第22話<団長と説得力>2
「チビって誰の事?」
教室奥に居た4・5人の人だかりから、目つきの鋭い一人が答える。
「光久や!光久!クラスメートやったらドコに行ったか知らん?」
健太の問いに静かだった生徒達の視線が刺さる。
「そんな奴クラスに居たか~」
この一言で教室中の生徒が失笑し、健太は不可思議な雰囲気に無言で困惑していた。
「‥‥お前達な~!」
健太が拳を握った瞬間「団長解りましたよ!」と駆け付けたハカセの一声で、健太は振り返り「アレッ?来んのじゃなかった」と我に帰る。
「僕も応援しようと思い返したのですよ!」
格好つけるハカセに、思わず笑顔をこぼす健太。
「まぁ俺もどう応援するかは決まってないけどな!でチビはドコに居るん?」
まだ行き先も決まっていないのに、健太はハカセを急かすように早足で教室から出る。
「正に行き当たりばったりですね!解りました、では行きましょう」
他の生徒達が送る冷たい視線を気にする事も無く、ハカセは笑いながら健太の後を追った。
数分後保健室の前に着くと「さて、どうしようかな~」と健太は腕組みをして立ち止まる。
「ほんとに何も考えてなかったのですか?」
ハカセが呆れた様子で笑ったと同時にチャイムが鳴り「先に作戦会議やな!」と健太の一言でハカセは頷き、二人は早足で教室に戻って行った。
次の休み時間。
「そっかぁ‥‥チビみんなから無視されてたんか‥‥」
ハカセのリサーチした説明を聞き終えた健太は、口を尖らせ考え込んでいた。
「3組に聞きに行った時の雰囲気が冷たかったのは、そのせいみたいですね」
一通り説明を言い終わるとハカセはノートを閉じて「ソレを知ったうえで、どう応援するかですよね?」と健太に核心に迫る。
「やっぱり応援と言えば叫ばなアカンよな~!」
ハカセが質問した意味を気にもしていないのか、健太は軽い口調で答える。
「保健室の前で大声は駄目ですよ」
大袈裟に手を振り健太を止めるハカセ。
「じゃあ、どうしようかな‥‥」
いつまでも考えが纏まらなさそうな健太に「普通に説得したら良いんじゃないですか」とハカセは言い切るが「俺はハカセみたいに説得力が無いからな~!それに説得は応援じゃないやろ」と納得しない健太。
「ソレは方法論に対する考え方が自分に合わないだけで、応援は応援ですよ」
「そうなんかな~」
話しを逸らすように健太は窓の外を見つめ、グラウンドを眺めていた。
その頃保健室では、思い詰めた表情でチビもグラウンドを眺めていた。
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