第8話 精霊樹と危険
少女はもの珍しそうに私の全身をベタベタと触っていると、急に怪訝な面持ちに変わる。
「……お主?なにゆえそんな状態で生きておるのじゃ?」
「生きてるって……どうゆう?」
それに対してどう答えるべきかと難しい顔をしながら、身体をくねくねと動かしているとイリス畏まりながら恐る恐ると口を開く……。
「あ、あのもしかして精霊樹様……ですか?しかし」
「む?なんじゃエルフっ子よ今はだいぶややこしいんじゃが?」
「申し訳ございません……不躾でした」
ほう?この少女はどうやら精霊樹らしいが、ゲーム内でみたことある精霊樹とはだいぶ様変わりしているようだ。
世代交代でもするのだろうか?
それに、神聖的な存在であるからかイリスはすぐさま跪きこうべを垂れている。
「お……ぬし……お主!!聞いておるのか!?我が話しておるじゃろう周りにうつつを抜かすではない失礼であるぞ!!」
「え?はぁ……そうですか、え〜とごめんな……さい?」
その瞬間、少女は顔をムッとしかめっ面に変わり見るからに不機嫌になるのが目に見えて分かるがすぐさま元に戻る。
「まぁ良い、我は寛大であるからのぅ!!そこなエルフっ子も頭をあげるが良いのじゃ」
そして少女はおもむろに私の膝の上に乗り、空いている私の隣を叩きながらイリスに対して「ほれ、相席を許そう座るが良い!!」そう笑いながらそう言われたイリスは、恐る恐ると隣に座り込む。
しかしイリスは、相席を許されたがそれでもどこか緊張している。
このさっきから私の手をにぎにぎしている少女に、何を恐れる要素があるのかが分からない。
「それで、私がなんで生きてるかって聞いたよね?どうゆうこと?」
「そうじゃのう〜どう説明するかのう、お主今までに何かおかしな事は起きぬかったか?何でも良い些細な事でも」
何か……何かかというが正直、私がここにいること自体が人生一番のドッキリであるが、言えないよなぁ流石に……。
そう考えてるとイリスが手をあげる。
「申し訳ございません一つ宜しいでしょうか?」
「うむ 発言を許そう」
「ありがとうございます!!先程、おかしな事とおっしゃいましたが一つあります」
「ほぅ?それはなんじゃ」
「武器が持てなかったのです二度もです」
「ふむ それはだいぶおかしいのう、どんな人類種どんな齢であれ武器は必ず持てるものじゃからのう」
「あぁ、そういえばそんな事もあったね」
それを言った瞬間、ものすごく呆れたような顔をしながら少女が私の顔を見る。
そこまで大事な事だろうか?たかが武器が持てないだけではないか。
「そ……そんな顔しないでよ別に何も問題ないでしょ?」
「お主なぁ〜……先程言ったであろう?どんな人類種であれ持てると、良いか!!お主は今言うなれば呪いが掛かっておる状態に近いのじゃ」
「いや、正確には呪いとは違うのじゃがな、う〜むなんと言うんじゃったかのう、こういうのを」
少女は言葉が出ないのかどうにかジェスチャーで伝わらないか試行錯誤しており、何故か泣きそうな顔をしながら私を見つめてくる。
いや、問題の大元に助けを求めるのは違うのではないだろうか?
まぁ、しかし仮にも自分の事ではある考えない訳にもいかないだろうが、あいにくゲーム時代の事しか私は知らない。
「なんだろう?イリスさんは何か分かります??」
「私?そうだね〜、まっさきに浮かんだのは結界かな〜でも魔力を閉じ込めたりする必要って本来無いんだよねむしろかなり危険な筈だし」
その瞬間、「それじゃあ!!」と少女の声が耳元で響く。
「流石はエルフっ子じゃな、長い時を生きる者の知識というのは大事な宝じゃな!!」
「あ、ありがとうございます!!私には勿体なきお言葉です」
「それで?その結界はそんなに危険なんです?」
二人とも難しい顔をする、どうやって説明するべきか考えているのだろうか?
そして長考の果てに、イリスが切り出した。
「私から説明してもよろしいですか?精霊樹様」
「うむ、良いぞ」
「いい?エスタスちゃんまず人類は魔力を作る事が出来ないのは知ってる?」
「え〜と、確か大気中にあるマナを取り込んでそれを変換してるんだよね?」
「そうだね、そしてその人類が使用し霧散した魔力を植物等が取り込みそれをマナとして大気中に拡散させるの」
どうやら、ゲーム内設定と変わらないみたいだ。でもそれだと私に掛かっている?結界が危険な理由にはならない筈だ。
確か人類は、マナを取り込み過ぎると中毒症状が出る為、無意識的に放出し調整しているとゲーム内資料で読んだのを思い出した。
でも……いや、もしかして私は、今は調整ができていないので無いのだろうか。
しかし誰が何のためにそんな状態にしたんだ!?
「待ってまって……でもなんだって私は武器が持てなかったの?そこの説明も欲しい」
「それは我が説明するかの良いか!!再三言ったが誰であれ武器は持てるはずじゃしかしお主は、持てなかったと聞く」
「良いか。武器が持てる持てないは、職業それに種族の適性情報によって決まるのじゃ」
「そしてその情報はどこにあるとお主は思う?」
「え、え〜と肉体かな?それか脳による記憶とか?」
少女は、チッチッチッと指を振ると続けざまに答える。
「惜しいのう、正解は魂じゃ!!良いか魂には全ての情報が書かれており、職業などもその魂に情報を書き込み追加するのじゃ」
「でもだったら何で持てなかったの?」
「良いか……昔からマナは魂を経由して魔力えと変換されてると伝えられておる……ここまで来れば流石に分かるであろう?」
まさか……。
魂ごと結界によって囲われてるって事?
武器が持てなかったのも、魂の情報を脳から肉体に反映する事ができなかったからというならば理解できなくはない。
そして仮に調整もできてないとなると……。
「あれ……なんで私、生きてるのというかかなりやばい!?」
「というかというより既に時遅しじゃな、いつその結界が壊れても不思議ではないのう」
「もしかしてずっと触ってるのも意味ある?」
「あるぞ〜、できるだけ反動を抑えるために慎重に結界内にある魔力を吸い取っておるんじゃよ」
「そうなんだ……ありが……と」
そんな話がフラグだったのだろう、身体内で何かが割れる音が聞こえると、同時に全身に激痛が走りそして口から大量の血を吐き出すと、そのままその場に倒れこむ。
「やばい!!流石にこれは予想してないのじゃ!!」
「この音は何!?」
「わからぬ!!しかし良い音ではないは確実じゃろう!!すまぬがエルフっ子よ、そ奴を抱えてあそこの我の元まで連れてってくれぬか今の我では抱えられぬ!!」
「わかりました!!エスタスちゃんごめんね触るよ」
「う!!うがぁぁあああ!!痛いいたい助け、ぐぅああ!!はぁ……はぁ……」
「ごめんね!!ごめんね!!少しだけ耐えて」
イリスはゆっくりと抱え、精霊樹の元に近寄ると根元に寝かせる。
「お主!!意識はあるか!!我の声が聞こえるか!?」
「き、きこえ……っっ!!」
途中でまた口から大量の血を吐き出すと、全身が小刻みに震え出す。
やばい!
やばい!!
やばい!!!
全身が悲鳴をあげている骨は軋み、内蔵はぐちゃぐちゃにかき混ぜられてるようなそんな感じが永続的にそしてだんだんと強くなってくるのが分かる。
視界は紅く染められ、そして吐き出した血が口の中に溜まり、徐々に呼吸も出来なくなってくる。
そして視界は徐々に赤から黒にえと変わり、私は意識を完全に失った。
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