハッピー!」


満足気に健太がハッピーを眺めていると「感謝どころか恨まれてる可能性の方が高いですけどね」とハカセは冷静にハッピーの心理を分析する。


「そんな訳ないやろ!な~ハッピー!」


タイミング良く鳴き声をあげるハッピーに、健太は笑顔を返すが「今のも、きっと悲鳴ですよ」とからかうハカセ。


「熱っち~!それにしても生き返るな~!」


スポーツドリンクをがぶ飲みする健太を横目に、チビは自分の飲み物をハッピーにも分け与えている。


「冗談はさておき、あとは留守電待ちですね」

「連絡有ると良いけどな~!」


「どうせなら学校の掲示板にも貼らせてもらえば完璧ですけどね」

「それ良いやん!明日先生に頼もうか!」


交渉事は頼んだぞと言わんばかりに健太が視線を送ると「はいはい、解りましたよ」とハカセは予想していたかのように笑顔で頷く。


「ところで今日ハッピーどうしますか?」


思い出したようにハカセが尋ねると「ここで良いやろ!屋根も有るし、なぁハッピー」と健太はたいして気にもしていない素振りで、ハッピーに語りかける。


「嫌そうな顔していますよ」


からかうハカセに同調したチビが頷くと「ハッピーは喜んでるよな~!」と健太は冗談っぽく小鳥相手に睨みを効かしている。


「そんな脅しても無駄ですよ!」


この日の基地には笑い合う三人と気分を揃えるように、ハッピーの鳴き声も響いていた。

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