第23話 竜娘、魔法を教える
「こっちか?……」
一人の青年が森の中を何かをずいずい進む。その足にはまるで迷いはなくただただひたすらに目的地を目指す。
はぁ〜……僕は一体何をしているのだか。
そこまで詳しくもない土地だからさっさと仕事を終わらせたいというのに……。
そんな途中でここ数十年感じた事がない魔力と重圧を感じてしまうと同時にそれらが一瞬にして感じなくなっては自分の立場上確認をしない訳にもいかないのであって彼はため息をつきながら重い足を前えと運び続けようやく何があったのかを理解した。
目の前にはヘカトンケイルの死体が二体それにそれを囲うかのようにオークやオーガの死体が大量に転がっていた。
「うおっ!?これは予想には無かったな」
軽く驚きながらも手馴れた感覚で近くの死体を漁るもどれも傷口は見当たらない。ふむ、仕方ない……これをやった当事者でも探すか。と辺りを軽く探索してみようとした瞬間、ヘカトンケイルの死体のお腹周りが蠢きだした。
それを見ると同時に警戒態勢に入る。意識を集中し何が出ても対処できるように少しづつ近づくと次第に音を拾うようになってくる。
それが何かは一瞬で理解した。人の声だ。瞬時に近づきヘカトンケイルの腹の上に立ち声をかけようとしようとその時だ。
石のような物を持った手が勢いよく腹をぶち破りそしてその人物と目が合い二人に一瞬の硬直が起こった。
そして一瞬だけの気まずい空気を破るのは彼からだった。
「いけません。いけませんぞ。一般人がこの様な場所に来てわ!!」
風呂に浸かるかのように頬杖をつきながら彼はこう続ける。
「いや、いやいやしかし拙僧、人避けの術を使っておりましたぞ??貴殿は何者ですぞ?」
「はぁ……何者も何も人の顔ぐらいは覚えてください!!と言いたいですがあまり顔を合わせた事はないのでしかないと割り切ります」
「むむむ?拙僧と縁ありし者……」
「失礼。でしたらもう一度自己紹介をしてあげます。自分、元『忍術研究科』の
「これはこれはご丁寧に……ではこちらも」
「拙僧、名を
「はて、『忍術研究科』と申しますと彼の者、頭領『佐助』殿の部下でありませんか!!これは失敬、失敬以後頭の内に入れておきましょうぞ。」
そんなセリフを吐きながら天城に対して手を伸ばし、天城もそれを掴むとそのまま引きずり出すと同時に驚いてしまった。
コイツ何故か全裸なのである。生まれたままの姿でどこも隠そうとせず平然と目の前に立っている。
「なぜ全裸!!!」
「せっかくの一張羅汚れては敵わないではありませんかそれゆえ裸なのです。それに拙僧は恥ずかしくもございませんので」
そんな言葉に関係などなくこちらが嫌なのでアイテムボックスからタオルを即座に取り出し顔面目掛けてぶん投げそれを難なく受け取ると嫌そうな感じを出しながらも腰に巻き付けるのを呆れながら眺めながらこんな所で何をしてたかを聞く。
「ふむ。特に理由等はございませんが拙僧の式神に邪悪な気配を察知しましたので参上致しましたらこれらが居られたので対処の方を致しました。そちらは何故に?」
大体同じ理由な事を説明し、ついでにと自分が関わっていることについて話を聞いてみる為とある一枚の写真を取りだし見せる。
「ふむふむ人を追っていると……」
「まぁ正確には違うけど大体そんな感じ」
「しかし、しかし申し訳ない。拙僧はこの写真の人物について存じ上げませんな。」
「まぁこの写真も当時居なくなった年の写真ですので流石に見た目とかも変わっていますでしょうしね。僕も困っているんです。」
「他に何か繋がるような物などはございませんので?」
「一応あるけど使ってるかどうか」
そう言って二枚の写真を追加し見せる。そこには派手ではないが綺麗な装飾が施された靴の写真と何かの模様が彫られた腕輪の写真だ。
しかしやはりと言うべき彼は見たことがなく少しだけ申し訳なさそうにしょんぼりしてしまった。
「仕方ない。蟹丸さんにもきいてみるかな」
そう言いながら立ち上がると何故か道明も何かの準備をし始める。
「どれ、でしたら拙僧が案内の方をして差し上げましょう。ですのでしばし待たれよこれらの処理を済ませるので」
「いやいや、街はわかるから別に」
「今は外に出ておられる」
「え?そうなの??」
「うむ、しかし案ずるが良い、拙僧がわかるゆえ」
そんな会話をしながら道明は要所要所に式神を死体を囲うように配置し手を鳴らすと全ての式神が回りだしそれは次第に早くそして円も小さくなって行きもう一度手を鳴らした瞬間一気に中央に纏まりそして先程まであったであろう痕跡は何一つ残す事はなくただの草原えと変わった。
「うむ、これで良いだろう。では行こうぞ」
「遠い?」
「すぐそこである。それと守って欲しい事もあるゆえ道すがら教えましょうぞ」
そうして彼の話を聞きながら目的地の方に進むのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「そうそう、ゆっくりでいいからまずは綺麗に出す事を意識して」
数人の先生役であろう人達が色んな子供達に丁寧に魔法の使い方を教えている中で何故か私までも駆り出され子供達に教えている。
理由自体はものすごく私個人理解している。
最初の方は見学していたのだが、誰かの魔法が誤爆してしまいたまたまその魔法がこちらに飛んできてしまい、つい咄嗟の出来事だったあまり魔法でそれを打ち消したのが原因だ。
そこからは、一緒に先生役をしてくれないかと勧誘の嵐だ。最初のうちは魔法原理なんて知らないし人に教えるほど頭も良くないしでどうにかこうにか断っていたのだがあまりにも熱心にお願いされ続けれては、流石に居た堪れなくなり了承してしまいそして今に至る。
「ねぇねぇ!!今の魔法なになに何も見えなかったよ!!」
「ね!!凄かったその後ものすごい風きて髪ボサボサになっちゃった」
人の悩みを他所に数人の子供達が駆け寄って来ては、いきなりの質問攻めを浴びせてきた。
「わ!?わわ。待ってまって落ち着いて教えてあげるから」
「「はーい」」
そう元気よく返事した子供達は私の目の前に体育座りしキラキラしながらこちらを見つめる。
「それじゃまずは私の使った魔法からだね。あれは【エアバレット】初級も初級の風魔法だね。」
それを聞いた瞬間子供達が急に笑いだす。
何故だろう??と思い一番前の子に聞いてみると
「だって【エアバレット】ってただの空気を射出する魔法だよ?昔見た事あるけどあんな風を起こせるほどの威力なんて無かったもん」
それをかわきりに次々と口を開きだししまいにはこんな事を言い出す子供まで現れる。
「そうだぜ!!俺なんて食らった事あるけど少し吹っ飛ぶ程で痛くも無かったぜ!!」
そんな事を胸を張りながら自慢げに話す様は見ていて可愛らしいものだが褒められた事をしている訳ではない。
「それはその人の魔法が弱かったから大事にならなくて済んだ訳で決して自慢することじゃないよ少年」
そう言い私は後ろにある木を的にもう一度同じ威力で【エアバレット】を放つ。
パチン。
指を鳴らすとほぼ同時にその木の真ん中は抉れ支えが無くなった上の部分はものすごい音を立てながら地面に転がり落ちた。
それを見ていて子供達は先程まで笑っていたのが一瞬で静まり変える。
「魔法っていうのはねその人の実力等によってわかり易く威力が変わるものなんだ。」
「良いかいもし今回のキャンプで魔法を覚えても正しく使うんだよ?決して喧嘩してイライラしたからって理由で友達や親などに撃っちゃダメだからねわかった?」
それ見て聞いた子供達は一斉に振り子のように首を振る。
怖がらせてしまっただろう……しかし危ないものは危ないとしっかり教えないといけない。これで怪我をしてしまったさせてしまったからでは遅いからね。
「さて!!とりあえず私が使った魔法が分かったわけですし、皆にも魔法の使い方を覚えて貰いましょう」
この魔法講義が始まる前に子供達には魔法が入ったスクロールを渡されている。
子供達も先程の静けさとうってかわり凄く興奮している。
やはり魔法を覚えるというのはどの世界でも共通して楽しみのようだ。
子供達が次々とスクロールの魔法を習得していくのを見てまわるついでにスクロールの中身を見てみる。
ふむふむ。
へぇ〜、こっちも魔法陣タイプなんだ。
それで魔法は【ウォーター】か………。
ん????
何で読めるん??
というか構成されてる補助まで分かるんだが……??
もしかしてゲーム内設定が通用しちゃうわけ??
は?ご都合すぎない??いや、こちらとしては助かるけどしかし……やはりなんというかおかし気がする。
……けどまぁ、正直どうでもいいと言うのが今の気持ちかな。たぶん考えた所で何か出来るわけでもないし第一私程度の馬鹿が考えた事を他の人達がやってない訳がないしね。
それに今は子供達に魔法の使い方を教える方が大事だしね。ゲーム内と同じであれば何でもござれよってもんよ!!
さて、皆は習得は終わった感じかな?
「よし!!それじゃまずは何も助言を受けないでやってみよう!!」
皆がそれに合わせて一斉に自分が持つ補助具を手に持ちながら【ウォーター】と唱え出す。
そして結果はと言うとチロっと少しだけ出ただけで終わったり勢い強かったり弱かったりを繰り返しながら垂れ流したりそして何故か水球を出したものの何故か勢いよく破裂し周りを水浸しにしたりとまぁまぁ予想通りに安定させて出来た子は居なかった。
「濡れたーーー!!」
「下手くそめー!!」
「あはははっ!!見てみて!!全然出なかった」
しかしどの子も凹んだりする事はなくむしろ数人の子供達は水のかけあいをし始めた。
しかし今回は遊びに来たわけではないのでこのまま収拾がつかなくなる前に皆をこちらに注目させる。
「遊ぶのはあとですよーみなさん」
「さて初めての魔法習得おめでとうございます。しかし安定させるまでが今回私に課された課題でもあるので短い時間でとなりますが頑張っていきましょう」
こうして魔法の授業を始める。
まずは安定した発動の仕方を教えた。これ自体はそこまで難しくは無い。
魔法というのは要はイメージの具現化だ。これだ!!ってしっかりしたイメージと魔力の流れをちゃんと出来ていればすぐに出来てしまう。
例えば先程少ししか出なかった者はイメージも足りなかったが同時に使ってる魔力を途中で止めた故に起きた現象でありそして水球を作った者は流れ出る魔力を一箇所に塞き止めるが魔力を止めずに放出し続けた結果があの水浸し状態という訳だ。
故に今回はまずは安定して一定の量の水の放出を出来るよう教えていった。
そうして数十分が経つ…………。
やはり子供というのは飲み込みが早い。すぐに安定して出来てしまったから次は水球の固定化について教えながら子供達の相手をしていると一人の男の人に声を掛けられる。
「君が……エスタスさんだね?」
「ですです。どうしました??」
「蟹丸から呼んできて欲しいと」
なんだろう?何かしただろうか??不思議に思いながら子供達をその人に託し蟹丸の所に向かう。
「呼んだ??」
「おう。呼んだよんだ」
そこには蟹丸とこれまた美青年と言うべき人が猫を抱えてこちらを見ていた。
あれ?あの猫ってもしかしなくてもメンダクスか??そんな事を考えているとメンダクスを持った美青年が口を開く。
「初めましてエスタスさんですよね自分天城と申します」
「初めましてエスタスです。しかしこれって何の集まり?」
「簡単に言うなら彼も同じだ」
あ、あ〜なるほどそういう事か。互いに握手交わし手を離そうとすると同時ににゅるんと天城に抱えられたメンダクスが器用に抜け人の肩に飛び乗って来た。
「おまっ!?急につかおっも!!」
飛び乗って来たメンダクスを捕まえようと格闘していると急に人が飛び出しぶつかりそうになる所を蟹丸が庇いその人を受け止めると同時にその人は蟹丸を勢いよく掴み助けを乞いだした。
「り、、、竜がっ!!!!竜が出た!!!!」
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