第18話 猫の集会

 

 結局、蟹丸は仕事に戻って行った為、一人寂しく取り残される事になった。


 なんだよ……案内してくれるんじゃないのか。と少しだけ愚痴を零しながらも街の散策に出かける。


 さて軽く周りを見て確信していたが街並みはゲーム時代と殆ど一緒だと分かるが実際、自分の目で見るのとではこうも違うのか。

 水の都と言えば分かりやすいであろう。その様な景色が広がっているんだこれに興奮しない何てありえない。


「いやはや!!これは探索のしがいがありますね。用事の方も夕方からですし……」


「ふむ、3時間以上は探索できそうだ」


 足を前に出し色んな所を探索する。

 表通りから裏通りまで色んな所に入っていくも

 どこを見ても人はおり、笑い声や話し声が絶えることなく聞こえる。

 ……が、それより動きにくい。表通りは普通に動けるんだが裏に入ると2人歩けるぐらいの路地しかなくその横には何故か水が流れている。

 それもあってか人を避けながら探索している内に周りは苔で覆われた壁で人も通ってなさそうな所にでてしまった。

 通路は自分が通った所と少し先にある鉄格子のみしかしそれも蔓等が絡まったりしていた為人の出入りの気配も無い。


「……行き止まりか」


 踵を返し元の道に戻ろうとした瞬間、猫の声が聴こえると同時に身体に何かが駆け抜ける。

 それのせいかは分からない。

 しかし彼女の目には元の道とは違う無限に続いてしまうかのような水路になっていた。

 本来ならT地路があるのが正しいのだが……。


「おっと……これは」


 そして言葉を遮るかのようにまた猫の声が聴こえる。

 まただ……もしこれの原因が猫だとしてもどうゆう猫なのか

 そんな好奇心が身体中を巡ると同時に恐怖心も少しはあった。

 もしこのまま此処から出られなくなってしまうのではないか

 もしかしたら人を騙す魔物ではないのかと……

 色々な危険な事を想像しているにも関わらず彼女の脚は自然前にと進んでいく。

 本来の彼女であればこんな無謀な事はしないのだが前日からの睡眠不足による判断能力の低下のせいもあってか危険と分かっていても好奇心が勝ってしまったようだ。



 そうして歩くこと数十分……。

 流石に何も起きないせいもあるが目の前の光景のせいもあって彼女の警戒度はゼロに等しくなっていた。

 最初のうちは変わる事のない景色をボーッと眺めながら進んでいたが

 進むにつれ横道からゾロゾロと猫達が現れてくる。

 そしてこちらに気づきそして周りを回りそのまま逃げたりせずただ一声鳴くと彼女の前を案内するかのように歩き出す個体が数匹。

 残りの猫達は最初からこちらを気にする素振りすら見せず会話をしてるかのように交互に鳴いている。


 そんなのが数十分の内に出来上がってしまっていては張っていた警戒も解けてしまう。

 そして彼女の顔は蕩けきり果てしなくだらしない顔をしており本当に人に見せれるものでは無いそんな状態で猫達の後を追う姿まるで不審者そのものであった。

 そして時間も忘れ本能で追いかけている内に1番最初に聴いたねっとりとした何処かで聞いた事あるかのような猫の声が耳元で鳴くと同時にはっと我に帰る。


「っは!!あまりに天国すぎて……どこココ??」


 辺りを見渡すとそこはまるでこの場所を切り抜いてこの場所に置いたかのような不自然な円形の広場だった。

 来た道を見てみるとそこは建造物が並ぶ道になっている

 しかしこの辺りだけが草木や土の地面まであるとても不思議な空間だ。

 そしてそこには沢山の猫達が寛ぎながら会話をしている。


「なるほど……もしかしてと思ってたけどこれは猫の集会場に迷い込んだのかな?」


「それでも……この空間は「にゃ〜!!!!」」


 割って入るかのように大きな声が横から聴こえ咄嗟に振り向くと……。

 目の前が暗くなると同時に額に激痛が走る。


「待ってまって!!くい、くい込んでますから!!!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」


 何かが気に障ったのかは分からないただ伝わる雰囲気からは怒気のようなものが伝わってくる。


「やめ、やめてください……」


 必死に手を引き剥がそうとするが一切動かない。

 なんちゅう力をしているんだこの猫。


「ぶっ!!!!」


 頬に物凄い衝撃が襲う

 そしてあまりの痛さにその場に座り込んでしまった。

 額から流れる血……

 頬から伝わる肉球の気持ち良さとは程遠い鈍痛。


 ……本当に痛い人生で1番かもしれない

 あまりの痛さに放心していると膝に先程の猫が座り込むとそこで初めてその猫の全貌を見ることができた。

 白い毛並みに対して前脚の片方から正反対の後脚に伸びる赤色そしてとても特徴的な二又に裂けた尻尾も片側だけが赤色をしていた。

 まじまじと観察しているとあちらの方から話かけてくる。


「にゃぁにゃにゃ〜!!」


「…………」


「にゃにゃん!!」


「にゃにゃ!!にゃ〜んにゃみゃ!?」


「…………ごめんなさい猫語はさっぱり」


「にゃ!!?……にゃ〜」


 何故か物凄い呆れられてしまった私が悪いのだろうか?

 それでも猫はこちらにはお構い無しにずっと語りかけてくる。


 そして膝の上で数十分鳴き続けていたのが突然と止む。

 どうやらようやく終わったようだ。それと同時に地面をポンポン叩くと全ての猫がこちらを振り向くがこれがかなり怖い。

 全ての猫が一点に集中する様はまさに異様な雰囲気である。


「にゃ!!」


 膝の上に乗る猫が短くそう鳴くと各々散り散りに去っていく。どうやら解散の合図らしいが行きと違い帰りはバラバラらしい。どうゆう仕組みだろうか?

 そんな事を考えてると膝の上の温かさが消えると同時に後ろか鳴き声が聴こえる。


「いつの間に……」


「え〜っと……ついていけばいいのかな?」


 それに返事するかのように小さく鳴くと猫は振り返り歩みを始めたので急いで追いかける。

 ただただ真っ直ぐに進むだけだが数分もしない内に人の声が聞こえ始める

 そしておもむろに曲がり角を曲がる猫を追いかけるとそこは蟹丸と別れた近くだった。

 何となく道の確認も兼ねて後ろを振り返るもそこには道など無くあるのは階段そしてその先には小さくだが確かに二又に裂けた尻尾が見えた。

 階段を駆け上がるしかし既にそこに猫は居ない何処だろうと辺りを見渡すと上の方から声が聴こえた為塀の上でまるで待つかのようにこちらを見つめておりこちらが視認するとすぐさま移動し始めた。


「ついてこいって事かな」


 彼女はただそう呟くと見失わないようにとついて行くのであった。

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