第29話 竜娘、新しく技術を学ぶ。忍者小僧、大仕事を開始する
さて朝食も済ませて今日は何をするのだろう?と思っていると各々自由に過ごしている。
広場を縦横無尽に遊ぶ者。
魔法の練習する者。
稽古をつけてもらってる者。
何かの講習を受ける者。
etcと……そんな感じに皆好き勝手にしている。
そんな中を見回るかのように色々と見ているとふと気になる場所に遭遇した。
魔法の使い方について……か。
確かに私が知ってるのはゲーム時代の設定のみもちろんその知識が通用するってのは昨日の時点で分かったけどだからと言ってこの世界特有の魔法の理論や使い方が無いとは限らない。
こうなってしまうと好奇心というものは抑えられないというもので気づけば最後尾の方で聞き入ってしまっていた。
最初の方はどんな話をしていたが分からないが子供たちの為に基礎がどれだけ大事なのかを説いている所のようだ。
「───それとだが、これはまぁ今は気にする程でもないが頭の片隅程度に覚えておくと良いっての教えておこう。」
「それが属性の特性と魔力による特性の増減についてだ」
「どんな属性にもそれを表したものとして特性がある。例えば火なら『温熱』『燃焼』『可変』水なら『変化』『粘度』『浮力』『抵抗』というものだ」
「そんな特性を増減なんてさっきは言ったけどこれじゃ分かりにくいよね?だから分かりやすく言うのであれば面白おかしくできるってのが正しいのかもしれない」
そう言って彼女は杖を取り出し一つの魔法を繰り出した。
【炎の鞭】
それは一般的な初級系に位置する火の属性寄りの魔法使いの職業が緊急用な近接技として覚える技の一つだが……。
「一般的な【炎の鞭】は鞭の形に形成し触れたものを燃やし火傷させることで攻撃するものだけど……」
おもむろに燃え盛る鞭を素手で触れ出す。
もちろん子供達はかなり動揺している。当たり前だ。火に触れれば火傷し痛い思いするとわかっているからだ。
「大丈夫。大丈夫だからこれはそういう風に調整しているの。火の温度は人が触れるぐらいまでに調整し燃える対象を最低限に絞ってるの」
「皆もさわってみる?」
そう言うが皆恐れのが多いのか前に出て触れようって子はいない。もちろん好奇心が無いわけではないみたいだ。
……仕方ない。ここは率先して前に出てやろうではないか。
決して気になるとかではない子供達のためである。
「触って良いんだよね?」
「あ、貴女は……。えっと大丈夫ですよ」
「これは……」
なるほど……。
確かにこれは違和感がすごい見た目は燃え盛っているのに燃え移らず熱くもないとか……。
なんて……なんて……楽しそうなんだこれは!!気になってしまうどうやってしているのだろうイメージの問題か?それとも魔法陣制作の時点での割り振りの問題なのか?いや、それだと不便だな。ならば出力時による分配なのかもしれない!!
「これは私もできるかな?」
「え。えっとできるはずです。教えましょうか?」
「良いの!?ありがとう!!」
そんなやり取りをしていると気づけば周りには子供達も興味津々に触ったり「俺も」「私も」「僕も」と言わんばかりの眼差しで満ちていた。
「だろうなって思った。まぁ火遊びはまだ早いしそもそも熟練度も魔力操作もまともに覚えてないから今回は特に難しくないものにしよっか」
そうして始まるのは【バブル】を使った遊びにも近い特訓だった。魔力の分配時に「粘度」に多く分配した場合【バブル】は割れづらくなり即席のボールとなるらしく……。
最初の内は真剣にやってた子供達も隣で先に成功した子供達によるボール遊びが開催されてしまえばそっちに意識がいってしまえば成功率はグンっと下がってしまう。
まぁこの特訓だって元々急に始めたもので強制的なものではないため今回の教官役の人も「遊びたくなったら遊んでも良いからね」と先に言っていたので気づけば私だけ一人が黙々と色々な事に挑戦していた。
「飯だぜ?」
「は?」
蟹丸のその言葉に辺りを見渡す。
皆昼食の準備を終わり既に食い始めていた。どうやらかなり集中していたようで気付けば昼過ぎになっていたようだ。
私も席に座り一緒に食い始めながら思いにふける……。
楽しかった……。
今回は「粘度」のみだったが魔力の量によってあそこまで硬さが変わるなんて思っていなかったな〜。
…………まさか鉄程の硬さになった時は本当にびっくりしたけど。
でも「粘度」だけでここまで遊びがきくのなら他の特性はどうなるのだろう?他の属性のはどんな事ができるのだろう??
あ〜午後の時間が楽しみだな〜!!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エスタス達と別れた天城御一行
「ごめんなさいね。皆さんも付き合わせしまって」
「いや、構わんこの街は俺らのお気に入りだからな害なす存在は許されん」
その言葉に他の人達もウンウンと頷く。
本当に助かる。事前に伝えていた作戦の為にも人手ができるだけいるのだが……。
あとはあの種族が街にいてくれると助かるのだがどうだろうか。
「しかし、本当にあるのか?」
一人の大男が聞いてくる。
「確証は無いです……が、死霊系は死んだ土地から離れすぎる事が出来ないんです」
「それは聞いたがだったら街に拠点を置くぐらいなら人が居ない場所を選ばないか??」
「ごもっとも。ですがあの街は人が居ても残るには便利なんですよ。入り組んだ用水路下手をすると今の時代の人が知らない場所もある可能性すらある街。それに水汚染を防ぐ為に何でも食べるスライムがあちこちに設置されてます。困った時にはそれらに見つかって困る物を食わせて証拠隠滅だってできるそんな好物件見逃すと思います?」
「確かに言ってる事はわかるがそれだったら相手さんだって分かってるんじゃないか?一人が考えれる事は他の人間にも考えられるって」
「それはもちろんだからって調べない訳にはいかないのですよ。それに灯台もと暗しって言葉があるぐらいなんでいがいと居るかもしれませんよ」
そんな会話を続けていると急に目の前から胡散臭い見た目の少年が現れる。
「呪いですが確かにあの街のどこかに発生源が有ると見て良いかと……。」
「何者だ貴様!!構えろ皆」
咄嗟に現れた少年に警戒度マックスで即座に抜刀する冒険者達の皆さん。
それを見て少しだけ関心を見せるがこのままだと一方的虐殺が始まってしまう。
そんな事をさせない為にもすぐに自分のやるべき事をする。
「ストーップ!!!納めてください仲間ですから」
「見るからに怪しいコイツが仲間だぁ??」
「そこは……まぁ彼の趣味なもので」
「拙僧としては天城殿さえ信用してくれさえすれば正直……モゴモゴ」
「めんどくさいからそういう事言うのはやめようね〜まじで」
「大体貴方って人は……まぁ良いです。今はこんな事をしている暇はありませんからね」
「すみません。信用しろとは言いませんが頼れる人ではあるので利用してやるって考えでとりあえずは妥協してもらっていいですか?」
もちろんその言葉に反発は多少はあったが何人かはその言葉を信じてくれた人も居たためにその人達が反発組を宥めとりあえずはと渋々といった感じでその場は収まった。
「とりあえず移動をしながら街まですぐそこなのでそれで根拠の方は?」
「これですぞ」
そう言いながら出すのは禍々しい感じを醸し出す一枚の符。
「知っての通り拙僧達は呪いを溜められる符を持っております。溜める際は空気中に漂う呪いっ気といった物を少しづつ吸収するのですがその際結構な時間が必要となります。しかしあの街というよりここら一帯の呪いは些か異常と言わざるおえないほど……」
そしてもう一枚これといって変哲もない符を取り出すも……。
ほぼ取り出すと同時に先程出した符みたいに変貌した。それを見てた皆は一瞬で慌て出す。それはそうだ。呪いと言えば専門家以外には感知されずに殺すことの出来る代物……。
そんなものが今自分達の身体に接触してると分かれば焦りはするのが普通だ。
「皆の者慌てる必要ございませんぞ。確かに呪いは危険なもの……。しかしそれは何かの意思が介入した場合のみ呪い単体では何かをする事は御座いません。万物から生まれたものは万物による意思が介入して初めて効果を発揮するそれは魔法とておなじでございましょう?ゆえに呪いは少々気持ちの悪い魔力とご考え頂くと多少は気が楽になるではないでしょうか?」
「それに第一呪いが効果を発揮しているのであれば既にあの街は街として機能しないでしょう」
最後の言葉にものすごい納得した。
したが……。全てが嘘という訳ではないが呪いは所詮呪いである。理不尽にそして平等に触れれば呪われるそれが呪いだ。
確かに僕達みたいに耐性が上がっていればどうって事はないが……。
ん?そういえばそれならなんであの街というかここら一帯は何ともないんだ??
天城がそんなことを考えている間に他の人達の不安は彼によってほぼといって良いほど取り除かれていた。
そうしてそうこう話しているうちに気づけば街の入口にまでたどり着くとすぐさま一人の人間が近づいてくる。
「身分証を」
「ごめんなさい。急用なのでこれで良いですか??」
そう言って天城が見せるは一つの勲章。
それを見るや否や態度が一変。
「申し訳御座いません!!お通り下さいませ!!」
「ありがとうございます。皆行きましょう時間も惜しいので」
皆困惑しながらも天城と一緒に中に入っていく。
「さてとりあえず行く場所なんですがここはあれですよね。冒険者組合と傭兵組合は一緒くたになってましたよね?」
「あぁ、そうだ。この街は広いといっても結局は海が大半を占めている。そんな街に二つも同じような物は建てれないからな」
「ですよね。申し訳ないのですが案内の方をお願いします」
「こっちだ」
先頭を変わり彼の後ろをついて行く。
その間色々と聞かれながら歩いていると時間にしてものの数分だろう。
すぐにたどりついた。
「俺らはとりあえず解散でいいか?頭数必要なのだろう?」
「そうですね。すぐに招集するかもしれませんが出来れば声掛けの方お願いします」
「わかった」
ここで一度皆とお別れするもちろん効率的に動く為の時短行為の結果でもあるが彼ら的にも容認できないからだろう。
そうして中を進み受付テーブルを挟んだ人に声をかける。
「こんにちは。今日はどういったご要件でしょうか?」
気持ちの良い笑顔が迎えてくれた。
「すみません。ここの組合長と話がしたいのですが取り次いでもらえますか?」
「それは、えっと申し訳ございませんが身分証を拝見しても宜しいでしょうか?」
「構いませんよ。こちらで良いですか?」
もう一度見せる事になった勲章。
一瞬にして彼女の顔から血の気が引いているのが分かるほど白くなるとと同時にものすごい慌てふためく。
「す、すぐに呼んで参りますので少々お待ちくださいませ!!!」
「先程ですが何をお見せに??」
「これ」
そう言って見せるは一枚の勲章。
それはこの国の国章。しかも国 象徴 王といった全ての象徴が刻印された物でありそれを出したその場限りであるが一時的に全ての実権が与える事を認めると称した物。
そんな物が目の前に出されたらあんな態度になるのは当たり前だ。
「宮仕えというのは随分も便利な物を渡されるのですな。羨ましい限りで」
「緊急用だけどね」
他愛もない会話をしながら待っているとふと隣の会話に耳を傾けてしまう。
「それはどういった容姿で?」
「えっと竜人族の女の子で……」
人探しだろうか??
それにしてもエルフが竜人の人探しなんて奇妙な縁でもあるものだ。
……しかし身なりからしてそこそこの冒険者か傭兵だろうか?
それにエルフならば手伝って欲しいな。
「申し訳御座いません。おまたせしました皆様組合長室までお願いします」
案外早かった。
彼女の後ろをついて行き一室の前まで案内される。
「それでは私は」
「ありがとうございます。あとはこちらでできますので」
彼女を見送ると扉をノックするとすぐに返事が帰ってくる。
「失礼します」
「申し訳御座いません。こちらからお出迎えするべきなのですが……」
「いえ、構いません。急に来たのはこちらなのでそれで本題の入っても??」
「えぇ、構いません。どういったご要件で」
そうして昨日あった出来事の話をする。
もちろん半信半疑な反応をされるのは分かっていた。そこで今日回収したレギュオンの一部を机にばら撒きそれと呪いの籠った竜血晶を見せる。
「この骨……この形状もしかして報告にあった……」
「何かありましたか?」
「え、えぇ。実は二日前なのですが付近で狼系の魔物の群れの大移動がありまして」
「それで?」
「もちろん。その後を追う形で偵察隊を派遣したのですが……」
「居なかったと……」
「……ええ。痕跡は確かにあったのですが途中で突然その場から消えたかのように」
「……なるほど」
なるほど。もしかしたらそれらをレギュオンが吸収したから消えたのだろう。
しかしそうなると同時にやはりここら辺に拠点があるのは間違いなさそうだ。
「……して先程の話は本当に」
「まだなんとも。しかしこの街に拠点はあると思います。呪いの量。急な魔物の消失。心霊系の魔物がここまで相次ぎ続くとなれば確実かと」
「しかしそれと同時に敵が逃亡する可能性が増えました。ここまで急な異変は相手とて不都合でしょうから」
「しかしでしたらどうすれば!!」
「もちろん作戦はあります。ですのでまずは頭数をお願いします」
「それでしたらすぐに」
それとあれも忘れてはいけない。
「あと冒険者、傭兵の中のエルフ種の皆さんには必ず参加の旨を伝えください」
その要望に少々困惑している様子だがすぐさま人を呼び先程の内容を伝える。
少しの間だがようやく休憩ができる。
小さな溜息を吐きながら少しだけ考える。
元々は人探しをしに来ただけだったのがどうしてこんな事になってしまったのか。
運が悪いからだろうか?急な大仕事は心に悪いしかしここまで乗ってしまった船を今更降りる訳にもいかない。
ここまで来たら仕方ないと覚悟を決めよう。
さてここからは時間との勝負だ。
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