第34話 竜娘、依頼を受ける
大きな欠伸が出る。
ものすごく長い期間。そう例えるなら役半年程……。それだけ眠っていたかのような気だるさをどうにか振りほどきながら今現在習慣化させようとしている朝の運動に取り掛かろうと寝ているみんなを起こさない様に静かにコテージを出る。
「……ん??」
異様に騒がしい。
どこだろうと騒ぎの元を探し周りそしてたどり着くとそこにはごっついガタイのお兄さん方が集まっていた。
後ろの方に居るムキムキのお兄さんに話しかける。
「おはようございます。どうしました〜??」
「おはようさん。いやな実はな野盗が出たんだけどよ。それがどうも普通の野盗って感じじゃ無くてさここに置いておくにも危険だから誰が街まで連れていくか話し合ってんだ」
ほー野盗なんて出たのか。
キョロキョロと辺りを見渡す。
「ここにはいねぇよ。あそこにある倉庫あんだろう?そこに今、押し込んでんだ」
なるほど。あそこにいるのか。
「行くのは構わんけどあぶねぇからあんま近づくんじゃねぇぞ〜」
別に止めたりしないんだ。
「分かりました。ありがとうございます」
お礼を言った後に恐る恐ると件の倉庫を覗くとそこには言っていた通りに数人の縛られている人達とそれを監視する人が居るが……。
「あれ??蟹丸が見張り??」
「なんだ。どうしたんだ?」
「いや、野盗がどんなのかな〜って思っての好奇心」
「物好きな……。まぁ見るのは構わないけど面白いものでもないからな」
「分かってるよ〜」
視線を彼から野盗の彼らに移動させ観察する。
六人組なのか。小汚い黒いローブなのは奇襲用かな?それにしてももう少し綺麗なのはなかったのかな。
……ん??
「こいつらって野盗なんだよね?」
「あぁ、そうだが。何だ気付いたのか」
小汚いローブのおかげと言うべきか下に着込んでいる装備の異様さに気づけた。
野盗にしては無駄に性能の良い装備な気がする。
これは完全に勝手なイメージだが野盗とかの装備って粗悪品。もしくはリーダー格だけが良い装備で他が粗悪品ってイメージなんだが彼等の装備は統一感もありそして直感だが彼等の装備の性能だがゲームで言う中盤ぐらいの奴な気がする。
「気付いたなら話が早い。あいつらだけに任せるのは少々危険な気がしてな」
「ま、まさか……」
「そのまさかだ。すまん輸送隊に加わってくれねぇか?」
あまりにも唐突すぎる。
「いやいや。なんで私さ!!蟹丸で良いじゃん!!」
「無理だべ〜。娘置いて先には帰れんさ〜」
は、腹立つ喋り方しやがって……。
しかしまぁ言ってる事は正しいんだよなぁ……。
「でも仮に私が引き受けたとして他のみんなからは断られる可能性だってあるでしょ!!」
「そこは問題ない。俺の知り合いというアドバンテージとお前さんが古代人って知れ渡ってるからな」
マジで!!なんだよお前に対してのみんなからの信頼度は、というか古代人って設定が異様に信頼度に対してのバフすごすぎて私、逆に怖いんだけど!!
しっかしなぁ。いやまぁ、帰る事自体は構わないしあの犯罪者達の輸送に加わる事も正直良いんだけど……。
もうちょっと遊んでいたかったんだよなぁ……。
だからといって犯罪者子供達の近くに置いておくってのはどう考えても危ない訳で。
その場にしゃがみこみ身体を大きく動かしどうにか自分に言い聞かせること数分。
どうにか遊びたいという欲求を抑える事に成功させる。
勢いよく立ち上がり大きく深呼吸をする。そして自分の頬を軽くペチペチと叩き自分の中にあるスイッチを仕事モードに切り替える。
「よし。分かったとりあえずその依頼受けるよ」
「随分スイッチ入れるのに時間かかったな」
そう言いながら彼は豪快に笑うが私が悩んでいる間、邪魔をしないようにと静かに待っててくれたりと何だかんだ優しいんだよなぁ。
「さて、それじゃあっちも行く人間が決まっただろう。呼んできてくれ」
「りょ!!」
小さく敬礼し即座に反転そして早足で先程の肉壁衆の所に向かう。
そんな彼女を見ながらスイッチ入るのにそこそこの時間が掛かった割には軽やかステップだったなぁ。と思う蟹丸であった。
「皆さん決まりましたか??」
そう話しかけると数人の空気が重かった。どうやら決まったらしい。
気分の落ちている一人が返事する。
「……ど〜した嬢ちゃん」
うっわ。
ものすごく目に見えて落ち込んでるよ。
……そうか。ジャンケン負けたんだな。ドンマイ!!
「あ〜っとですね。蟹丸に決まった人間連れてきてくれって言われたので」
「……わかった」
彼はそう返事すると行く人間達をまとめ彼女の横を通り過ぎ蟹丸の所に向かう。
そんな彼等見送る感じで眺めていたがすぐにハッと我に返り彼等の後を追う。
「……さて皆揃ったな!!」
蟹丸の元に自分を含めて計八人が集まる。
「さて一応非公式とはいえ依頼は依頼。内容の説明からいこうか。今回の依頼内容は野盗共の輸送となる。内容そのものは至極簡単な物だが彼等が何処の野盗が分からない以上もしかしたら彼等を奪還しようと仲間達が襲いにかかる可能性もある事を注意して欲しい」
まぁ確率は低いだろうけど無くはないだろう。そんな事を思いながら静かに聞いているがそんな事より周りからの視線が痛い。
……分かります。分かりますとも凄く「何でこんな小娘が一緒に居るんだ??」ってなりますよね。
私もそう思います。でも友人から頼まれたんじゃ断りづらいんですよ。
そんな感じに一人で罪悪感と睨めっこする。
しかし実の所周りの肉壁衆は彼女に良い所見せたいというだけ……。
それが女性だからとかではなく彼女が古代人であるから。一部の古代人には冒険者や傭兵として暮らしているのもいる。その中には弟子を取ったりして自分たちの技術を教えたりもしている。
つまるところ彼等の目的は弟子とまでは行かずとも出来れば技術等を教えてもらえないかな。という完全なる下心である。
「──それと気付いていると思うが今回は俺の友人の彼女が参加する。故に正直な所物凄く簡単な依頼となる事を約束しよう。質問のある者は?」
一人が手を挙げる。
「報酬は??」
「おっとそうだな。重要だよな報酬は……」
彼はそう言いながら紙切れとペンを取り出し何かを走り書きしそれを私に渡してくる。
「それを天城に渡してくれ。用意してくれるから」
「ん?天城でいいの?」
「天城で良いんだ」
ふーん、ギルド職員とかじゃないんだ……。
少しだけ疑問に思ったがまぁ蟹丸がそう言うのであればそれで良いのであろう。と納得する。
「さて、他にある?」
皆が顔を見合わせる。
うん。私としてもこれといって質問するものがない。それは皆もらしい。
「よし!!無いみたいだな。それじゃ行動開始!!」
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