第30話 忍者小僧、探索開始

 

 意外とそこそこの人数が集まった。

 しかし代わりにだろうか……エルフ種は三人だけしか居なかったみたいだがまぁ元々近付き難い街か……彼等からしたら。

 エルフ種は呪いを見る事ができる。それはオンオフできるものではないそれもあってか呪いを見ればそこには近付く事を躊躇う傾向がある。


 僕と道明さんも追加で五人……か。ちょ〜っと少ないけどどうにかなるかな??


 集まる人々の前に立ち挨拶をする。


「皆様、お集まりいただきありがとうございます。今回集まってもらったのは簡潔に言いますとこの街を救う為です」


 突然の招集に急な大仕事しかも街の救出となれば皆が皆が信じる訳もなく……。

 一人の男が口を開く。


「大体の話は聞いてるがよとてもじゃないが未だに信じれねぇ……。呪いっつーのは普通見境ないものじゃねぇのか?そんなものがこの街に蔓延してるとはとてもじゃねぇが思えねぇな」


「ちょっとあんた!?あの人は国家の人間だぞ!!」


「そんなの関係ねぇよ。大体お前らも不思議には思ってるだろ」


「この街に居て一度でも呪いにかかった人間を見たことあるか?」


 そんな言葉に1人が「確かに……」と呟くとそれが後押しになったのか一人また一人と集まってもらった人達からの疑いの視線や批判的な感情が強くなってきた。


 ……まぁ、実際の所僕自身呪いに関してはそこまで詳しくないんだなこれが

 道明さんがそう言ったからであって僕も呪いにかかった人間を見てないのは不思議だなとは思ってたんだよね。


「そういうのは専門家に聞いてみましょうか皆さん」


 そう言いながら視線を道明さんにそれを追う様にみんなもそちらを見る。

 人型の符にいそいそと一枚一枚何かしらの呪文も呟きながら綺麗に机に並べている道明が視線に気づく。


「はて、皆様?拙僧に何か??」


 この街に呪いのかかった人間が居ない理由についての説明をして欲しい事を伝えると……。

 道明の顔がものすごく面倒くさそうな感じに変わった。


「……説明した所でお分かりで??」


 符を置き最初に意見した人に詰め寄る。


「そ、それは……。でも俺だけじゃねぇ皆が気にしてんだよ謎のまま意味もわからず駒にされるのが気に食わねぇんだよ」


「まぁ、良いでしょう。と言ってもさほど難しい理由でも御座いません。その問についての答えは猫でございます」


「「「は??」」」


 全ての人の口からあっけらかんな声が飛び出すそしてもちろん僕の口からも……。


「冗談だろ?あんた」


「いえ、決して冗談では御座いません」


「猫ごときにそんな事できるわけねぇだろ!!普通に考えてよ!!」


 最初に意見した人が胸ぐらを掴み睨みをきかせながら怒鳴り散らすも道明は一切動揺せずただただ首を振りため息をこぼす。


「だから言ったでは御座いませんか……。理解できるのか?とそれなのに答えを言えば冗談とぬかす困ったものですねぇ。第一拙僧はまだ猫がどうやってるのかを言っておりませぬが??」


「だったら言ってみろよ。それで納得させてみろよ!!」


「……ならばその態度を改めてくださいな。教えてもらう側の人間の態度でございませんでしょう?それは」


 その言葉に掴んでいた胸ぐらから手を離した瞬間……。

 道明が懐から一枚の符を取り出しそれを思いっきり顔面を殴るかのように貼り付けた。

 そして一瞬のうちだった。

 貼り付けられたその男は困惑してる暇もなく容姿が気づけば猫の姿に変わってしまった。


「だーれがクソ失礼なお前さんなんかに教えるかばーかばーか。むしろ身をもって猫を体験して悔い改めやがれだばーか!!」


 急に猫に変わる成人男性……。

 そしてそれに対して先程までの落ち着いた感じとは裏腹に見た目相応の悪態をついていると急に猫の方が何かにビックリしだし建物内を縦横無尽に駆け回りだした。

 そしてその様子を見てポツリと「ははっ ざまぁ」と道明が呟くのだった。


 ……

 …………

 ………………


「それで、何でしたかね?」


「ね、猫が呪いをどうたらこうたらの話ですよ」


 皆で縦横無尽に暴れ回る猫をようやく捕まえる事に成功し先程までの大慌て状態を終わらせ状況を元に戻す。


「あぁ、そうでした。そうでしたね。彼等は食すのですよ呪いを」


「たべ、る?」


「そう、面白い事に彼等は呪いが完全無効種族でね呪いは栄養に魔力にそして寿命にと変換できるのです」


「それと人に感染している呪いでもお構い無しに自分のにできるのだからこれがまたこの街に呪われた人が居ない理由でしょう」


「それだったら街に猫が居なくなったら終わりじゃない?」


「う〜むまぁこんな餌場である以上そんな事は無いでしょうが……。まぁ終わりでしょうね」


 えらく呑気に言ってくれる……。

 しかしこの街に居着く猫の多さの理由はこれだったのか。

 ……ん?というかそんな話初めて聞いたんだが……。後で少し話が必要な気がするぞ。


「あぁ、どうやってとかどうしてとかの質問は受け付けておりませんのでそこら辺は自分で調べてくだされ。知恵ある人種なのですから、ね?」


 そんな言葉に少しだけ不満そうな顔が未だにちらほら見えるが一応だが納得はしたいみたいだ。

 しかし疑問が残るのか一人のエルフが質問する。


「要は猫が近くに居る間は呪いにはかからないから安心してって事ですけど、近くに居なくなった場合どうすれば良いのですか?」


「その為のこれですぞ」


 机から一枚の符を見せる。


「効果は簡単呪いの肩代わり。容量に関してはとりあえず拙僧ができる一番大きい容量にしておりますゆえとりあえずは安心かと」


 手を叩きながら

「さて、では拙僧は応えました。次はそちら方の番です生憎拙僧は今回はただの脇役しかしながら相手さん方が逃げてしまわれるこれではいけない……。故にここからは即断即決の心構えでお願いしましょうぞ」


「では参加をするならこちらを符を一枚お手に取りくださいませ」


 戸惑いの中しかし一人また一人と符を手に取る。誰一人として断るものはいなかった。


「宜しい皆さん参加という事で……。さてそれではこれより作戦の概要をお伝えするとしましょうぞ。では天城殿」


 天城が抱き抱えてる猫を回収し前に押し出す。


「え、え〜とそれでは作戦なんですが…………」


 作戦自体はそこまで難しいものではない。

 呪いを見れる僕と道明さんそれにエルフの三人それと護衛の数名を街の探索にあて残りの人達を街から人を出さないためと外に隠し通路等があった場合のために囲うように配置する。

 もし不審な人物も見た 捕まえた場合は即座に方法な何でもよいので組合に知らせる。といったいたってシンプルなものだ。

 説明後はすぐにエルフの護衛のためのくじ引きを済ませ地図を確認し自分達が担当する区域を指定する。



「それでは皆さん各自の準備が終わり次第即座に担当位置の方にお願いします」


「それでは行動開始お願いします!!」


 その言葉に全ての人間が一瞬にして目の前から消えていった。

 完全に消えたか確認をすませるとドカッと勢いよく椅子にもたれ掛かる。

 大きなため息が飛び出す。彼の中でやっと一番緊張する場面が終わったからだ。

 彼なりには頑張った方らしいが……どうやら彼からしたらそうでもなかったようで。


「ん〜駄目ですぞ。天城殿あのような下手に頼み込むようなものは」


「そ、そうですよね。頭ではわかってはいるのですがやはり癖というのは抜けないもので……」


「わかってるのであれば宜しいでしょう……。しかし今回は貴方は国章を出し国のましてや王の側近のレベルの人間となっております。そういう場合は下手などに出ず今後は上から命令する形の方が彼等冒険者や傭兵は多少は動きやすいでしょう。国に保証されて彼等はアレらになったのです拒否権など元よりないのですから」


 そう言いながら威嚇する猫の額に符を張り付けると先程のおっさんに元に戻る。


「そういう事です。今回は"無かった"事にしてあげましょう。こちらを受け取りこちらの方に行って仕事をして下さい。宜しいですね??」


「わ、、わ、わかった。…………あんたの言うこと理解で、できたからな信用して、や、、やるよ!!」


 おっさんは急いで符を手に取り即座にその場から立ち去る。

 それを見ていた天城はため息にまじりに返事をする。


「……さて、拙僧らも探しに行きましょうぞ。っとその前にこれらを」


「ですね〜」


 そう言って外に出ると同時に三枚の符を風に乗せて飛ばす。


「さっきのは?」


「追跡符でございます。エルフ種の皆様の方は少々危険な任務でございますので安全の為にも護衛可能なものを少々」


「なるほど……確かに下手をするとエンカウントもありますしね」


「えぇ。そういう事でございます。さてそれでは拙僧はこちらの方を」


「分かりました。僕はこちらを」


 互いの探索する区画を地図で確認をすませると二人は一瞬にしてその場から姿を眩ませるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る