第19話 竜娘、時間を忘れる

 

 爽快に塀の上を歩く猫を見失わないように追う事ものの数分

 彼?が止まった先は大きな建物の前だった。


 当たりを見渡すとちょうど真横に看板らしきものがあったため見てみるとどうやらここは図書館らしい。

 そしてそんな建物内に我が物顔で入ろうとするが、一瞬ある事頭をよぎる。

 ……動物って入って大丈夫なのか?

 そっからは行動に移すのが早かった。一瞬にして入ろうとする彼?を抱き抱えその場で問いかけてしまう。

 ……仮にも人が出入りしている所でだ。


「待ってまって!!君入れるの?ここ図書館だよね普通入れないイメージしかないんですけど??」


 今までの彼?の反応などを見るに言葉は理解されている……はず。

 そして期待通りかはわからないが、ものすごく嫌そうな顔をしながら怒りのこもった声を私に浴びせてくる。


「だ、だってそんなに鳴かれてもこっちの事なんて分からないんだから怒らないでよ!!」


「にゃーー!!にゃにゃ!!!!」


「だからっ!!わからないってば!!」


 そんな感じに言い争いという名のキャットファイトを繰り返していると横から声をかけられる。

 どうやら他の客から出入口に変な人が居ると注意を貰ったらしく

 確認にと注意に来たとのこと。


「すみません!!すみません!!!すぐ移動しますんで」


「あ!!いえいえ大丈夫ですよ?もしかしてそちらの猫さんが入ろうとしたから止めたんですよね?」


「はい……」


「でしたら大丈夫ですよそちらの猫さんは入館許可がありますので」


 なんと!?

 どうやら詳しい話を聞くと、こちらの猫さんどうやら普通の猫では無いらしくケットシーという種族との事。

 確かに尻尾が二股に割れているから普通ではないと思っていたがまさかケットシーだったとは……。

 そしてそのケットシーという種族はもちろんの事かなりの知性があるらしくそれに伴って知識を蓄える傾向もあるらしく

 大昔にケットシー族との交渉で全ての国の出入りの自由改め知識の宝庫図書館の出入りも自由との事だ。


「どうゆう交渉したんですかね?」


「そこは分かりませんが相当ケットシー族が有利なのは間違いないのは確実ですね」

「それでどうします?ここまで来られたという事は利用を目的としてですよね?」


「あ、はいそうですねもし宜しければ」


「それでしたらどうぞ。ご案内しますので」


 そっから先はトントン拍子で話進んでいきものの数分で館内の利用ができるようになった。


「基本的に館内でしたら何処でも本は読めますが、棚の前での立ち読みだけは御遠慮ください他のお客様のご迷惑となりますので、それと探している本の場所が分からないとかでしたら館内にいる従業員に聞いていただければそちらまで案内致しますので遠慮なくお声を掛けてください」


「それと最後に貸出の方もできますが制限があり一人三冊までとなっており期間は1週間となっております期間内に返却がない場合はこちらから通知の方が送られますのでご理解の方をお願いします。それではこちらからの説明は以上となりますが質問などは御座いますか?」


「特にはないですね」


「そうですか。それでは良い読書時間を」


 一通りの挨拶を済ませ、先程の迷惑をかけた事に対して謝罪を済ませ本棚の方に向かった。


 さて、ここまで来たのなら色々な物を調べたい所だが……。



 場所が分からない!!

 しまったな……何処に何かあるのかだけでも聞いとけば良かった

 すぐさま受付に戻ろうとした瞬間、腕に抱えてた猫が飛び降り一声鳴き出す。

 今までの経験からついてこいとでも言っているのだろう。

 脇にそれ階段を上がっていくのをついて行く読書スペースだろう長テーブルに沢山のイス達それらを一つ二つとすぎた本棚の前で止まった。

 どうやら着いたらしいそうしてまた一声鳴くと彼はそのまま別の本棚の方に消えていった。

 ……読むんだ。


 さてどんなものが出てくるか楽しみだ。背表紙のタイトルで気になりそうなもを取りパラパラと軽く中身を覗いていき中身が希望の物であった場合は取っていきそうでないものは戻していく。

 そうして選んだ数冊を抱え読書スペースに置くと一番上から中身を詳しく読んでいく。

 そこにはかなりの昔からの歴史や人物などが描かれている。人同士の小さな争いから大陸を守るような大きな戦争までも事細かにそこには描かれており、そして小さいのを除き世界に改革を起こした出来事にはほとんどの確率で友人達の名前アバターネームが書かれていた。


 ……本当にみんながここにいるんだなとただただ蟹丸あいつの言葉が現実味を帯びてきてしまった、最初はただの冗談だろうと思った妹の名前が出た時も最初は喜んだが翌々考えれば私達はよく一緒にいるところを見てたのかもしれないだから名前を出したんだろう……そう思っていたけど、しかしこの本に妹の名前アバターネームを見つけてしまうと現実逃避なんてしてる場合ではないだろう。




 そうしてより一層情報集に力をいれどんだけの時間が流れたが分からない……しかしそれだけの時間が流れたのだろう肩を叩かれて気づいた。


「申し訳ございません。お客様、閉館の時間が近づいております」


「え!?」


 とっさに壁かけ時計を見つめるそこには長針が6の数字を過ぎていた。窓から見える空はオレンジ色から藍色えと変わり始めていた。


「ご、ごめんなさい!!そんなに時間が経っていたなんて思いもしなくて!!!」


「構いませんよ。本の魅力って凄いですよね時間の概念がまるで通用しませんから私も良く時間を忘れて読みふけってしまうことあるんですよ」


 凄い勢いで立ち上がり本を元の位置に戻しに行こうとすると、借りないのか聞かれたが明日も来るので大丈夫だと伝える。


「あ、手伝いますよ」


 その言葉に頭を下げ半分だけ持ってもらうことにし本棚に急ぐ。


「……どれもこれもアーサー王の関係するものばかりですね」


「えっとそうですね。以前遺跡を見つけてから古い時代の事が気になって調べてるんですよ」


「確かにこの方の歴史は相当古いですからね気にはなりますよね。今でも色んな人が調べたりしてますのでそうゆう人にも話を聞いてみるといいですよ」


「そうなんですね。もし機会があれば話を聞いてみてみたいものです」


 全てを本を棚に戻し終えると手伝ってくれた従業員に感謝を伝え図書館を出ようとすると猫の声が上の方から聴こえる。

 あ、忘れてた。

 とうにどっかに消えてたと思ってたがどうやら本棚の上で寝ながら待っててくれたらしいその場で伸びと欠伸を済ませると私の隣に降りてくると帰るのか?と言わんばかりに声を出す。


「そうそう帰るというかまぁ……一緒でも大丈夫か」


 そうしてゆっくりと抱き上げ図書館を後にし外に出るとそこかしこでいい匂いを漂わせていた。

 どこも夕飯時なのだろう話し声や笑い声が楽しそうに街を覆っている。歩みを進める。

 買い物帰りの家族や同じ職場の人間達だろうか肩を組んだり談笑しながら酒場に入っていったりととても暖かい光景を目にしながら目的地にたどり着く。


 扉を前に立ち尽くしてる間も色んな人が中に入っていく。そしてそれにおおじて中から聞こえる声も大きくなっていくが蟹丸あいつは既にいるだろうか?

 建物内に入り蟹丸あいつを探していると……。


「お!!早かったな!!」


 その声は後ろから聞こえてきた。

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