第26話 竜娘、情報過多につき頭をかかえる
【アイギス】
信仰系魔法の中でも随一の耐久性を持った防御魔法である。
それと同時に範囲内でいるものであればある程度の状態異常の治癒人体の傷なども回復する事ができる。
防御力と範囲は使用者の信仰心と発動時の消費魔力により変わり範囲内に居る限りであれば使用者の魔力の続く限りであれば展開し続ける事が可能となるが範囲を出た場合即解除となる。
【ロスト・ジャッジメント】
信仰系魔法の単体攻撃魔法の一つ。
神々が死者の魂に対して今までの罪を断罪する為に使用したとされる十字架を顕現し攻撃する。
威力は使用者の信仰心と消費魔力によって変わると同時に相手の罪の重さによっても変わる。
二人の魔法ほぼ同時の発動。しかも攻撃魔法の方は対象が死霊系と来たもんだ。
こいつらの厄介な所は消滅すると同時に爆発してしまう所でありまさに死なば諸共と言う感じだ。
その為彼は忠告したのである。もちろん彼女もその事は理解しているだから焦っていたのだが、どうやら間に合ったようだ。
来るはずの爆風に近いものは感じる事は無くただただ眩い光のみ何度も何度もこちらを照らすのみ。
ゆっくりとかざしていた手を下ろし先程まで狂っていた人の方に振り返る。
どうやら正気に戻った様だがどういう状況なのか理解していない様で忙しく顔のパーツ達が動いていると上の方から声をかけられる。
「起きました?」
天城だ。
降りてくると私達二人の様子を見る。少しだけ心配そうな雰囲気が感じ取れる。
「私は大丈夫。そっちの人見てあげて」
「それもそうですね。分かりました」
私がそう言うとすぐさま彼の方に駆け寄り何かの確認作業を行っている。
そんな様子をただただボーっと見ていると天城が話しかけてきた。
「アレをどう見ます?」
「急だね?どうってただのレギュオンじゃない??」
「いや……じゃああっちにいた時あんなエネミー居ました?」
その言葉に少しだけ考え込む。
「……居た記憶がない気がする。竜種の見た目であんなに人の魂を巻き込んだ人ゴースト系エネミーなんて見たことも聞いた事もない」
確かの竜種のみであればレギュオンは作れなくはないがすぐに魂の共食いを始めてしまう為むしろ力は霧散し最終的に弱い個体になってしまう。
それに人の魂を織り交ぜてもそうだ。いや、これはむしろもっと酷い事になる魂としての格が違いすぎる為共食いなど起きることも無くただの蹂躙になってしまい魂を形成する力を吸収され群体から個体に戻ってしまいかなり強くなったゴースト系のドラゴンができてしまう。
「それにしてもあの見た目は非常に気になる」
「やめてくださいよアレを作った奴と会おうなんてどう考えてもろくな事になる気配がしないので」
「まっさか〜そんな事する訳……アリだな」
「まじで!!!やめてください!!あれは国で処理する案件レベルなんですから……あっ」
「国って……ん?」
そんな事を話しているとこっちを向いた天城の反応で気付く。
辺りの明るさが元に戻っていた。
「解除しても良いかな?」
「見た感じ良いと思う。よしこっちもある程度大丈夫そうなので少しアレの居た所を調べたら戻りましょうか」
その言葉を信用し魔法を解除しレギュオンの居た位置に移動し先に何かないか調べ回ってみる。
そういえばレギュオンは何処から来たのだろう?そんな事を思い少しだけ辺りを見渡していると肩を叩かれる。
「何探してます?」
「レギュオンが何処から来たのかなって思って痕跡無いかなって」
「ふむ……まぁ確かにそれも大事ですけどそれよりこれ」
そう言って何かを見せてくる。
「なにこれ?」
「多分、触媒」
「はぁ〜えらく綺麗ね。紅い水晶??」
「竜血晶だと思うけど……どう?」
まーじか。
これまた希少な物を触媒にしたものだ。
【竜血晶】
一頭丸々の竜の血を錬金する事で手に入れる事が出来る物。
それは素材として色んな適正を持ち色々な物の代用ができ触媒として使えば竜特効や竜特防といった竜殺しに近い物が付与される。
自分が持ってる物と見比べてみるが……確かに竜血晶で間違いない。
「なるほど……見た目の合点がいった」
「ですね。言っちゃえば強い細胞の塊ですからね彼らも自分達の中で一番強い形えと変えていった結果がアレだったのでしょう」
そう言いながら辺りを気にする素振りについつい同じ様に見て気づく。
レギュオンが居た位置に色んな大きさの骨が散りばめられていた。
なるほど……取り込み力を吸収し死体を捨てずに骨等を身体を形成するのに利用したって感じなのか。
「とりあえず戻りましょう皆さん心配してるでしょうし」
彼はそう言ってまた印を結び一体の分身体を出すと何やら文を与えるとそれはすぐにどっかに消えていく。
「何を渡したの?」
「蟹丸さん宛にですね。無事だと言う文を持たせました。そうすればあちらも警戒態勢を解けるでしょうしこちらも急いで帰る必要もなくなります」
そう言って天城は木に寄りかかり休憩している彼の方に近寄り声をかける。
「戻りましょう。立てますか?」
「あ、あぁ多分大丈夫だ」
ゆっくりと木を支えに立ち上がり自分一人でしっかりと自立し歩く事ができる事を確認する。
問題ないようだ。
そうして彼が大丈夫なのを分かった為移動を始める。
しかし子供達を逃がすときに応戦した時に脚の骨を折ったり致命傷を負ったとの事だが天城曰く【アイギス】の回復能力とその前に天城が使った回復魔法の治癒能力向上で完全に完治したの事だが……。
それにしても綺麗に治るものだな。
彼が装備している鎧等も滅茶苦茶になっており一部は溶けてたり引き裂かれたり想像するだけで痛々しい怪我をしていたのが分かるのだが実際には身体には傷跡すら見当たらない。
そんな感じにまじまじと見ていると痺れを切らしたのか話しかけられてしまった。
「すまないお嬢ちゃんそんなにジロジロ見られると……」
そう言って少しだけ照れくさそうな顔をするおじさん……。
「あ!!ごめんなさい!!いや綺麗なものだなって思って……え〜と」
「ゴードンだ。お嬢さんは〜」
「エスタスです。宜しくお願いします」
「あぁよろしくな。しかし俺も何度も信仰魔法は受けた事もあるし使った事もあるがここまで綺麗になった事なんてない」
そんな事を言っている彼を見て何処かぎこちない雰囲気が感じ取れる。どうも緊張しているみたいだが……。しかし何に対しての緊張までかは分からないがどうしたものか?こちらから聞いてみるか??
そんな事を考えているうちにあちらからその答えがやってくる。
「……アンタらは何者だ?」
あまりにも突然すぎる質問。何者……私は何者なのだろう。コンビニ行こうとしたらわけも分からずにこっちに来ただけの一般ピーポーなんだが……どう答えるべきだろう??
三人は立ち止まり無言が続いていると……。
「それに関しては僕からお答えしましょう」
私とゴードンの間に入り込む様に天城が前に立つ。
「僕たちは俗に言う古代人です。聞いた事ぐらいはあるんじゃないんです??」
は???
なんじゃそれは???
「お、おいおい嘘にしては下手すぎないか。あんな人たちがこんな所にいる訳がないだろう??」
え??
理解してるの??
「ん〜……冗談でも嘘でもないんですが証明の仕様もないのも事実ですからね〜」
「待てまてまてぃ!!!!何だ古代人って!?」
「ほら見ろ古代人ならこんな反応しないだろ?やっぱり冗談じゃないか」
「いえいえ彼女はつい先日起きたばっかりでしてまだ今の時代の情報に疎いのですよ」
あ〜説明してくれない感じだこれ〜……。
どうやって収束させるつもり何だろう……。
そんな事を考えながら一人頭を抑えながらへたりこんでいると……。
「エスタスさん!!」
「あ、はい」
「【アイギス】の会得方法は??」
は??
急な問題に頭が理解を拒否をしかけている。何だって急にそんな事を聞く??
大体そんな事、彼だって知っているハズでは??
「え、え〜……教会でお祈りを累計で十年の日にち分でしょ?」
嫌な事を思い出させてくれる……。
ゲーム内時間で毎朝来る度に教会に戻り祈る事で信仰系の魔法は手に入るという訳の分からん仕様のせいで何人が神官職のレベリングを諦めたことだろう……。
その言葉に驚いたのかボソリと「……十年」とつぶやきながらゴードンは私の顔をまじまじと見始めたりベタベタと触ってくる。
……別にダメじゃないがこうもずっと触られるのは少々不快感があり顔にも出ていたのか。
すぐさま離れて謝ってくれたがそれでもやはり気になるのだろうか天城と会話している間もチラチラとこちらを見てくる。
しかしこのままでこんな所で時間が立ち夜になってしまう。
せめて移動しながらにしてくれと頼み止まってた脚を再び動かした。
もちろんその間も二人は私を無視し会話を続ける。
しかしあれで証明できたのかすごくゴードンは興奮していた。
おっさんが子供の様にはしゃいでいる……。
「───ファンだったんだよ!!」とか「ガキの頃握手してもらってから俺も冒険者に憧れてだな」とか何か……うん…………すごかった。
確かによく考えれば憧れの人と同じ種族??と会ったらそりゃ興奮するのは分からんでもないな。
しかしお陰様と言うべきだろう。
彼の警戒は完全に溶けきり変わりといって良いのか尊敬や憧れといった感情になり先程までのギクシャクした雰囲気は無くなり良い雰囲気のまま帰路につく事ができた。
そうして歩く事数時間既に日は沈みかけていたが暗くなる前には広場に着くことができた。
「ありがとう!!それと先程はすまない失礼な態度をとってしまい」
「構いませんよ。人間誰しも強い力というものは恐ろしいものですから」
「えぇ、それに僕らは言われ慣れているので気にしないで下さい」
私は初めてだけどな!!!
その後もう一度謝罪と感謝の意を伝えると彼は先にみんながいる所に走っていった。
大勢が彼を囲うかのようにワラワラと集まっていく。
「僕らも行きましょう。蟹丸さんも心配していることでしょう」
「さ〜どうだろう。ぶっちゃけ私は乗せられた感じで了承したみたいなものだからなぁ」
首を傾げながら苦笑いをしながら私達も合流しようとその時だった。
前から急に突撃されるとそのままがっちりと掴まれた。
「おねーちゃん大丈夫だった??」
蟹丸の娘だ。どうやら心配してくれてた様ですごく泣きそうな顔をしている。
「大丈夫だよ」
頭を撫でながらそう言うと先程までの表情が嘘かの様に笑顔に変わる。
良かった……。小さい子の泣きそうな顔は心が痛くなるから嫌いなんだ。
「良かった!!おかえりおねーちゃん!!」
「お迎えありがとうございます。ただいま戻りました」
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