第22話 竜娘、暇つぶしをする

 

 馬車に揺さぶられる事数分……。

 同席してた人達と談笑していると不意に停止するどうやら目的地に到着したらしい。

 ……よっと!!

 馬車から飛び降り固くなった身体をほぐしながら辺りを見渡す。

 目の前にはThe・森という感じに木々が生い茂っており、周りには色んな建物や設備が置かれていた。

 ほぇーキャンプ場も兼任してるのかな?

 興味津々に建物内を覗いていると後ろの方から手を叩く音がすると同時に男性も声が響く。


「はいはい!!皆さ〜ん集まって〜!!」


 その声に自分達の手荷物を取った者達から順にその人の前に集まっていく。

 それにつられる様に自分も後ろの方に陣取りその集団にとりあえず溶け込むことするが……荷物の量みんな多くない??

 いや、正直自分自身急だったこともあり手ぶらなのは仕方ないけど……あれ〜???今日ってただ魔法とかの練習しに来たんだよね???


「──という事で二泊三日で皆さんには色んな事をしてもらいますもちろんいつも通りコテージ数も決まっていますので今からくじ引きをして書かれた名前の所に行ってくださいね〜あと何時も言ってますが取り替えとかはダメですからね親睦深める為にも分けるんですからそこを忘れずに」


 …………は??

 二泊三日???聞いてないんだが!!?何にも準備してない状況なんだが!!!?!ものすごく勢いで蟹丸を見つけ一気に距離を詰め問い詰める。


「聞いてないんだけど!!泊まるなんて!!」


「あれ?言ってなかったか??」


「言ってないね!!どうするのさ私何も持ってないんだけど」


「ん〜……アイテムボックス内にはなんかあるだろ?」


 何かって……ん〜キャンプに使えそうな物か適当に頭に思い浮かべてみる。

 テント、寝袋……はいらないから除外して着替えあとは何だろう何が必要だ?


「ねぇ、本来なら何が必要なの?」


「あん??あーそうだな、着替えと冒険用装備一式ぐらいか??」


「冒険用装備??」


「あぁまぁ言うて内容自体は簡単なものだ自分の使う武器に鎧、ランタンに縄そして解体用のナイフだったりとまぁここら辺は人によって変わるな」


 なるほど……そんなもので良いのかそれだったら十二分に持っている。

 ……しかし頭で想像しながら道具を取るのは些か非効率な気がして仕方がない気がしてきたぞ。持ってる物全てが頭に流れてくるしで頭痛も酷いしで他にやり方はないだろうか?


 う〜む…………。


 ……直接中に入ってみる……とか??

 いやいやいや何処と繋がってるか分からない所に入るとか怖くて無理。もし帰ってこれなくなったとか考えると恐ろしすぎる!!

 はぁ……あ?待てよ??よく考えたらステータスが見れるならアイテムリストだって見れるんじゃないのか??


「ねぇアイテムってどうやってボックスから取ってる?」


「俺はもっぱらアイテムをリスト表示させてからそれを取るって感じだな。」


「まぁでも基本は頭に思い浮かべて取ったりだな。普通に実用的だしな。まぁ最初の頃は頭痛とかに悩まされたがまぁ慣れだな。」


「あとは直接中に入って取るって方法もあるけどこっちは要らんアイテムまで見ちゃってアイテム取得した思い出とか思い出して時間泥棒になるから暇な時用だな」


「なるほどなぁ〜……で、どうやれば良いの??」


「まぁ、うん、聞くって事はそうだろうと思ったわ。えーとだな……」



 そうしてやり方を教えて貰ってるうちにどうやら子供達の方もお話が終わったようで各自自分の泊まるコテージえと移動を始めたりしていた。


「お父さ〜ん!!」


「──それでその上の奴でグリッドかリストかって……ん?どうした??」


 勢いよく抱きついて来たアズールをキャッチし自分の膝の上に乗せるとアズールが楽しそうに話し出したのを境に自分の事を手早く済ませる。

 片手にメンダクスを抱えながら先程教えてもらった方法でアイテムを取り出していると先程まで取り出した物を興味津々に見ていたメンダクスが何か反応する。どうしたのだろう?と自分もそちらの方を見てみるがあるのは木々しかなくこれといった気になるものはないがどうやら気になるようで抱えてた手の内からスルっと抜けるとトコトコとそちらの方に消えていく。

 一瞬だけ止めようと思ったが、良く考えればあれは野良だった事を思い出し作業を再開する。



 そうして道具類などを出し終わりメンテナンスしているとふと隣の蟹丸の方が気になり見てみるといつの間にか沢山の子供達が集まって何かの講義?を受けていた。

 内容自体はそう難しくもない生存戦略的なもので例えば自分より強い存在と対峙した場合の対処方法だったり多数との戦闘での不利な状況にしない為の立ち回り等といったまさに生きる為に必要な事を彼は真剣に語っていた。

 ゲーム時代の海洋生物に対して異常なまでに興奮する彼しか知らなかったが、あんがい彼は面倒見が良いのかもしれない。確かに今のところ私自身が彼に教えてもらってばっかりだ。

 ふーむこれはいつか恩返ししなくちゃな〜とそんな事を思いながらメンテナンスも終わりに近づいて最後の道具を手に取ろうとするとふと視線を感じそちらを見るとアズールがこちらをジッと見ている。

 何かが気になるのだろうか?蟹丸を中心子供達が集まってるのもあり大きな声を出すのもあれだと思い彼女だけに分かるようにジェスチャーを出すと嬉しそうな顔をしながら私の隣に座る。


「お話聞かなくていいの?」


「うん、それより何してるの?」


「ん?道具のメンテナンスだよと言ってもどうも見る必要あるのかな?って感じで綺麗なんだけどね一応ね」


「ふーん……」


 そのまま少しだけ無言になったがすぐにアズールが口を開く。


「この剣、持ってみてもいい?」


「良いけど……怪我だけには注意してね」


 掃除してた手を止め彼女を見ておく。こんなところで怪我なんてされたら蟹丸になんて言われるか分かったもんじゃないからね。

 アズールは恐る恐る両手でしっかりと握り自分の前えと剣を持ってくるとそのまま静止するもほんの数秒で腕がプルプルとし始めついにはその重さに耐えきれずに落としそうになる所を鍔の部分を掴み阻止する。


「あ、ごめんなさい!!」


「大丈夫だよ。それより怪我はしてない?手、見せてごらん」


 アズールがプルプルしながら手を広げて見せてくれる。少し赤くなってはいるがこれといった怪我は見当たらない。


「持つのは初めて?」


「うん、あんなに重いんだねびっくりした」


 うんうん。と頷きながら未だに震えている手をマッサージしながら他愛もない会話を続けていると遠くから声が聞こえる。


「あ。集合だ行ってくるねまたねお姉ちゃん」


「行ってらっしゃい」


 そういうと立ち上がると蟹丸達の方に行きそこにいた子供達と一緒に広場の方にと楽しそうに走っていった。

 その遠くに行くのを見てふと思い出す。


「あの猫……どこ行ったんだ。」

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