第4話 幼い最高傑作

 

 子供達の笑い声の様なものが聞こえる。

 すでに太陽は高々と昇っており、部屋の中にまで太陽の熱のようなものが伝わる。


「やばい!!し……ごと……」


 咄嗟に起き上がろうにも身体が動かない……が理由は明白だった。イリスが私を抱き枕にしているからだ。

 昨日のあの後の記憶が曖昧でありどうしてこんな事になってるかは知らないがとりあえず起こさない様にゆっくりと動かし拘束を解く。


 ベッドを離れ辺りを見渡す……木造の壁に天井そして昨日の彼女の存在が夢ではない事を証明する。辺りを見渡していると、ふと部屋の隅の方で光が反射するのが見え近寄りそしてそれが何なのか理解する。

 想像通り鏡だったと同時に自分の今の姿を確認する。


(あぁ……やっぱり夢ではなく現実なんだね)


 私は自分の顔を確認するかのように触る、餅のように柔らかい肌はとても健康的な褐色をしており、それを見つめる瞳は片方は深い紫色をそしてもう片方は金色に輝いておりそして淡くだが確かにそれは光を纏っても見えた。


(ふむふむ……キャラクリのままだね、髪も……暗い赤をメインにメッシュで明るい赤を入れてある)


 そして、その髪をかき分けるかのように角が二本生えている。

 恐る恐る触れると感覚がある……が、今までに中々感じたことの無いような感覚が全身を走る。

 気持ちい様なくすぐられてる様な曖昧な感覚だが、これ以上はイケナイ気がしたので触れるのやめる。


 そうして一つひとつと見ていって分かった。

 大分幼い感じがする。

 しかしこの娘は、時間を掛け自分の中の最高傑作の為、間違える訳はもちろん無いのだが、しかし鏡の向こうには幼い姿が写る。

 年齢設定とかは確かに18歳にしてたはずだが……

 見た感じ15〜6歳って感じだ。

 そりゃあ、イリスが子供扱いするのもわからんでもない。

 そんなことを考えながらまじまじと自分の顔を見ているとある事も思い出す。


(お腹にも確か特徴的なものが……)


 思考と同時に服を脱ぎ出し、下着一枚のあられもない姿になる。

 傍から見たら「はしたない!!」と怒られそうな状況だが、自分の身体ってよりもアバターの確認の感覚に近い為本人はさほど気にしてなかった。



 そして腹部を確認する。

 側腹部に大きな切り傷がありそれはお腹辺りにある鱗までも傷つけお腹側から背中側まで伸びている。

 触ると少しだがくすぐったい、という事は本物の傷と言うことになる。

 ゲーム内では、ただのペイントだったが今は、現実でありそしてこの傷も実際にどこかで負ったという事になるが、私にはその記憶はない、ゲーム内ではただ何となく有ったら意味ありげで良いかなとそんな馬鹿げた理由でつけたのだから。


 しかし思ってたより幼いとはいえ、私から見ても良い体格をしている。

 お腹周りには、無駄な脂肪は付いておらずしかし、変にガッチリと腹筋が割れてる訳でなくまさに理想のお腹をしており、実際の私にはなかったそれを興味深く触診していると……。


「おやおや〜!!随分と熱心的だね〜」


 イリスが後ろから忍び寄り、お腹を撫でながら私の耳元で囁く。

 それに驚き変な声が出ると同時に、イリスが何故か苦痛の声を上げながら、脇腹を押さえている。


「……し、しっぽがぁあ」


「え!?え……あ、ごめんなさい!!わざとじゃないんです」


「だ……大丈夫だよ、私が……い、今のは悪いから」


 どうやら、咄嗟に尻尾でイリスを叩いてしまったようで、しかもそれがどうも、クリーンヒットしたらしくその場で蹲ってしまった。

 どうやら尻尾は感情によって動くようで、人が後ろにいる時は気をつけないといけないみたいらしく、場合によってはこうなってしまうという事がよく分かった。


「いたたっ……まさか寝起きでこれを食らうとは……」


「ごめんなさい、意識外から来られたので……つい……」


「大丈夫だから気にしないで、それよりも何で裸なの?」


 それを言われた瞬間、思い出したかのように身体を服で隠す。

 人に見られてようやく羞恥心が混み上がってきたのと同時に、イリスの顔が少しだけ歪んでいるのが見えた。

 痛みで歪んだ顔ではなくただ心配するかのような顔を……。


「……それ……どうしたの?」


「心配する程のものじゃないですからそんな顔は、やめてください」


 どうやらお腹にある大きな傷跡をみてしまったらしく「でも……いや……」と何かを聞こうとするが、私が首を振ると優しく抱きついてくる。


「言いたくないなら良いわ……でもそんなの見たら心配なるものなのよ」


「…………そうですね、ありがとうございますイリスさん」


「とりあえず、服を着たいので離れてくれますか?」


 それを聞きゆっくりと離れるイリスを横目に着ていた服を着直す。

 私が服を着終えイリスの顔を見るとハッとしたかのように顔を振り立ち上がりおもむろに聞いてくる。


「ねぇ、お腹空いてない?」


「あ、えっと、空いて……ます」


 それを聞くと手を叩き「じゃあ着替えるから待ってて」と言うと、今着ている服を脱ぎだし鏡が立て掛けてあるクローゼットを開けると、色んな服を取り出しどれにしようか考えている。

 これは長くなるなとその場から離れ、ベッドに座り込み窓の外を見つめながら待つことにした。



 待つこと数分…………。

 暇過ぎてベッドに転がっているとクローゼットの閉まる音がする。

 ようやく着替え終わった様で、そちらを見るとそこには、動きやすそうな格好をしたイリスが立っており、私に近づくと手を差し出して来た為それを掴み立ち上がると


「それじゃ、行こっか!下の階で食事できるから一緒に行こうね」


 そのまま私の手を引っ張りながら部屋を後にするのであった。

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