第15話 旅は道連れ
「な、何なんだよ!!!これは!!」
一人の男が叫ぶ。
彼もとい彼らの目の前には、向こうの景色が見えない程の魔物の群行があってるのだからだ。
確かにそれも驚く事ではあるがそれだけではない。
本来ならば一緒にいるはずのない魔物達、同じ種類同士でなければナワバリ争いをしているはずの別種同士の魔物達がこちらに視線はやるもまるで何かから逃げるかのように一緒に行動しているからだ。
辛うじて彼らに対して向かってくる魔物は少ない為迎撃に関しては難なくこなしているが、それもいつまでかも分からない。急に全ての魔物がこちらに向かってくるかもしれない。
「良いか……絶対に騒ぐなよ小僧共。理由はわからんが大半はこちらを無視する叫ばなければ奴らの的にもならないはずだ良いな?」
一人の男が荷馬車に乗ってる子供達に対して静かにするように促すとそれを理解したのか子供達は口を手で抑えて頷く。
それを見て男は荷馬車の外に出ようとすると服の裾を掴まれる。
「俺は周りの確認をしてくるだけだ大丈夫だ周りは傭兵で囲んである余程の事がない限り安全だ」
そう言ってゆっくりと外に出ると近くの傭兵に近寄る。
「状況どうなってる?」
「さぁな……魔物の大移動としか言えん数匹こっちに襲いかかってきたがどれらも若い個体だろう毛並みが移動してる奴らよりも綺麗だった位としか」
「そうか偵察の奴らはなにか言ってた?」
「それもまだ分からん帰ってきてないのでな。だがまともな状況ではないのは確実だろう。……ん?ちょうど帰ってきたな」
数人の弓を持った人達が森の中から帰ってくると同時にこちらに気付き近づいてくる。
「どうだった?」
偵察に向かった1人が首を振る。
「分からん……ただなんだ。森の中心に近づけないとだけ……」
「何かいるのか?」
「それが何なのか解れば良かったんだがな……本能に止められた『行ったらダメだ』って」
「特に偵察を組んだ獣人の何人かはかなり嫌がってな。流石にもしもの事態に対応できない人数になるのは避けたかったから戻ってきた」
獣人は特に本能的に嫌がるものに近付く事を避ける傾向にある。
これは獣としての危機察知能力ともいえよう。何かの前触れに動物が慌ただしくなるのと一緒で彼らはそれと同等の能力を持ってるからとの事。
彼らのこの能力のお陰で必要のない戦闘を避けたり。人体に影響がある物を嗅ぎ分けたり等ができる為、それを商売道具として売り出し色んな種族達と有効な関係を築いている。
そんな彼らが仕事を投げ出したくなる程に嫌がり、そして一緒に行った只人でさえその感覚に陥ったのである。
そして彼らがこれからどうするか考えている時に傭兵の1人が走ってくる
「話してる所悪ぃな状況が変わったぞ」
「あいつら急に速度を上げやがったこのまま野放しはマズイだろ。ここは街にも近いどうするんだよ」
「いや、街の方は魔除けの結界があるからどうにでもなるから心配は要らんが魔物共が何処に向かうのかだけは把握しときたいが流石に今の仕事をほっぽり出すのは違うな」
「よし……ならばこの中で一番足が早い奴誰だ?」
リーダーらしき人がそういうとすぐさま人から人えと伝言ゲームにように話が回ると後ろの方から獣人族の男が走ってくる。
「脚が必要との事ですが……」
「話が早くて助かる今群行してる魔物も群れが途切れたらすぐさま俺らの目的地に先行して傭兵詰所に話をつけに言ってくれ」
リーダーらしき人が走り書きで書いた物を彼に持たせる。
「これに現状に分かってる事が書かれている」
「分かった……別途緊急手当下さいよ?」
「……良いだろう俺の懐から何でも奢ってやる」
その瞬間……
荷馬車を護衛をしている傭兵の中にいる数人の獣人が急に森の方向見ると同時に馬車を引く馬達が急に興奮し始める。
まるで何かに恐怖するかのように……。
そして獣人族の皆は鼻息を荒くし、毛皮も逆立たせ警戒している。
「……何かが来る普通じゃない何だこれ」
獣人全てが無意識に構えていた武器を持つ手が勝手に震える。傭兵である彼らは日常的に恐怖というものを知っている……。
しかし今、現在、全身にまとわりつくような感覚はまるで一瞬でも選択を間違えたら死そのものに変わるのではないかと今までの恐怖がおままごと同然の代物に移り変わってしまう程だった。
草木が小さく揺れる……。
この時点で只人も同じような感覚に陥っている。皆、先程まで気にしていた魔物の群行など忘れる程に……。
そして気配を放つ者が森の中から出てくる。
「うわっと!!…………え?どう……いう状況ですかね??」
それは明らかに何処にでもいるただの竜人族の少女だった。
そして少女の声によって今まで震えが嘘だったかのように急に止む。
獣人族の奴らも呼吸は元に戻り毛も逆立っていない。
そしてあまりにも馬鹿げた質問もしてしまった。
「……君は一体なんだい?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
突然と武器を構えられいる人達に遭遇しそして急に変な質問を投げられた。
何だと言われても急に困る。
「え〜と旅人?ですかね」
「そ、そうか……」
沈黙が虚しい。
どう答えれば良いのかなんて分からない。
とりあえず状況を整理してみる。
目の前には、パッと見でも相当の人数がいるのが分かる。そしてその全ての人達が私に対して何故か武器を構えている。
数台の荷馬車にそしてそれを守るかのように囲う形で配置されてる人達……。
となるともしかしたら何かを輸送している人達なのだろうか?
もしかしたら盗賊とかもいてもしかしたらここら辺に出るって情報があって、それを警戒して咄嗟に武器を構えたのかもしれない。
そして馬の向いている方は私が今から向かうとしている街の方向だし多分そのはずだ。
「え〜とあのとりあえずその武器下ろしてもらっても良いですか?怖いので……」
「え……!!あ、すまない実は今色々あってな警戒してたもんで咄嗟に構えてしまったんだ。申し訳ない」
武器を収め、そして手を差し出される。
そしてその手を取り話を聞く。
「何かあったのですか?どうもかなり警戒されてるみたいですが??」
「あ、あぁ実はな……」
ここでようやく自身対して何故武器を向けられたのかを理解した、それにしても魔物の群行か……。
「あの、その魔物達って居なくないですか?周り見てもその影すら見当たらないのですが?」
それと同時に彼らが周りを警戒する。
そして私と話してた男はどうも傭兵達のまとめ役みたいで私に一言だけ言うとすぐさま忙しそうに動き始めた。
それにしても相当それを忘れる程の気配だったらしいが……。
彼らが言うには森の中央からそんな気配がすると言ってが十中八九これはシェリアスだろう間違いない。彼は生物の頂点に位置する存在だ魔物の群行の理由も間違いなくそれだろうが……。
ただ何故私に対してかは分からないが状況的に見ても私しかいないが、何故に私から同等の気配を彼らは感じたのだろうか?それが分からない。
そして手持ち無沙汰になってしまい、このまま姿を消すのもどうかなと思い、近くにいる獣人の傍に駆け寄ると何故か警戒される。
「あの……すみません」
「え、っとなんだい?」
「話は聞いてるのですが、今は私からそこまでの気配を感じますか?」
「いや……そんな事はない。正直に言うなら弱そうな気配しかないしかし気配の感じは似ている」
うぅむ……。
どういう事だろうか?
自分が知らない何かが発動しているのだろうか、しかしそれならばイリスや精霊樹等といった人たちも何かリアクションがあっても良いはず。
と、彼女はそんな風に考えているが事実エスタスとの邂逅によりゲーム内で習得した全てパッシブスキルが現状全てONの状態になっていた。
その中で今回の騒動の原因となるスキルの効果が、戦闘区域と指定された場所での視覚外の生物に対しての絶対的威圧となっている。
これはレベル差等一切関係なく効果を発揮し、例えば相手のレベルが低ければ相手は萎縮し恐怖状態となりその場で興奮状態またはその場からの逃走を図り、レベル差が互角または上位の者になると牽制行為となり強制的な戦闘状態に運ぶ物となっている。
そんな物を彼女は知らず知らずに使っていたのだった。
「───きみ、君どうしたんだい?そんなに考え込んで」
視界に獣人の手がチラチラと映り込む。
どうやら相当考えてたらしく、自分でも知らずにその場でしゃがみこんで頭を抱えていた。
「え?あぁ大丈夫です色々と起こっているようなので少し考えてただけです」
「それなら良いが……」
ここでようやく最初に話していた男が戻って来る。
どうやら用事の方は済んだようだ。
「君はこれからどうするんだい?」
「そうですねとりあえず今の目的地はこの先にある港町に行こうかなと」
「それならもし良かったら一緒に行かないか?俺たちの目的地もあそこでね一応依頼主からも了承は得ている」
「しかし……」
「先程のような事があったのですから君のような幼き少女が一人で行くなど私の良心が許しませんので」
すると突然別の男が彼の横から現れる。
どうも彼の一つひとつの動きを見ると礼節というものを知っていると感じとれる。
「自己紹介が遅れました。私の名前はカーマと申します以後お見知りおきを」
「これはご丁寧にありがとうございます。私はエスタスと言います失礼ですが彼らの依頼主でしょうか?」
「えぇ、その通りですそれでもしよろしければご一緒にどうですか?」
「よろしいのでしょうか?私はただの旅人でありますゆえ手持ちの方も少なく支払いのできるものも持ち合わせておりませんが……」
「構いませんよ。言うではありませんか旅は道連れってね」
ん〜
確かに彼の言っているが分からない訳では無い。
それにここから移動するとなるとあと2~3時間は歩かないと行けないとなるとこれは厚意を受け取るべきだろう。
「そう……ですね。それではご厚意に甘んじて受けさせてもらいます短い間ですが宜しくお願いします」
彼に対して頭を下げお礼を告げる。
そして私が乗る荷馬車の方に案内されるとそこには私と同じくらいの子や小さい子までもがいた。
彼らを見て私は一瞬だけ嫌な事を想像してしまう、彼らは犯罪組織の何かだとしかし彼らの服装は多少はみすぼらしいが別段何かをハメられる訳でもなく身体も痩せている訳でもなかった。
……考えすぎか。
「えっと短い間だけど宜しくね」
少年少女達はそれに対して元気よく挨拶をしていく。
そして私を乗せた商隊は周りの安全を確認するとすぐさま移動を開始し始めるのであった。
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