第3話 ガガの森、進行 後

 

 草木が物凄い音を立てる。

 それに驚き、注意しながら見つめていると、鹿?のような動物が顔を見せる。

 それは鹿の見た目と判別できるがよく見ると額に、宝石のような物が付いており、角の先には小さな木の実のような物が実っている。

 それと数秒、見つめ合うと鹿?は急に耳を動かし逃げるかの様に何処かえ消え去る。


(魔物?にしては穏やかな感じだったしゲーム内ではあんなの居なかったよね?)


 やはり自分が考えてる事とは違うのだろうか?いや、まず生態系そのものが違うと考えるのが妥当な気がする。

 草原の時もそうだったが魔物が居なかった、いや、たまたま居なかっただけなのかも知れないが

 やはり分からない事を考えても仕方ない。

 出会わないなら出会わないでそれは安全なのだから。

 まぁ拍子抜けと言えば嘘になるが……

 胸に手をやると少しだけだが早かった鼓動も普通に戻る。


 とりあえずまた歩みを進める。

 地図とかあれば今がどこら辺なのかも分かるのだが、

 ゲーム内と全く同じゃなかったようでちょっと辛い。

 いや、多分道は同じなんだろうけども、木々とかの多さがゲーム内とは違う。

 当たり前といえば当たり前だがゲーム内で景色が常に移り変わる事はないゆえある程度の地形とかは長年やってたら覚えるもんだが……

 もしかしたらだけどゲーム内より時間が経ってるのだろうか。


 そんなことを考えながら歩みを進めていると

 何かが小枝を踏み折る音が聞こえる。

 最初はまた動物かな?と警戒心を薄め一応ながらも注意しながら歩いていたが、それは確実にこちらの後を付けるかのようでその時点で追いかけられてる恐怖で彼女は顔には大粒の涙を流しながらただただ逃げるかの様に前に前にと走り出す。

 それは目的の道程から大きくズレるかのように……


「──まっ……!!」


 ただその時声をかけられるが、しかし彼女にそれは一切聞こえておらず逃げる様に進んでいると、不意に手を掴まれると同時に彼女の恐怖心は限界値を越え、号泣しながらその場で

 崩れ落ち必死に逃げようと後退りしながら何かを払うように手を動かす。


「もう、無理無理っ!!やだやだやだ、耐えられない怖い帰りたいよっ!!」


「ちょ……ちょっと!!落ち着いて君!!何もしないから!!」


 払うように動かす手を掴まれ、「こっちを見なさい!!」と指示される。


「フーッ!!フーッ!!…………ひ、人?」


「えぇ、だから落ち着いて」


 そう言って彼女は私の手をそっと離し、私の涙を拭ってくれると同時にあやすかのように背中まで摩ってくれる。

 おかげさまかどうにか落ち着く事もでき、息を整えるかのように深呼吸する。

 思考を恐怖から解き放たれ正常に物事を考えることができるようになる。

 どうも身体に精神が引っ張られてる気がすると、人前であぁも泣きじゃくるとは思ってもいなかったようで今の状態が若干だが恥ずかしい。


 落ち着いて彼女を顔を観察する。肌は普通よりも白い感じでこちらを見つめる瞳は紅く深紅のような綺麗な色をしており、灰色に長い髪をかき分けるかのようにチラチラと見せる長い耳を持つ彼女は心配するかのようにこちらの顔をジッと見つめる。


「エルフ……ですか?」


「ん?そうだよ?そうゆう君は、竜人だよね?」


 それを聞いた瞬間、やっぱりかという思いに駆られる。


「……そう見えるならそうなんだと思う、ごめんなさい私にも分からないです」


 その答えに彼女は首を傾げ、頭にハテナマークを浮かべている。

 彼女からしたら何を言ってるんだろうとなっているからだ。


「よく分からないけどとりあえず良いわ、君、ここら辺で見ない顔よね?」


「……気づいたらあっちの草原にいた」


「そっか〜……とりあえずここら辺は危険じゃないけど、もうすぐ夜になるから移動しよっか、お名前聞いても良いかな?」


 名前……どうしようでもこの人は私の事を見て竜人って言ってた、そうなると答えは一つだろう。


「……エスタス」


「そっか〜!!エスタスちゃんね、私はイリスって言うの宜しくね」


 そう言うとおもむろに手を差し出される。それを掴み立ち上がり、身体に付いた土などを落とす。


「じゃあ、はぐれないように手繋いでいこっか。」


 そう言って彼女は強引に私の手を取り、引っ張る。

 どうもさっきから子供の様に扱われてる気がして仕方ない。

 そこまで子供っぽい見た目をしてただろうか?

 まぁ、彼女自身の親切心だなと割り切り握られた手を握り返し、後をついて行く。


 歩くこと数分、私の手を引っ張る彼女はずっと話しかけてくる。

 どれも他愛のない様な内容、怖がらせない為かそれともただ喋りたいだけかは分からないが、ただその優しさは嬉しく感じる。


「──それでね、今から行く町が……」


「……【レトナーク】だよね」


「知ってたか〜!!まぁあんな所にいたんだからそうだよね」


 彼女はそっかーっと額を手で叩きながら笑う。

【レトナーク】別名精霊の休憩所と呼ばれた場所は、ゲーム時代町が完成しアップデート後にはレイドクエストの受注場になったが同時にかなり特殊な場所であり、ゲーム内ではある特定の職業でなければ見ることも出来ない

 精霊種達を唯一制限無しに視認できるという変わった町であり

 日にちや時間や天候によって現れる精霊種が変わるため、私も良くあそこでSSスクリーンショットを撮ったものだ。



 そして時間は経ち辺りは森であったため日の入りはいつの間にか無くなり闇えと呑まれるもののつかの間、急に視界の先の木々から光が漏れる。

 それを見た瞬間私は無意識に彼女の手を離しおもむろに走りそしてその景色を見て言葉を失った。

 それは、温かく人工的な人々の光ではなく点在する数多の精霊達の身体から発せられるものからだった。

 それはとても幻想的に、今までのゲーム画面からではとても伝わる事のなかった世界がそこには広がっていた。

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