第7話 レトナーク、散策 3
お昼になり市場と反対側に移動するなり耳に響く音が大きくなってくる。広場にいた頃から微かに聞こえていたがしかしこれはなんの音だろうか?
鉄を打つような感じだが……。
それもすぐさま答えが得られた。視界には、工房のような建物が並んでおり、チラホラと見ていると何かをせっせと何かを運んでいる人達がいる。
そして、それを見ていたイリスが……。
「見て回ろうか騒がしくしなければ作ってるとこも見学自由だよ」
「え、あ、はい!!」
しかし見て回りたいと言う気持ちが出すぎていただろうか?
だいぶ普通に、見てただけのはずだが……。
「え?ものすごく目を輝かせたよ?尻尾も振り回してたし」
「あぅ……」
感情に左右されすぎる物を持っている事を完全に失念していた。頬を赤らめながら涙目で最初の工房を覗くと、そこは布などを取り扱う所のようだ。
奥の扉の向こう側で微かにだが何かの物音がする、そして工房内には物しかなく人っ子一人いない。
一つ一つと見ていく。
彼女自身これらの価値がどうなもんかは分からないが、どれも高級なのであることは分かるようで、無闇やたらには触らずに観察し満足すると外に出て、次の工房に向かう中で質問をする。
「どれも高級そうだった……あの布って何なの?」
「私も専門的な事は分からないけど、精霊樹の雫に漬け込んだ糸で出来てるんだよ魔法耐性と治癒能力上昇の効果がついてるからかなりの高級品だね」
「ちなみにおいくらで??」
「……大金貨2桁でございますちなみにこれでもだいぶ安くなった方です」
「触らなくて良かったーー!!」
そうして2軒目の工房にたどり着く。
どうやら音はここからのようで、中を覗くと……。
「おや、こっちに客人とは珍しいっすね〜」
「こんにちは〜この娘の見学なんだけど見ていって良いよね?」
「お〜イリスちゃん!あとそちらは初めて見る娘っすね?全然良いっすよ〜手に取って見ても良いっすよ〜」
「あのありがとうございます」
辺り一面にある武器見て少しばかり緊張するが、同時に胸の高鳴りが止まない。
そうして適当に一本手に取ってみる。
それはとても平凡な剣であり、一般的にはロングソードに分類される物で慎重に手に持ったが、予想よりも重量が凄かったのかその重さで剣先から勢いよく床に落としてしまった。
「わっ!わっ!!ごめんなさいワザとじゃないんです!!」
「大丈夫っすよ〜それは普通のっすからね〜にしてもただのロンソっすよそれ?そんな重かったっすか?」
そう言って私からロングソードを受け取ると彼女は、片手で普通に振り回す。
それを見て、思わず拍手をしてしまうと彼女は照れながら剣を棚に戻すと同時に奥から声がする。
「お〜い!!早く来て手伝ってくれ!!」
「わぁ!!ごめんっすすぐ戻るっす〜」
「それじゃごめんっすけど仕事に戻るっす好きに見て回ると良いっすよそれじゃ機会があればまたよろしくっす」
彼女は、頭を下げると慌ただしく裏に消えていくと微かにだが会話が聞こえる。
「親方!!ただでさえ今はこの剣作るのに神経使ってるんだからサボらないでくれ!!」
「ごめんっす!!イリスちゃん達が来てたっすからつい……」
とそっからは、鉄を打つ音がまた響だし聞こえなくなった。
しかし、彼女がまさかこの工房の親方さんとは……人は見かけによらないとはこの事だろうか。
見かけによらないといえば私のこの身体についてだ、ゲーム内のままだと思っていたが、持てなかったなんというか拒否反応みたいな感じで、持つことが出来なかったのだ。
「イリスさんさっきの持ってもらっても良いですか?」
「……良いけど?」
イリスは言われるがままに持つとそのまま構えたり振り回したりするがイリスはずっと首を傾げながら頭にはてなマークを浮かべていたままだった。
「普通だよ?ほら持ってみてよ」
そう言ってイリスは剣先を地面につけたまま握り手をこちらに向ける。
それを恐る恐ると手に取ると次の瞬間、ものすごい重さが手に掛かり、そのまま落としてしまう。
まさか持つことすら出来ないとは思ってもいなかったのであろうイリスが、どこか焦りながらも剣を元の場所に戻すと私の手を引きそのまま工房地帯を抜ける事になった。
「…………」
「………………」
無言が続き歩いていると急に道が細くなりだした。
しかしこの道には覚えがある、ある特殊な場所に行くための道の一つだ。
徐々に道は小綺麗な石畳になって行き、徐々に神秘的な空気になって行きそして林道を抜けるとそこには一本の樹が生えている。
しかしそこには行くことも出来ないようになっており、樹が生えてる土地を囲うように周りは水辺になっていた。
「あれが精霊樹様だよ 世界樹様が自分を護る為に植えたと言い伝えられてる一本だよ」
「すごいね……ここだけ空気が澄んでるような別の空間みたいですね」
「精霊樹様の浄化の力だねこれのおかげもあってここら辺は魔物が居ないんだよね」
そして水辺によると近くにあるベンチに座るとまた無言になる、どうやらさっきの事が気がかりのようでどうやって切り出そうか考えているのだろう。
そして拳を握り意を決して口を開いた瞬間……。
「ねぇ!!「なんじゃ〜お主から随分と不思議な魔力溜りを感じるのぅ?」」
そう言って私達の間に現れたのは幼い少女だった。
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