第17話 竜娘、同郷と会う
言われた通りに詰所に立ち寄り、簡易身分証を作ることにするが、ここに来てまさかの壁が立ち塞がる。
どうも簡易身分証を作るには生年月日、名前、住所が必須項目となっているのだが、住所欄に記入した名前がダメだったのだろうかものすごい奇妙な顔をしながら受付の人に質問されてしまう。
「これは……間違いではないのですね」
「……えぇと何か問題でも?」
「いえ……特にはそうではないのですが。この住所は本当に間違いないのですね?」
「はい、生まれはそこですねそっから特に変更等もした事もないのであってるはずです」
「そう……ですか。わかりましたでしたら少々手続きに時間が掛かりますのでお待ちくださいませ」
そう言って頭を掻きながら悩むかのように扉の向こうに消えていった。
意外とすんなり事が進んだが、それにしてもあの顔はどういう意味だろうか?住所を聞かれるのは不思議だったがこの街がある以上無いわでは無いはずだが……。
待つこと数十分……。
長いとは言ってたが流石に長すぎる気がする。
机に突っ伏しながら木目をなぞるかのように眺めがらボーッとする。最初の数分は適当に馬車で使った光の人形を出して遊んではいたのだがそれもすぐに飽き机に突っ伏してるのであった。
そしてあまりの暇さに少しばかり睡魔に襲われるが辛うじて踏ん張っているが、背中に当たる日差しが物凄く心地よい暖かさを持っており睡眠欲求に助長される。
これはダメだ……と瞼が今にも落ちそうになりこれは勝てないと悟り諦めて寝落ちしようかとした瞬間、隣に人の気配を感じる。
……が、隣を見る力すら出すのすら面倒臭い程に今は睡魔がすごいのである。
それに赤の他人に見られるのもあちらとて嫌かもしれないからね。
そしてその人の気配が現れ数分後、扉の音と同時に慌ただしく謝罪が聞こえる。
「申し訳ございません!!大変お待たせしました!!!!」
流石の声量と慌て具合から声の主の方を見ない訳もいかなく顔を上げると自然と隣にいる気配が気になりチラッと視界の端で見る。
するとそこには、触った物を全てを握り潰しかけねない日焼けのせいなのか黒光りする太い腕。そしてその腕を目立たせしまっている白いシャツは今にもはち切れてしまうのではないかと言わんばかりに身体にピッチリしておりむしろ着ない方が良いのではないかと思うほどだ。
そして最後に顔の方に視線をやるが、顔を見るなり立ち上がり咄嗟に後方に仰け反るのだがこれがダメだった。
いつの間にか椅子の足にぐるぐる巻きになっていた尻尾のせいでバランスを崩しそしてそのまま顔面から床にダイブしてしまう。
「うわ!!だ、大丈夫ですか!!?」
「……いたい」
すると目の前に手が差し出されその手を無意識に取り顔を上げるとそこにはブクブクと泡を出しながら私を見つめる蟹の姿があったのだ。
「わぁあああああああ!!!!!」
「俺を見えているようだがこの仮面を見て叫ぶとは違ったか?」
その言葉を聞いて少しだけ心が平常運転になると同時に蟹をまじまじと見つめる。
蟹を模した仮面……過去にそれを好んで愛用してたフレンドが一人だけいた。
「は?え??蟹丸なの!?」
「お!!やはり分かったか!!そしてその容姿には記憶とは少し違うが覚えがあるぞ」
彼は蟹の仮面を外すし中に収まってた髪を整えそして
「久しいなエスタスいつこっちに来てたんだ」
眩しい程に白く輝く歯を並べれた口元はにっこりと笑みを浮かべながら私を担ぎあげそのまま椅子に座らせてくれる。
と、同時に横から声が割って入る。
「あ、そこに誰か……いえ蟹丸さんがいるんですよね姿が見えませんが……」
「というかお知り合い……なんですか??」
「おっと……本来今は仕事中でな抜け出す為にも姿を消してるんだった」
そう言うとすぐに蟹丸は「チッチッ」と舌を鳴らす。
それと同時に視認ができたのか横から少しだけ驚いた声が聞こえる。
「なんと!!蟹丸さんには何時も驚かせてもらってはいますが未だにそれが尽きぬとはやはり底がしれませんね」
「まだまだ隠しネタはいっぱいありますぜ!!おっとすまないが少しコイツ借りるぞ」
「えぇ構いませんがこちらの書類をお渡ししてからでよろしいでしょうか?」
そう言いながら受付の人は書類を私の前に並べながら説明しだす。
「こちらが簡易身分証明書となっております。まずは右からこちらは貴方個人の情報を記入する物でこちらは本身分証を発行する際に使うものなので記入後は役所に提出するまで無くさずに保管して下さい」
「そして真ん中のが、この街で滞在する間のみ効果が発揮される簡易身分証明書ですのでこちらも身分証を発行するまで無くさない様に気をつけて下さいね。補足として一応他の街でもこちらを見せればその街でも簡易身分証明書を発行できますが同じ位に時間を取られると思いますので出来るだけ早めに身分証を発行する事をオススメします」
「そしてこちらの最後は注意事項に関して記しておりますので時間がある時にでも目を通して下さい」
「説明以上ですが何か分からない事はありますか?」
「いえ、とりあえず大丈夫です。」
「そうですかそれではこちらをお渡ししますね」
彼は紙をまとめ封筒の中に入れると私に手渡すと彼は笑顔になりながら
「それではようこそ!!港の街スーリャンへ!!ここは貿易の要の街となっており色んな商品がありますゆえ楽しんでくださいね」
そう言って彼は私を歓迎してくれた。そうしてその場を後する。
外に出るなり蟹丸が口を開く
「さてお前はこの後用事もないだろ?どうする」
「どうするって……知ってる事を教えてよ」
「そりゃそうだよな まぁいいが後ででいいか?仕事抜け出して来てんだ」
「仕事って何してるのさ……ていうか何かかなり馴染んでない?」
「そりゃそうだろ?こちとらもう10年いるんだぞ?馴染みもするさ」
彼は私の頭を軽く叩くとそのまま歩き出した。
10年って……あれ??おかしくないか?だって蟹丸があっちで消えてたのはつい最近のはずだったが。
「はぁ!?待って10年ってつい最近消えたよね!!」
「となるとお前さんも近いって感じか?何時だ?」
「20××年の9月××日だけど……」
「じゃあほぼ同日だな」
頭がおかしくなりそうだ。この時間のズレは一体何なんだ?
そして一人頭を抱えてる中お構い無しに話を続ける。
「まぁそんな深く考えんな!!せっかくの異世界楽しめ!!」
バン!!
と大きな音を立てる程の威力を背中にくらう。
「いったぁああ!!?なにをするのさ!!」
「悩んでたっぽいからな吹き飛ばしてやったんだよ!!感謝するんだな!!」
「ありがとさんっよ!!!」
お返しに脇腹に強めグーパンをお見舞いするとそこそこ痛かったのか苦痛の声が漏れていた。
それを見て少しだけ笑ってしまったがいいザマであると思いながら歩みを進める。
それにしてもこいつを見てると頭を抱えてるのが馬鹿みたいに感じてくる。
実際問題、確かにこいつの言う通り考えた所で何かが出来る事なんてないのは分かりきっていたではないか。
正直、頭の片隅程度に置いておけばいい事ではないか。
そうして話をしてるとどうも色んな人達がやはりと言うべきかこっちに居るらしい。
「お前の所のギルドの奴らとは結構会ったな」
彼はそのまま色んな名前を言っていくと特に印象的かつ定点拠点持ちを教えてくれる。
「何でも屋のAliceとそこの相方としてのリサリサだろ?それと幾つもの高難度の魔物等をソロ討伐で名を轟かせているカイエとかかな?」
そしてカイエの名を聞いて飛びつく。
「え?カイエいるの!!?」
「おぅいるぞ?拠点が変わってないならこの国に居るはずだ。討伐に行ってなければだけど……」
「何だ?リアフレか??」
「妹なの……はぁ〜〜良かった生きてたんだ」
「そりゃ良かったじゃねぇかならば会いに行かねぇとな……「見つけたぞテメェ!!!」」
会話してるとそんな何かを追う悪党の様なセリフが飛んできた。目の前を見ると蟹丸と同等の筋肉かいやそれ以上の筋肉ダルマが青筋を立てながら息を切らして立っていた。
「テメェ俺の仕事場をすっぽかすとはいい度胸じゃねぇかあぁん?」
「悪い知り合いが来ててな午後はちゃんと出るよ」
「知り合いだぁ……?この竜人がか?随分ちんちくりんだな」
お?何だコイツ初対面に悪口かこの野郎!!そんな事を思いながら睨みつける。
「まてまて!!俺よりコイツ強いんだから挑発しないでくれ」
それを聞きと軽く手を振りながら
「挑発したつもりはねぇよ。ちいせぇからちゃんと食ってんのか気になっただけだ。てかお前より強ぇってお前は冗談も下手だな!!まぁ良い午後はちゃんと来いよ先いってるからな遅れるなよ」
筋肉ダルマはそう言いとそのまま海が見える方に消えていった。
「そういう事で……だ!!悪いけど遅れる訳に行かねぇんだ夕方には終わるからこの先にある酒場で合流という事でそれまで自由に探索すると良い!!ゲーム内と違う場所あってなかなか楽しいぞ!それじゃまた後でな!!」
そう言うとそのまま彼は先程の筋肉ダルマが向かった方に走っていった。
「いや、早いな既に粒に見えるんだが……あ、抱えてたな今」
そうして取り残された彼女は時間になるまで街の探索をする事を誓った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます