第6話 レトナーク、散策 2
「これは……また、凄いですね」
「でしょ〜!!」
そう、私達が出迎えたその景色は、地上からかけ離れた場所からだった。
木の幹に建てられた宿屋にきっちりとした綺麗な足場
どうやって建てたかは知らないが、これは心が踊らないわけはない。
辺りを見渡し、何処から降りる場所がないかと探すとすぐさま見つかった。それは木の幹に階段のように板がぐるりと打ち付けられていた。
(なるほど、木の幹を回って降りるのか)
意気揚々と進もうとすると勢いよく手を捕まれ、引き寄せられる。
「まってまって!!危ないよそんなに急いだら、よく見て柵もないんだから慎重に降りないと滑って落ちるよ」
「え!?あ、本当だ……柵ない」
そう言われ深呼吸をして興奮を抑えると同時に、下を覗き込む。興奮で分からなかったがこれがかなり高い、言うなれば五階建てのマンション位の高さぐらいか?もちろんそんな所から落ちたらひとたまりもないであろう。
イリスに感謝を伝えると、ゆっくりと降りていく。
「良いよいいよ気にしないででもこの高さだからちゃんと注意して降りてね危ないからね。私達みたいなエルフ種でも事故って落ちたら危ないからねこの高さは」
「事故じゃなきゃ大丈夫みたいな言い方ですね?」
そう言うと何故かびっくりした顔をするとすぐさまドヤ顔をするイリス、そしてそのまま足場から足を外しカッコつけるかのように手を広げる……。
「ならば、お見せしましょうエルフ種の特殊技能を」
そう言うと同時に脚全体に花びらのような物が舞い出す。
《エルフ種 種族スキル》
【小妖精達の自由なる脚使い】
エルフ種のみが使えるとされるスキルの一つ
自然と生きる彼等であるかこそ使えるそれは、自然に囲まれた場所であればそこが空中であろうと、半透明の花びらを足場にして移動出来るという代物。
移動のしにくい自然の中で他の種族も欲しがるスキル、しかしそれを発動したエルフ種を見たものは口々にこう言うのであった。
「あれは華麗な種族である彼等が持つことで意味があると」
なるほど……ゲーム内ではただの雰囲気付けのただのフレーバーテキストであり、NPCのみが使えたスキルであったため彼女自身も初めてそれを見たが、これは確かに彼等のみが持つべきものだろうとイリスの姿を見て思っていると、下から手を振っているのを見て足を踏み外さないようにゆっくりと降りていき、合流する。
「凄かった!!凄かったです!!なんて表現すればいいのでしょうか私の語彙力では言い表せない位にものすごく綺麗でした」
「そうでしょ!そうでしょ〜!!よぉし、気分も上がってきた事だし案内するわよ!!」
そうして町中を歩く事数分。
自然に囲まれた町なだけあって、所々迷いそうな場所もあるが、その都度聞けばイリスが答えてくれる。
そうゆう裏路地的な所は、大体が一般家庭だったりとなっているらしく迷わないのかと問うと
「慣れるまでは大変だったらしいけどね皆、顔見知りだから」との事だ。
なるほど、迷子になっても届けてくれるのかと感心してしまった。
そしてそんな裏路地側を抜けて、人々の声が活発に聞こえる場所に出る。
色んな屋台が出ており、お店を見て回ると食材や道具そして素材と色んな物が並んでいた。もちろんそれらは買うのは、この町の住人もだが中には屈強な男達もいる、そして総じてそういう人達は大体が買い溜めをしていっている。
「ねぇあそこの人達はなに?凄く買い溜めしてるけど?」
「ん〜?あぁあの人達は冒険者だよ知らない?」
「へぇ……あれが冒険者なんだ」
「興味ある?」
それに対して首を振る、興味が無いと言われれば嘘になるが、わざわざ危険に足を踏み込む必要はないだろうというか普通に怖いから関わりたくないのが一番である。
「そうだね〜怖いもんね魔物とかって、ここら辺は出ないけど少し外れれば遭遇する事もある訳だからねだから昨日は焦ったよ〜」
そこである事を思い出す。
この町に着いてからの出来事を、私は何一つ覚えてない事を
恐る恐るイリスに問うと。
「えっとね急に倒れたんだよあの時は、本当に焦ったよ〜」
屋台を抜けた先の広場のベンチに座り、ここに来るまで買ってもらった飲み物を片手にイリスはゆっくりと語りだす。
どうやらあの後私は、そのまま張ってた気が緩み気を失ったようだ。
それを慌てて抱えとりあえず教会の神父に事情を伝え見せると疲労やストレスが原因でないか?との事らしく別段、身体に異常は見られないから、一日安静にしてたら目が冴えると伝えられそのままイリスが休んでいる宿屋まで連れて帰ったらしい。
「それは……本当にご迷惑を申し訳ないです……」
「良いよいいよ〜気にしないで〜まぁその後ベッドに寝かしつけて離れようとしたら抱きつかれた時はビックリと同時に可愛かったなぁ」
その瞬間、口に含んでた飲み物を吐き出し、むせる。
「わわっ!!大丈夫?」
「ご、ごめんなさいちょっと自分自身の行動が予想外すぎたので」
なるほどだから、昨日会ったときの服と起きた時のが一緒だったのか。
そうして他愛もない会話を続けていると急に鐘の音が鳴り出し、しかもそれはかなりの大きさだった為、その音に身体を跳ねさせると、イリスに笑われしまった。
どうやら正午の時間のお知らせのようで、それと同時に私達も散策の続きを開始し始めた。
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