第31話<宣伝の為の勝ち負け>2
ゲートボール応援当日、授業を終えた三人は試合場所の公園に集まっていた。
「ルールが解らないと応援にならないので、プリントアウトしときましたよ」
「こんなん無くても大丈夫!応援は気持ちやって!」
健太はハカセから受け取ったルール表を、パラパラと軽く流し読みして渡し返す。
「さあー、今日も頑張って応援や~!」
気合いを入れる健太とは裏腹に、選手達の雰囲気は和やかで対戦相手と談笑している。
「ワハハ、よくぞ来てくれたね~!今日は負けられないな~」
公園で出会った老人は三人を見つけると、嬉しそうに三人の肩を叩き「皆さん今日は、この子達が応援してくれますからね」とさりげなく選手達に紹介した。
「あら、この子達が応援してくださるの頼もしいわね-」
話し掛けてきたお婆さんに、チビが照れ臭そうな笑顔を返していると「今日は俺達が応援するから勝てるで!」と人怖じしない健太に、選手一同笑顔を浮かべる。
「貴方達はもう高学年?」
優しく微笑むお婆さんにチビが小さく頷く。
「みんな大きいのね~!誰が団長さん?」
「もちろん俺やで!」
健太が両手を挙げてアピールすると「やっぱり!そうだと思ったのよね」とお婆さんの見透かしたような一言で、注目していた一同が再び笑う。
「私達が若い頃は応援団も沢山居たけど、今時の子達では珍しいわね~」
照れ笑いを返すチビに「私は初恋の相手が団長さんだったのよ、身体も声も大きい人だったわ~」とお婆さんは終わらなさそうな身の上話しを始める。
「まだ試合始まらんのかな~?」
お婆さんの話しを聞き流しながら、健太は逸る気持ちを抑えられずにいる。
「さあ-!やるぞ-」
誰かの一声を聞き、健太の表情は一瞬で変わる。
「ヨシッ!俺達もやるぞ!」
三人は練習と同じように立ち並ぶと、ハカセが叩く太鼓の音が響きだす。
「アラッ、お祭りみたいで良いわね」
観客なのか試合が始まっても、お婆さんには一切の緊張感も見られない。
健太は声を出すタイミングに迷っているのか、太鼓の音だけが響いていると「最初はゲートを順番に通過していくらしいですよ」と予想していたかのようにハカセがルールの説明を始める。
「大丈夫やって、気合い入れてただけやから!じゃあ始めるで!」
そう言って健太は笑顔を返すと、いつものように声援を送りだした。
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