第21話<団長と説得力>1

「役割か~!どうしようかな~!」


相変わらずノープランな健太に「やはり応援団と言えば太鼓ですよね」とハカセはペン回しをしたペンを、バチのように見せつける。


「じゃあハカセは太鼓で決定やな!」


今のペン回しだけで即断した様子の健太にハカセは「太鼓役でも良いですけど、肝心のチビさんはどうするのです?」と不安そうに尋ねる。

困った表情で頭を掻きむしる健太は、団旗を見て「そうや‥‥、旗持ち上げる役で良いやん」と思い付きのままを呟く。


「小さいので持ち上げる必要は無いと思いますけど、旗の何かというのは良いかも知れませんね」

「そうやろ!じゃあ旗守る役!」


ディフェンダーさながらに、健太は団旗の前に立ち塞がる。


「旗守りですか、良いですね!」

「決まった~!コレで完璧や~!」


両拳を上げて喜ぶ健太に「でも、太鼓が無いですけどね」と冷静にからかうハカセ。


「太鼓か~!高そうやから買ってくれへんやろな~」


残念そうに健太が頭を抱えていると「音楽室に有れば貸してくれるかも知れませんよ」とハカセは予想していたかのように笑顔で答える。


「ヨッシャ!じゃあチビが来たら学校に行こう!」

「また先生と交渉ですね」


前回の交渉を思い出した様子で笑うハカセ。


「チビ早く来んかな~」


すでに待ちきれないのか、健太は異常な程に足踏みを連打している。


「やはり今日は来ないのかも知れませんね‥‥」

「そんな事は無いやろ!チビは絶対に来るはずや!」


健太は立ち上がり辺りを見渡すが、人通りも少なくチビの姿は見当たらない。

この日健太の期待とは裏腹に、チビが基地に来る事は無かった。


次の日、休み時間のチャイムが鳴ると同時に駆け出した健太は「ヨッシャ!チビ呼びに行こう!」と席に座ったままのハカセを急かす。


「呼びに行くのは別に良いですけど、こういう事は自分から来ないと駄目じゃないですかね」


立ち上がろうとはしないハカセを見て健太は諦めたのか「じゃあ俺一人で行って来る!俺はチビも応援するって決めたからな!」と笑顔で走り去って行った。


「チビ~!チビは居らんか~!」


3組の教室に駆け付けて早々、健太の大声が教室に響く。

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