第25話 竜娘、焦る
〜天城達がエスタス達と合流する少し前〜
天城と道明は談笑しながら目的地えと向かっている途中、物凄い風切り音が聞こえてくるとほぼ同時に目の前に人間と同じ大きさ位の鷹が目の前に急降下してきた。
「おつかれ様。急だったのにありがとうコレご褒美ね」
そう言ってアイテムボックスからプレートを出しそこに鷹の好物を並べる。それが終わると既にスタンバっている鷹の胸に掛けてある鞄から書類を取り出しひと撫ですると食事を始めた。
「なるほど先程の音はこやつでしたか。しかし嵐鷹とは些か文の為とは言えこれまた贅沢な……」
「十分な大きさに速度そして戦闘力と考えるとコイツが一番なんですよね。」
「さてさて、流石は先輩だこの短時間で纏めてくれるのは助かった。」
彼はパラパラと紙束をめくりながら色んな感情の顔に変わりながらも読み進んでいく。すると横から道明が覗き込む。
「これらは…何かのグラフでしょうか?」
「えぇ、ここに来る途中の村で少し気になる事があったので頼んだんですよ」
「して中身は?」
「……ここ十年の失踪者数と死亡者数です。」
「しかし、それらは致し方ないのでは?」
「普通ならね」
そう。どんな世界どんな時代、人の拉致や死ぬ事が無くなる事はないであろう。しかし彼はそれを抜きにしても異様な失踪者数と死亡者数に疑問を持ったのだ。
「異様に多いんだよ。特にこの時期の子供の失踪者が」
彼はここまで来る間に三つ以上の小さな村に立ち寄り情報収集をしているとどの村でも急に子供が居なくなると言った事件が発生していた。
もちろん彼はそのことに対しても追加で調査をし始め村人達に聞き込みをして分かった事が毎年商隊が通るこの時期に子供が居なくなっていることが分かった。
「それはどう考えてもそこを通る商隊が怪しいのでは?」
「もちろんそこに駐留した国の衛兵がすぐに荷台を調べる事が義務化したさ。それでも村の子供は見つからずそれ以降も子供達は失踪を繰り返している」
「なんと!!しかしそれならば子供達は何処に?」
「それが分かればあの村人達も苦労なんてしないでしょうね」
彼は溜め息をつきながら重い腰をあげると手に持ってた書類をアイテムボックスに直し(はぁ……僕、昔から運無いからなぁ……めんどくさいことになりそう)と思いながら物凄く嫌な気分な状態で嵐鷹を撫でいるその横で道明はある事を考えていた。
(ふむ。童の失踪ですか……。これはこの魔石の大きさにも関係ありと見るべきでしょうか)
そんな考えをしながらその手には先程のヘカトンケイルの魔力の核となる小さな魔石が握られている。
しかし彼はそれを伝えるかは悩んでいた。仮に関係あるとするならば分かったその時伝えればいい。変に情報の追加というのは場合よっては邪魔になるだろうと考えていたからだ。
「さて休憩も取れたしさっさと会いに行きますか〜」
嵐鷹を撫でることにより少しだけ気分が回復した天城はそう言いながら名残惜しそうにしながら嵐鷹を帰らせる。
「えぇ、それでは案内の続きでもしましょうぞ。こちらですぞ」
そうして彼はエスタス達と合流を果たすもすぐに問題事に絡まれてしまうのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「大丈夫??」
天城が背中をさすりながら心配そうにそう言う。
「だ、大丈夫。うん、とりあえず水を……水をくれ」
その言葉を聞くや否やすぐさま天城はアイテムボックスから水筒を出し渡してくる。
お礼を言いすぐさま口の中に残る残り香を洗い流す勢いで流し込み循環させ吐いてを数回繰り返した。
そうしてある程度洗浄が終わり水筒を返すと同時に気になってた事を聞く。
「……ずっと気になってたけどさ。なんで襲ってこないの?これ」
彼女が見上げるそれは今にも襲いかからん勢いで唸っている……がむしろそれしかしてこないのだ。
「【影縛り】で拘束中です。してどうします?」
「どうするって……出来れば契約したいかな〜って今の今まで思ってた」
そう……思っていたのだ。目の前のそれを見るまでは。
しかし目の前まできて感覚だろうか何となくだが竜という感じがほとんどしない。
見た目や声もまさに正真正銘の竜なのだが。
……それからは何故か何処か根本的ななにかが違っていた。
「やっぱ何か違います……よね」
天城もどうやらそれを感じ取っていたようだ。
「さてどうしたものだろう……」
「どうするって倒すしかないのでは??」
どうするも何もこれは野放しにしていい存在では無い気がするのだが……。
しかしすぐにその言葉の意味を天城は教えてくれた。
「いや、死ななかった」
「え?」
「言葉の意味のまま捉えていただきたい。後ろにいる彼を救う際に最大火力で攻撃したはずなんです。しかしそれは五体満足で生きている」
彼はそう言いながら首の部分を切るかの様なジェスチャーをする。
はぇ〜首切ったのに死ななかったってそれ何て生き物なんだろう??スライムみたいな不明系かな??でもそれにしては存在感があり過ぎる。それに第一目の前にいるみたいな奴はゲームの頃に実装されていなかった筈だ。
「これって解けないし動けないよね?」
「絶対……とは言えないけど見る感じどうにか解こうとはしているけど身動き取れない所を見る感じ大丈夫だと思う」
「そっか。ありがとう」
そう言って触れる位置にまで近づく。
「ちょちょ!?危ないよ」
「でもこのまま放置する訳にもいかないでしょ。どうにかしないとだしやれそうな事は色々やってみないと」
多少の緊張を覚えながらそれに触れる……その瞬間だった。
触れた箇所からグツグツと煮え滾る様な音を立てだしながら肉体から剥がれ落ちる。
「なっ!?」
その時だ。
辺り一帯の空気が重くなる。それと同時にそれから沢山の声が発せられる。
「「「てめぇ/貴様/お前、やメろ、ヤメロ、やめろ!!触れるな近づくなさわるんじゃねぇぇえええええええ!!!!」」」
苦痛のこもった雄叫びは森全体に響かせる程に大きく間近で受けた私達二人は耳を塞ぎながらその場で耐え凌ぐが少し離れた位置に天城が置いていた人がものすごい声を出しながら起き上がるともたれかかっていた木に突然頭をぶつけ始める。
「なんだ何だ!?」
あまりにも突然の事に焦りを覚える。
どうしたらいい??先にこの大音量の声の主を止めるべき??流石にずっと聴いていると気が狂いそうになる。
いや、先にあの人を助けないとじゃ!?あのままぶつけていると死んでしまう。
……い!!……お…………い!!
「おい!!」
微かに聞こえた天城の声によりパニックになっていた思考にストップが掛かる。
「大丈夫??」
頷く。
「OK。なら簡単に状況を説明する。まずは【ハーモニーヴォイス】ですね。このままだとあの人確実に死んでしまいます。それだけは阻止したい故にあの人お願いします」
「天城さんは???」
「私はあれの始末をします。この技のおかげで何か分かりましたしね」
確かにこれを使うのはアレだけだ。分かってしまえば対策も簡単だ。
「それではすぐに終わらせますので余波には気をつけてくださいね」
そう言うと彼はすぐに動きだす。それに釣られて私も動く。
【ハーモニーヴォイス】
広範囲状態異常付与のエネミー特有の特技である。
一見可愛らしい名前の為危険な技とは思えないが付与される状態異常は全然可愛く無く【恐怖+発狂+呪い+奪魂】といった生物絶対殺すといった盛り合わせとなっている。
第一にこれを使えるエネミーが一種類のみとなっている。
それが【ゴーストレギュオン】である。
【ゴーストレギュオン】
とある高位の死霊術師がコレの為だけに人々を苦痛を与えながら殺害そして殺され怨みを持った霊魂達を縫い合わせることで誕生するエネミーだ。
それには沢山の顔があり一つひとつに意思があるとされており今尚殺された時の痛みそして輪廻の輪に行く事のできない事に対しての恨みは何時しか術者だけではなく生者そしてありとあらゆる生物までえと向かうようになった。
そして霊体故に物理に対しての完全無効化を持つとされており魔力に対しても高い防御性能を持っている。
しかし変わりと言っては弱点はわかりやすくなっており神信仰している者が祝福した物や信仰する事で入手出来る魔法にはめっぽう弱いとされている。
「やめ、やめ……うわっどうしよう。これどうやってとめよう。」
聖女ちゃんの聖水??いやいやかけても多分またデバフが掛かってしまう。
早くしないと死んでしまう。落ち着け自分、要は【ハーモニーヴォイス】から守りながら状態異常も治せばいい。
思い出せその手の魔法は持っている筈だ。
……あった。手っ取り早いのがある。
発動するかどうかなんて考えている余裕なんてない。なるようになれってんだ。
即座に魔法式を展開し魔力を流す。
『汝、我らを護りたまえ汝、彼の者を癒したまえ。顕現するのは神々が創りし不滅の楯である!!』
あーっ!!間に合え間に合え!!こっちもやばければあっちはあっちでどデカい物を撃ちかけてるんですけどー!!!?
【アイギス】 【ロスト・ジャッジメント】
そんな慌てふためくエスタスに対し無慈悲にも二人の魔法がほぼ同時に発動した。
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